アクセントとイントネーション


 〈アクセント〉

 アクセントとは、その言語に定まっている音声の相対的な高低・あるいは強弱のことです。この説明からわかるように、アクセントは全言語を見ても二種類しかありません。一つは日本語、中国語、ギリシャ語に代表される高低アクセント。二つ目は英語・ドイツ語などの強弱アクセントです(そして少し紛らわしいのですが、フランス語はほぼアクセントがない言語です)。


 例えば英語「baseball」のアクセントは、第一アクセントが一つ目のaに、第二アクセントが二つ目のaにあります。音程は一定です。しかし日本語で「ベースボール」というときは、「ベースボー」の部分が高い音程で、「ル」だけ低い音程になります。強弱の違いはありません。


 アクセントの役割まで考えるのは難しいので、ファンタジーに応用する場合はその言語が「強弱か、高低か」という分類だけにしておく方がいいと思います。とはいえ、小説や漫画となると、音声は聞こえないのでとっても限定的なのですが……、知識として持っておいて、損なことはありません!



 〈イントネーション〉

 アクセントとイントネーションは、全くの別物です。混同されがちなのでよくその違いを理解しましょう。簡単に言えば、アクセントは単語レベルの、イントネーションは文レベルの要素です。そしてイントネーションは全言語共通で音程・発音の上がり下がりとなっています。


 例えば下の英語の文を読んでみますと

I like baseball. →アいラいくベイスボおる カタカナが高いイントネーション

 と、少しわかりにくいですが、baseballの部分にイントネーションが置かれます。baseballは「何が好きか」の答えであるために、イントネーションで強調されているのです。さて、次は日本語で見てみます。わかりやすいのは疑問文で、

これってどういうことなんですか?

〇〇〇〇◆◆◆◆〇〇〇〇〇〇◆    〇:低い音程 ◆:高い音程

 と、一度音程が下がった後、語尾が上がり調子になります。英語も同じですね。これは文全体が疑問文であることを示すためのイントネーションです。


 このように、イントネーションは音声言語における文意の理解を助ける要素になっています。アクセントがないフランス語でも、イントネーションによって文全体の音程の変化があります。


〈応用〉

 アクセントを応用するのは先に言ったように難しいのですが、ただ言語の印象付けにはもってこいの題材です。簡単に言えば、強弱アクセントなら勇猛な、かっこいい言語になりますし、高低アクセントなら流暢な、歌に似た言語になります。音楽で例えるなら、強弱アクセントはラップ、高低アクセントは歌唱曲ですね(勿論ラップにも高低はあるし、歌謡曲にも強弱はありますが、主たる特徴において)。


 ということで、オーガ語は強弱アクセント、エルフ語は高低アクセントという違いを作っておけばそれだけで差別化になります。また、強弱・高低の度合いを操作することで聞いた時の印象をさらに強めることが可能です。オーガ語は常に語頭に強アクセントをつけるとすれば、野蛮さを演出できますし、エルフ語は文になると単語のアクセントがなくなり、最後の文のアクセントだけが生き残るという法則ならより流麗さを演出できることでしょう。


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