言語の四形態-孤立語・膠着語・屈折語・抱合語


 突然ですが、次の文を読んで、意味を考えてみてください。


 ◆デュールはマリエッラと、サンカルトでシンジーを食べた。


 どうですか? 何やら変なカタカナがたくさんありますね。でも、それらの意味はともかく、恐らく次のようなことが情報として認識されるのではないでしょうか。

・デュールは人名?

・マリエッラも人名?

・サンカルトは地名?

・シンジーはおいしいもの?

 など。ではどうしてそういったことが予測可能なのか、それは「は、と、で、を」などの助詞が意味を示しているからです。このようにして全く意味の分からない単語も、日本語では「助詞」によって関係が示されます。


 このように、日本語は名詞やその他の品詞に助詞などがくっつくことによって分が組み立てられます。こういった言語を「膠着語」と言います。くっつくことで、意味を示すのです。

 一方で英語はというと、例えば動詞が過去なら過去形、三人称なら「s」をつけるなど、語形の変化によって意味が表されます。こうした言語は、「屈折語」といいます。

 


 〈言語形態〉

 世界に言語は数千ありますが、実はすべての言語の形式はたった四つにまとめられます。題名にもなっている孤立語・膠着語・屈折語・抱合語の四つです。少しまとめてみましょう。


①膠着語:単独の単語や語幹に意味をもたらす要素が付属して文が組み立てられる語。(日本語やトルコ語)

②屈折語:単語の意味を表す部分と文法的な意味を表す部分が融合していて、分離することができない語。文法的意味は語形変化によってなされる。(ギリシャ語や英語)

③孤立語:単語が変化せず、代わりに文法的意味を単語の位置関係によって表す語。

④抱合語:文を構成するすべての要素が密に関係しあって全体を作る語。(エスキモー語、アイヌ語)

(『国語要説 第五版 p.11を参考にして作成)


 だいぶわかりやすくまとめたつもりですが、もし疑問があったらコメントまで。抱合語は複雑すぎて、私にも謎です……。孤立語は面白そうですね。例えば「烽火照西京 心中自不平」という文があります。それぞれの位置関係によって意味が成り立っているとのことですので、日本語的に「烽火西京照 心中自平不」としてしまっては、とても変な意味になるということです。私はまだ孤立語の外国語を学んだことがないので、ここに書いてある以上のことを知りたい方は調べてみてください。



 〈創作言語形態〉

 さあ、恒例のファンタジー応用タイムです。と言っても、基本的な語彙がないと言語形態を決めてもあまり進まないのですが……、ここでは架空のエルフ語の文を作成するため、単語をあらかじめ作っておきましょう。課題文は「私は昨日、海へ行った」です。


語群【私:U 昨日:siel海:tam 行く:fewos> fewozle(過去) 助詞は:ink 助詞へ:om】

①膠着語的:U ink siel tam om fewozle.

②屈折語的:U fewozle tam siel.

③孤立語的:U siel fewos tam.

④抱合語的:siel fewoUlen-tam.


 のようになるでしょう。①と②はfewosが過去のfewozleになっています。実は日本語「来る→来た」という変化は、屈折語な特徴で、単純にすべての言語を孤立語・膠着語・屈折語・抱合語にきっちりと当てはまるわけではありません(ただ、ややこしくなるので黙っていました)。

 ③は変化もしなければ助詞もありません。とても単純明快でスッキリしているので、効率がよさそうに見てますね! その代わり、本来の言語ではたくさんの順序関係文法があるはずです。

 そして問題の④。最も意味不明なのですが、例えばアイヌ語は動詞の中に名詞を取り込むことができるそうなので、ここでも名詞を動詞に取り込み、さらに独自の変化をさせることで抱合語感出してみました。


 いかがですか? こうして一つの言語の形態を考えるだけでも、四つの選択肢があるんです。作中で力をいれて語ることはないでしょうし、何より読者はそこまで求めていないので、あくまで「設定」として考えておくのがいいと思います。そして使う機会があれば、堂々と使っていきましょう!





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