「音声面」を考える

発音を決めるⅠ-発音の特徴


 まず決めておきたいのは発音です。


 おっと、説明が足りませんでした。皆さんのファンタジー世界に、一体いくつくらいの言語を定めておきたいですか? 三? 四? いくつでもいいのですが、とにかく複数言語がある時にはそれぞれに特徴がないとダメです。たとえそれらの言語が言語学的に優れていたとしても、特徴がなかったら読者に伝わりません。そうなると、ただの独りよがりですから。

 

 それで話を戻しますと、その特徴の差異たるものが「発音」なのです。エミネムとか、カニエ・ウェストとか、英語のラップ曲ってすごいかっこいいじゃないですか。日本語だってR指定さん・呂布カルマさん、晋平太さんなどそれぞれかっこいいけど、そのカッコよさがまた違う。その違いが発音の違いです。



 〈使用する文字の調整〉

 最も簡単なのは、その言語で使用する文字を決めるということです。ここでは便宜上、アルファベット(ラテン文字)を発音記号として使います。

 アルファベットは基本的に26字前後ありますが、ここからまずは「①よく使う子音」「②あまり使わない子音」「③全く使わない子音」「④使う母音」に分けてみましょう。日本語で言えば、

①=12 k,s,t,n,h,m,y,r,b,z,g.d 

②=3 p,l,f

③=3 x ,q,v,

④=(一般的なラテン文字の範囲では)a,i,u,e,o

 となります。ですが、例えばハワイ語は子音が七つしかない言語ですから、①=p,k,h,l,m,n,wとなります。またアラビア語には長母音、短母音など母音のバリエーションが豊富ではありますが、一般的なラテン文字の範囲となると三つになります。



 〈エルフ語応用〉

 ここで少しファンタジーに応用してみましょう。あなたがエルフ語を作るとして――どのような子音を使いましょうか。もしエルフが流麗で眉目秀麗、流暢な言葉を話している様子が思い浮かんだら、

①t.y,s,f,l,z,v,n,m

②g,b,p

③(今回は考えません)

④a,i,u,o

 あたりでどうでしょう。ポイントは、かなりトゲのある発音の「g,b」を①から外し、②に入れてます。もちろん入れなくてもいいのですが、あまり削りすぎてもバリエーションがなくなるので、敢えて入れてみました。

 そして日本語で言う「ラ行」は、rではなく、lにしてます(今回は英語の発音を基準にしています)。理由としましては、前者が少しこもった音になるのに対して、後者は「側面的に流れる音」だからです。英語のlは、下を巻いて先を歯茎に付け、気流を中心ではなく側面から出しますから、より、流麗になるのではないかと思いました。

 もう一つワンポイントアドバイスとしては、「g」の音を鼻濁音とするのもいいかもしれません。IPAでは「ŋ」の記号であらわされるもので、「g」の音のトゲトゲしさをかなり和らげてくれることでしょう。



 〈まとめ〉

 さて、このようにアルファベットで発音を決めたら、次にもう少し細かく発音を決めていきます。このままだと発音が「日本語そっくり」になってしまいますから。なぜかというと、アルファベットを発音記号としたところで、私たち日本人の放す日本語には存在しない母音や子音があるためです。

 この日本語には存在しない音というのには、例えば英単語におけるthの音θなどがあります。その他にも、appleのaの部分はæという記号であらわされる母音です(少し専門的に言うと、これはIPAで「前舌まえじたせまめの広母音こうぼいん(非円唇)」と定義される母音ですが、IPAについては別の項で説明します)。

 

 但し、ここでは混乱を避けるため、そういった音声についての説明はしないでおきます。とりあえずはまずアルファベットで使う音を決めればたいていの特徴は固まってきますので、それが固まったら次の項に進んでください。


◆参考HP

http://www.coelang.tufs.ac.jp/ipa/vowel_map.php 東京外国語大学:IPA 国際音声字母(記号)


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