ファンタジー世界と言語


 人間という生物は、世界中探しても一種類しかいません(亜種がいません)。ホモ・サピエンス・サピエンスだけです。でも、言語はどうでしょう? 私たちは人種・国・生育環境など様々な組み合わせの結果、異なる文化と共に無数の「異なる言語」を編み出し、使っています。

 ならば、ですよ? 例えばエルフ、例えばオーガ、またはドワーフなど異なる「種族」が生息するファンタジー世界には、言語にどれほど多様性がうまれるでしょうか。これに限っては未知数ですが、一つだけわかることは、現実世界よりもはるかに「極彩色」であるということです。


 さて、しかしながら私は、ファンタジー世界に言語を導入するということは「たくさんの問題が頭を悩ませることになる」と概要文で言っています。どういうことが難点なのか、少しだけ紹介しましょう。


①「設定」としては大きすぎる要素

 これですね。一番の難点は。フェルディナン・ド・ソシュール、ノーム・チョムスキー、カール・ブルークマン、本居春庭、橋本新吉……数々の天才が言語について考察し、本を何十冊も出し、論文を何千ページも書き上げるほどのモノ、それが言語です。中途半端に導入すると、かえって世界がぐちゃぐちゃになってしまう恐れがあります。

 ただ、それを言ってしまうと、そもそも私たちは机の上で「世界」を作っているわけですから、同じようなものですね。大切なのは、言語を生半可な知識で導入しないことです。つまり、ある程度知識で武装していれば、ファンタジー設定を彩る程度の、程よい言語設定を導入できるはずです。


②終わりがない

 例えばエルフ語を作るとしましょう。でも、語彙を一つ一つ作っていてはキリがありません。実例を挙げると、日本語で、農民が一日に使う語彙数は2324(1)です。まともな言語を作ろうとすれば、2000もの単語を作り上げなくてはなりませんが、そういうのは現実的ではありませんね。また、それ以外にも文法構造などもありますし……。

 この問題も①と同じように、結局はさじ加減です。そしてどの程度作ればいいかなどの難点は、これから学ぶクレオールや言語同盟、発音などに関する知識が解決してくれることでしょう。


 この作品では、以上の理由から、ファンタジー世界に言語要素を「どれくらい入れればいいのか」を判断できるくらいの知識と自力で創作言語を作れるようになるという点を目標に言語を解説していきますので、お付き合いお願いします。



◆参考文献

(1)「国語要説 第五版」p.62 図表3-1 国立国語研究所の報告による


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