第5話 代理デートの真実
丁度、ゴンドラが地上に戻り、係員がドアを開けてくれる。
「ごめんなさい、貴方を騙して……。さようなら!」
私はそう言うと、呆然としている拓海くんを残し、ゴンドラから飛び降りた。
残念ながら計画が失敗した今、このままデートを続ける訳にはいかない。
私は足早に、その場から離れようとした。
しかし、突然後ろから左手を掴まれた。振り返ると、追い掛けて来た拓海くんが怒りの表情で私の左手を握り締めている。
「ちょっと待てよ!」
「お願い! 離して!」
「嫌だ! なんで
その質問は彼には説明出来ない。それが
「ごめんなさい。それは言えないの……」
「……もしかして……、
私を見つめる彼の顔にみるみる悲しみの表情が広がっていく。
私はその表情を見て決心した。もう彼には真実を打ち明けるしかない……。
私は大きく溜息を吐くと、振りほどこうとしていた左手の力を緩めて、彼に向き直った。
「……拓海くん……。手を離して。説明……するから……」
そう私が小さな声で彼に応えると、彼は頷いて左手を離してくれた。
そして私達は遊園地のベンチに並んで腰かけた。
「……拓海くんが気付いた様に、
「えっ? あれはただのニキビじゃなかったってこと?」
「
彼は私を見つめ、目を見開いている。
「でも……、それなら……、俺に説明すれば良いじゃないか? そしたらお見舞いに行ったのに……」
私は再び溜息を吐くと、彼を上目遣いで見つめた。
「病院に行った時には、もう発疹がケロイド化してて……。それで
拓海くんは私のその言葉を聞くと、左右に首を振って大きな溜息を吐いた。
「……
今度は私が拓海くんを見つめる番だった。この
私はある決心をしていた。
「ねぇ、
彼の顔がパッと明るくなる。
「ありがとう……、えっと『さつき』さん。もしかして『さつき』って五月って書くの?」
私は大きく頷く。
「そうよ。
今度は彼が大きく頷く。
「でも、本当に似てるよね。ニキビに気付かなかったら、分かんなかったよ」
「私、いつもは髪型も違うし、眼鏡だから、雰囲気は大分違うけど……。
私はそう言いながら軽く舌を出した。
「あーっ、そう言う仕草も似てるから……、分かんなかったんだ……。納得……」
彼は満面の笑顔を私に向けてくれた。
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