第4話 最近キレイになったのは?

五月メイ、最近キレイになった? あの富士山みたいに、肌が滑らかでツルツルだ」


私はその彼の言葉に目を見開いた。

「えっ……? なんで……」


「うーん、前回のデートでも思ったんだ。それまで五月メイ、最近ニキビだらけで困っているって言ってだろう? でも前回、二週間ぶりに逢った時、肌がツルツルになっていて……。あの日は夜だったから、気のせいかと思っていたけど、今日五月メイの顔見たら、やっぱり全然違う……。肌がとてもキレイだ」


大好きな彼氏にそう言われれば、普通の女の子は嬉しい筈だけど、私はもうパニックだった。


このままでは露見しちゃう。何とか説明しないと……。

「えっと、お姉ちゃんに相談したら、良いニキビケアの化粧品を紹介して貰ったの。グリチルリチン酸やセラミド、ビタミンC誘導体が入っている化粧水を使って、薬用のローションも塗って……」


そう一生懸命説明する私を尻目に彼は怪訝そうに私を見つめている。

「だけど、二週間前には頬がブツブツだったよな。大きなニキビの痕も複数在って、これ一生残ってしまうかもって心配してたじゃん? それがスッカリ治って驚きなんだけど……」


「……あっ、そっ……それは……」

私は彼の鋭い観察力に下を向いてしまい何も説明出来なかった。


ちらりと彼を見ると、首を傾げ更に怪訝そうな表情を浮かべている。


五月メイ……君は……? なあ、俺の誕生日言ってみてよ」


その質問に、私は記憶を一生懸命呼び出していた。

「えっと、八月……二九日……だよね」


「そう」

正解したのに彼は怪訝そうな表情を崩していない……。


「じゃあ、俺達が付き合い出したのはいつ? 前に会った俺の姉貴の名前は?」


「あっ……、えーっと、七月一九日だよね。私が告白して……。お姉さんの名前は……、えっと……、『まこと』……さん……」


その私の答えに彼の表情が一気に曇る……。


「えっ? 合ってるよね?」


拓海くんは首を振っている。

「日にちは合ってる。名前も『まこと』だ。でも誠人まことは俺のだ……」


私は『ハッと』して右手を額に当てた。そうだった。誠人まことさんはお兄さんだった。本当に会った事が有れば間違える筈ない……。


「君は誰? 本当に北見五月メイなのか?」


もうダメだ。もうこれ以上……彼を騙せない……。

私は溜息を吐いて大きく首を振った。


そして意を決して真実を彼に告げた。

「私は北見……五月さつき……。五月メイの双子の姉よ……」


その言葉に拓海くんは目を見開いて私を見つめていた。

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