第36話、撃ちまくれ!

 そんな訳でやって参りましたバードランス火山。


 ファイヤーバードが所狭しと密集しております。若干気持ち悪いくらいうじゃうじゃいます。


 だがそれがどうした。素材の宝庫だと思えば何のその。

 次々と空から降ってくるファイヤーバードを撃って撃って撃ちまくると、面白いくらいに落ちてくる。


 空気を圧縮して頭を撃ち抜くのが一番素材が傷付かない。

 風の刃で首を斬り落としてもいいんだが、こっちの方が魔力の消費が少なくて済むんだよな。


「ファイヤーバードの血は爆薬に使えるし、羽はいくらでも使い道があるし、おいしい魔物だよなぁ」


 鼻歌混じりにファイヤーバードの屍を積み上げていく。


 そろそろ100いったかな?というところで、ファイヤーバードが降ってくる間隔が開いてきた。

 この辺は大分間引きしたし、場所を変えよう。


 積み上がったファイヤーバードを収納魔法に入れてトコトコ進む。


 再びファイヤーバードの群れとエンカウント!

 空気砲でバンバン撃ち落とす!

 流れるように収納にしまう!


 一連の動作を延々繰り返す。


 大漁だなぁとホクホクしてるところに黒い影が後ろから俺を追い抜き、今まさに飛び掛かってきたファイヤーバードを手刀でダウンさせる。


「私も混ぜろにゃ~!」


 黒猫、お前か。


 黒い影はセレーナだった。

 ファイヤーバードは炎を身に纏ってるんだがそれを手刀で討伐するなんて、火傷しないのだろうか。

 セレーナの手を見てみるも火傷の跡が見当たらない不思議。


「なんでついてきた?」


「ピヨくんの遊んでるとこが見たいからにゃ!」


「ピヨくんじゃない、フィードだ。遊びに来てる訳じゃないんだがな」


「えー?今も遊んでるにゃ」


 彼女の言う遊びとは戦ってる様子を指すらしい。

 ファイヤーバード軍団を二人で蹴散らしているところ、遊んでると宣っている。


「はぁ、わかったわかった。で、俺が遊んでるのを見てどうするんだ?」


「強いやつが遊んでるの見るともっと強くなれるにゃ!アタシはもっともっと強くなりたいのにゃ!」


 つまり、強者の戦闘を分析して自らの糧にする、と。

 俺は魔法戦闘が主体だから、物理に秀でたセレーナが得られる技術なんて多くはないと思うんだが……


 こうして会話してる間にもファイヤーバードを撃ち落としていると、セレーナがじぃっと俺を見つめているのに気付く。

 なんだ?とそちらに視線だけ向ければ、理解したふうに頷いて拳を握る。


 そして彼女の元へ降下したファイヤーバードの首に拳を突き付けた。拳はファイヤーバードへ掠りもせず、ほんの数センチの距離が開いている。

 にも関わらず、なんと首に風穴がぽっかり開いたではないか。


「やったー!真似できたにゃー!」


 小躍りしながらファイヤーバードの首に風穴を開けていくセレーナ。


 拳で風圧をつくって風穴を開けたのか。僅かに魔力を使った跡があるが、彼女は自身が魔力を使えないと断言している。また無意識に使ったんだろう。

 だが、使った魔力は微々たるものだ。ほとんど拳を突き付けたときの風圧だけを利用している。

 前世の武術の師と同じことをやってのけるとは……恐れ入った。


 内心セレーナの戦闘技術に舌を巻いていると、彼女は「他に獲物はいないかにゃ~」と辺りを見回していた。

 周囲にファイヤーバードは見当たらない。あるのは屍のみ。

 どうやら狩り尽くす勢いで減らしていたようだ。


 やり過ぎたかな?いやでも鳥系の魔物って繁殖力凄まじいし、しばらくしたらまたファイヤーバードで埋め尽くされるだろうし、大丈夫か。


「これでドラゴン討伐に専念できるな」


 邪魔者をある程度片付けたところで、本来の目的であるレッドドラゴンを捜索し始める。

 セレーナもドラゴンと戦いたい!と俺についてきた。


 彼女は強者と戦うことだけを望んでいるのか、自らが積み上げたファイヤーバードの屍には見向きもしない。

 もったいないので収納した。ギルドで買い取ってもらうときにセレーナの分の報酬は本人に渡そう。


「暑い……」


「暑いにゃ~」


 火山というだけあって、暑い。

 頂上に近づけば近づくほど体感温度が上がってる。

 麓ではまだ耐えられたが、そろそろ限界だ。


 俺とセレーナの周りに冷たい風が漂う。


「にゃ?涼しくなったにゃ!フィードの魔法かにゃ?」


「ああ」


「すっごいにゃ~!これならマグマの中で泳げるのにゃ~!」


 マグマにドボンしたら死ぬぞ……


 頂上の少し手前まで来た。探索魔法で探れば、目と鼻の先に強い魔物の反応がある。

 この気配、向こうも俺達に気付いてるな。


「ん~!遊び相手発見にゃ~」


「素材は俺がもらうからな」


「そんなのいらないのにゃ。アタシは遊べるならなんでもいいにゃ」


 本当に戦闘にしか興味ないらしい。

 素材を取られると焦った俺の気持ちを返せ。


 熱風が吹き荒れ、マグマが姿を見せる頂上。

 深紅の鱗を見せつけるようにどっしり構えていたのは、俺が待ち望んでいた素材、じゃなくて魔物。


「――――――――グオオオオォォォ!!!」


 レッドドラゴンだ。


「さぁ、その鱗もらってくぞ」


「にゃふふ……トカゲくん、遊ぼうにゃ~」


 俺もセレーナも戦闘体勢に入り、目を怪しく輝かせながら舌舐めずりをして目の前のドラゴンを見据えた。


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