第19話 終末の日常⑦ 終末コンサート第2部① / 船内貴賓室②

シャルは、鈴の付いた神晶錫杖しゃくじょうをゆっくりと振り続けている。


シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆.


鈴の音は、とてもんだ柔らかい音色で暗闇の世界に溶け込んでいった。


シャルはゆっくりと何度も鈴の付いた神晶錫杖を振り、鈴の音色ねいろ途切とぎれないように世界に溶け込ませる。


シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆.


ー(イシがちゃんとシャルちゃんをサポートするイッシー)


巨大水晶岩ダイグラスポッドのイッシー君は、室内環境をシャルが過ごしやすいように、


御力の源【神力素】を室内に循環じゅんかんさせていく。


ー(どうですかイッシー)


(凄く気持ちいいよ。ありがとう、イッシー君)


ー(イッシッシーマスターシャルちゃんの為ならなんでも叶えるイッシー)


シャルとイッシーは、楽しさげに神念話でやり取りする。


((それは私の仕事、勝手に私の領分りょうぶんに入ってこないで欲しいわ))


メグの脳裏世界では、すっと神文字が浮かんだ。


(本来ならボコボコに叩き込んでやる所だけど・・・)


(シャルの晴れ舞台だし、今日だけは特別に許してあべるわ)


すぐに新たな神文字が、メグの脳裏世界に浮かび消えていく。


ふところが深い所を、少しだけ垣間かいま見せたメグであった。


ー(ゼノ、聴いてたら、返事なさい)

ー(メグ総長、聞こえております。サー)


天神日輪放送サークル放送、現場監督神『サーク=ゼノバランス』

もう一つの姿はシャルちゃん神衛隊ファンクラブ第1隊隊長、通称ゼノである。


聖神霊教会セント・ミラージュ、教皇神第7位階梯かいてい秘書官『メグフェリーゼ』


メグはまだ派閥に入っている。否、派閥を立ち上げていた。


シャルちゃん神衛隊ファンクラブ初代総長『メグフェリーゼ』通称メグ総長、


という肩書かたがきを持っていた。


ー(ゼノ、今から私の指揮下に入りなさい)

ー(サーイエッサー)


反論はゆるされない、とても厳しい軍隊系派閥であった。


ゼノは、今は無心である。ゼノは、メグ総長が他神の御心を、全て覗けるのを知っている。


今は、機械のように、受け答えするだけであった。


そして、いつも事態が収拾されてから、後悔しているのである。


やり過ぎた・・・また仕事さがしかよと


ー(今ゼノにこの結界内の漂っている病気ウイルス治療薬ワクチンデータ送るから受け取って)

ー(サーイエッサー)


ー(全神隊の隊列状況を説明しなさい)


ー(第1~第10神隊まで、全て命令に従い、結界内にて待機中であります)

ー(サー)


ー(わかったわ。もう少ししたら、超神界とドンパチするから、宜しくね)

ー(サーイエーサー)


すぐにメグは、神念話で治療薬データを、ゼノに送った。


送られた治療薬ワクチンデータは、すぐに全神鏡球ミラービットに投入され、瞬く間に神人工知能に組み込まれデータが、防御システムを向上しバージョンアップ、正常データを上書きしていった。


治療薬ワクチンデータを投入したことによって、神鏡球ミラービット病気ウイルスは全て破壊され、撮影された映像は、ありのままの終末の世界を、天神界中に配信していく。


その効果によって、天神界各地の配信映像の画像が一瞬乱れたかジャミングと思えば、突如、暗黒の神威が荒れ狂う終末の世界に、配信映像が全て差し替えられることになった。


差し替えられた配信映像は、天神界各地で視聴していた貴神等に、衝撃をもたらした。


「んもー、なんなのよ、この映像」

「どっちが本物の映像なんだ」

「警察神達は何をしているのよ」

「それより、舞台にいるのは、本当にシャルちゃんなのか?」

「うわー。酷い邪悪な神威が充満してるわよ」

「この中で歌い踊っているのかよ。半端じゃないな」

「シャルちゃん。早く逃げなさい。魔神化しちゃうわよ」


天神界各地で怒号や歓声が沸き起こり、天神界各地に激震が震え立ち、疾走していく。


ー(シャル。準備OKよ)


メグは、シャルに舞台の準備が整ったと、合図を送る。


(ありがと。メグちゃん)


ーごかいも準備万全、いつでもきゃぴきゃぴ行けるわよ。

ー頑張るわよ。

ーはやく終わらして、このブラックを解き放つわよ。


幼いシャル等も、どんな案件を持ち込まれてもいいように、準備が整ったようだ。



(ありがと。みんな)


シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆.


(じゃあ、いくよ。みんな、最後まで楽しもうね)


合図を待ちシャラ.:*リン.:ながら、そシャラ.:*リン.:っと佇んでシャラ.:*リン.:いたシャルシャラ.:*リン.:は、ゆっくりと歩みだしシャルちゃんウオーク


暗黒の夜空シャラ.:*リン.:に向かってシャラ.:*リン.:、自分自神シャラ.:*リン.:の御心を、シャラ.:*リン.:そのまま自シャラ.:*リン.:神の御.:*リン.:口を使ってシャラ.:*リン.:語りだしたシャルちゃんスピーク


シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.

「「みんなーーありがとうーーー」」

シャラン☆.。。.:*☆.シャリン.:*☆.シャラン☆.

「「みんなの心の声援のお陰で・・・わたし・・」」

シャリン☆.。。.:*☆.シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆。

「「この暗黒舞台で闇にも負けない花を咲かせることが出来ました」」

シャリン☆.。。.:*☆.シャラン☆.

「「みんな、本当にありがとう」」

シャリン☆.。。.:*☆.シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆

「「みんなの声援があったから、今の私に慣れました」」


シャルの脳裏世では『ごかい』が開廷し、幼いシャル達が一心不乱にお仕事に励んでいる。


ーさっきメグちゃんに褒められたダンス入れるわよ。

ーここ、もうすこし、可愛い笑顔に出来ないかしら。

ーつっかい班、もう少しで飛ぶから、準備お願い。

ーメグちゃん、サポートお願いでちゅ

(いいわよ。さーきなさい)

ーほっかい班、御力欠にならないようにもっとしっかりキスしなさい。

ーメグちゃん、もっと凄いのお願いします。

(いいわよ。さーかかってきなさい)


協議会場は、ピンク色に包まれていた。


御力【神ゴッド・変身】トランスフォームにより、成神せいしんに成長したシャルは、


巨大水晶岩ダイグラスポッドのイッシーくんの室内を、ゆっくりと歩みながらシャルちゃんウオーク


神鏡球ミラービット目線を合わせてシャルちゃんアイ語り続けるシャルちゃんスピーク


その御姿はシャラ.:*リン.:床まで完全シャラ.:*リン.:についてしシャラ.:*リン.:まうほどシャルちゃん長い白髪をホワイトヘアー空を舞う白シャラ.:*リン.:龍のように揺シャラ.:*リン.:らめシャルき従えさせちゃんンヘアウエイブ


軽やかに共シャラ.:*リン.:に戯れるよシャラ.:*リン.:うにダブル歩みながらシャルちゃんウオーク神舞踏を共にシャラ.:*リン.:共演すダブルるように舞いシャルちゃんダンズ


共に白い竜シャラ.:*リン.:巻を連想さシャラ.:*リン.:せるよダブルうに回転しシャルちゃんターン共に天空をシャラ.:*リン.:目指すかのシャラ.:*リン.:ようにダブル舞い上がるシャルちゃんスカイ


空中に浮かシャラ.:*リン.:舞い上がっダブルシャルたシャルはちゃんエアウオーク空中で連続シャラ.:*リン.:回転を披ダブルシャル露しながらちゃんスパイラル


ゆっくりとシャラ.:*リン.:風に包み込シャラ.:*リン.:まれながらシャラ.:*リン.:姿勢を整えダブルシャルちゃんて着地したウォンテッド&ポーズ


シャルが着地した水晶床を震源しんげんに光の波紋はもんが巻き起こる。


ー(ここは、まかせてアッシー)

ー(続けていくアッシー)


(ありがとう。アッシー君)

(凄い綺麗だよ。流石さすがはアッシー君だね)


これは、アッシー君の演出だ。


シャルの舞台の周りには、淡い光を放つシャボン玉が空間に少しずつ現れて空間を舞い始めている。


舞台床面には、光の波紋がいくつも発生し次第にあわく消えていく。


舞台空間には、シャルの話す言葉、そのままの文章が光文字ネオンレターで空間に書きまれていった。


アッシー君は、シャルにスポットライトが当たるように上手く光を調整し続けている。


光を操る今のアッシー君は、一味違うみたいだ。


それは何故かと問われれば、それは、メグに神酒を、無理矢理飲まされたからでした。


神酒の効果で普段は出来ない御力操作も、なんのその、万能感に満たされたアッシー君は、光の魔術師、否、光の神と化してしまった。


そのアッシー君は美女神に何度も踏まれて、もう病みつき状態。


シャルに踏まれる度に光の波紋が現れる。


ー(シャルちゃん。もっと強くアッシー!!)

ー(はぁはぁもっとアッシー!、強くアッシー!)

ー(もっと、踏みしめてアッシー!!!)

ー(どんどんきても大丈夫アッシー!!)


(ありがとう。アッシー君)

(アッシー君が大丈夫ならギアを上げていくね)


決して本神の御姿を顕現けんげんさせないアッシー君は、


もうお顔が真っ赤っかで物凄い鼻息を吹かせていたのだが、これもメグのご愛嬌。


配信映像を、見つめ見守っている天神界各地の貴神等の神眼は、


シャルの神のごとき舞いの一挙一動を余すことなく、記憶し続けた。


「凄いよな。実際普通の子供神なら、こんなこと出来ないぞ」

「さすがは、我等の希望の鍵じゃわい」

「もうシャルちゃん芸能神の転神しても食べていけるわよ」

「俺、『シャルちゃん神衛隊ファンクラブ』に入会しようかな」

「えー。それなら、私も一緒に入るわよ」

「儂は、新たに『シャルちゃんに踏まれ隊』を創設したいのう」

「私は『シャルちゃんと一緒に踊り隊』があったら、絶対にはいるわ」


配信映像を見続ける貴神等は、それぞれ賞賛のお言葉を述べ合っていた。


シャルはシャラ.*リン.またダブル舞い上がりシャルちゃんスカイ空間の空をシャラ.:*リン.:白龍のようシャラ.:*リン.:な白髪をダブル引き連れてシャルちゃんウオーク自由にダブルシャル飛び回る。ちゃんスカイフライ


そして、鈴のシャラ.:*リン.:付いた神晶シャラ.:*リン.:錫杖をゆっシャラ.:*リン.:くりと振りシャラ.:*リン.:続けながらシャラ.:*リン.:


シャルは闇夜シャラ.:*リン.:の空間に向シャラ.:*リン.:かって.:*リン.:語り続けるシャルちゃんスピーク


シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆.。.:

「「ありがとうーーみんなーー好きだよーーー」」

シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:

「「映像を見てくれてるみんな」」

シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。

「「ありがとうーだいすきだよー」」

シャリン☆.。。.:*☆.シャラン☆.。。.:*☆.。

「「私の歌をずっと真剣に聞いてくれたみんな」」

シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆.

「「うれしいよー抱きしめたいよー」」

シャリン☆.。。.:*☆.シャラン☆.。。.:*☆

「「私の踊りも真面目に見てくれたみんな。

シャラン☆.。。.:*☆.シャリン☆.。。.:*☆.

「「恥ずかしーでも、最高にあいしてるー」」


終末の世界に相応しいシャルちゃん音楽発表会終末記念コンサート第2部の幕が上がり、これからまだまだ、会場は盛大に盛り上がっていくことになるだろう。



★  ★  ★  ★  ★  ★  ★



教皇神特別区画内貴賓室の会食の広間に、不安な冷たい空気が充満して立ち込めていた。


そこでは、複数の神霊等が1柱の女神の動向を注視している。


そこにいる全ての神等が教皇神の雰囲気が希薄なことに気づき、心配そうに見つめ見守っていた。


ヘスカはバランに現状報告していたのだが、ここまで思いつめたバランを見ていられないと思い、


報告の手を休め、話を一旦打ち切った。


単刀直入に問い詰めたいのだが、ヘレンは親身に聞こえる声色で、再び声を発し優しく問いかけていく。


「教皇神様、如何いかがなされたのでしょうか」

「ご尊顔に影がさして、ご体調がすぐれないように思われます」


不意に自神を心配する声を掛けられた教皇神は、ふと我に返り辺りを見渡し、自神の立ち位置を再確認する。


部屋にいる神等全員が注視していたことに、今更ながらに気づき、一旦姿勢を改めあんまり心配しないで欲しい思いを、お顔を緩め首を左右に振ることで態度で示そうとした。


「心配してくれてありがとう」

「大丈夫ですよ。ヘスカ、早く続きを聞かせてください」


皆に心配をかけ、申し訳ない気持ちを表明し、続きを促したバランは、考えがまとまるまで、脳裏の奥に、メグとの取引内容をしまいこもうとした。


船外では戦闘が繰り広げられている現状に置いて、自神が思い悩む時ではないと考えたのか、脳裏の記憶倉庫の扉は、固く閉じられようとしていた。


その記憶扉が閉まり切る前に、ヘレンが待ったをかける。


「いえ、まず先に教皇神様御自神の御神体をご自愛ください」

「只今専任医神を呼びつけますのでお待ちください」


ヘスカは、教皇神が放った分神霊に何かあったのだと睨み、教皇神を問い詰める為に、心配しているように見せかけ、さらに隅に追いやっていく。


「いえいえ、呼ばなくて結構ですよ」

「少し悩み事に集中しすぎて、少し上の空になっていたようです」


そんなに大事にしたくないバランは、自分自神の御心の内を少し吐露することでわかってもらおうとした。


「今度はどんな厄介事ですか」と思ったヘスカは、バランが話した言葉の切り口をさらに深く差し込んで、さっさと話してくださいと、さらに容赦なく切り込んでいく言葉と放つ。


「悩み事でございますか?」

「悩み事でございましたら、この教皇神第1秘書神ヘスカが伺います」


やさしく切り込んだヘレンの言葉のやり取りで、バランの御顔に焦りの色が見えてきた。


一旦追い詰められていくバランに、さらに追い討ちを重ねがけをするヘスカは、


もうさっさと吐いてスッキリしましょうねと、続けて責め立てていく。


このままコーナー際まで追い詰めてさしあげますと、まったく容赦しないヘスカは、


「皆、下がれ」


と舞台の俳優等を強制的に下がらせ、バランを追い詰める舞台を作り出す。


その宣言の言葉が響き渡ると、会食の広間にいる神霊神等は、


へスカ様いつものように教皇神様をお願いしますという目線を、


へスカに念じるように飛ばしながら、2柱を除いて、速やかに退出していく。


残った2柱は、護衛隊長神『ダグアーガス』がその場で変わらず、バランの後ろについたまま、護衛神としての任務を忠実にこなす中で、


教皇専任執事長神『ロムスタルト』は、すっとバランの横にたち、神紅茶の入ったティーカップをバランの手元に差し出すと、今から密談パーティーを始める準備を手慣れた様子で整え始めている。


ロムスタルト、通称ロムは、美しい顔立ちをした若い男性神で執事神衣装を爽やかに着こなし、


オールバックで後ろに流した長髪を1本の神輪で結び、髪を馬の尻尾のように左右に軽やかに振りつつ、舞台をこまやかに動き回っていく。


ロムが長テーブルに並べられている料理に視線を合わせると、その料理は次々に消えていった。


これは、ロムが神能【神保管庫】を使ったからだ。


ロムは神能【神保管庫】の中に長テーブルに並べられている料理を、冷めてしまわないようにしまいこんでいった。


変わりに綺麗な神花が生けてある花瓶を何個も【神保管庫】の中から出して設置し、空間が華やかに演出させ、舞台の置物を手馴れた手つきで、素早く交換していく。


ダグアーガス通称ダグは、ロムの動きに視線を合わせない。


ダグは動きやすく見た目も周囲に溶け込みやすい護衛隊専用神衣装を、自然に着こなし、


銀髪短髪の強面な御顔を固く硬直させ、立派な体格の神体も同じく硬直させながら、直立姿勢をバランの後方で保っていた。


舞台はロムの手によって、瞬く間に変化していくが、もう少し時間がかかりそうなので、


バランはその間に、メグとのやり取りについて少しだけ思い返してみた。


すると、前回の場面に連れていけなかった護衛神等に、まず申し訳ない感情が最初に沸き立った。


教皇神の分神霊といえども、教皇神には変わりはないので、護衛神4柱以上の護衛が必ず必要なのである。


メグと一緒にいた場面では、心から信頼している護衛をつれていけなかったことに、バランは記憶を掘り出し軽い苛立ちを覚えた。


あの時はそれよりも前から、1度目のメグとバランの差しの交渉が、バランの脳裏世界内で既に始まっていて、メグの思惑を聞き出したいバランは、


メグの計画の一部に沿った俳優として、演じざるを得なかったのだ。


バランの護衛神等は、メグの計画名簿には乗っていない。


メグは、場所を変える為と称して本神の言質を取り、バランに【分霊わけみたま】の御力を行使するようお願いし、


彼女神が分神霊に分かれたのを確認すると、有無を言わせずあの舞台前まで瞬間送迎しゅんかんそうげいさせられてしまった。


不満や叱責したい思いがバランにも、勿論当然のごとくあったのだが、交渉の席で自神の素顔を晒すわけにもいかず、


後日必ずこの扉を開放すると誓いながら、脳裏世界の保管庫にきっちり思いを仕舞いこむ事としたのだ。


お互いの場を変えた交渉は、メグ分神霊の脳裏世界の時間がほぼ進まない時空間の中で、2度目の交渉が始まる。


その交渉では、お互い時間を意識せずに、両者が手持ちのカードを切り合う方法で話し合いが行われた。


交渉は、お互いの心理が伝わりやすい神霊思念派で行う。


(それで、どこまで我々を巻き込む気なのですか)


(バランが収めて欲しいところで、収束させることも今なら何とかできそうよ)


(そのお顔は、何か見返りが欲しい表情をしていますが、どうしたいのです)


(そうねえ、色々あるから少しずつ、お互いに詰めていきましょうか)


両者ともに不平不満は胸に秘め、交渉は2柱の共通点を見出して協力していく方向で、話がまとまり、


双方が納得できる内容で、妥結だけつしたのであった。


だが、今少し思い返しただけで、脳裏世界の保管庫が開放され、不平不満が津波のように溢れ出してきたので、慌てて保管庫を、前よりずっときつく締める。


どうやらバランは、自分自神が考えているよりも、この事態を引き起こしたメグに対して怒りを覚えていたようだ。


彼女神は、気分を入れ替えようと周囲をちらりと見渡した。


舞台はすっかり様変わりし、神花が綺麗に咲き乱れいる。


心地よい神花の匂いが私の鼻腔を入って何だかうっとりしてしまいます。


そして、空中に漂っている音響神具機器、音響球ノート・スピーカーからゆったりとした音楽が空間をゆらしていた。


御心が安らぐ気持ちの良い音楽が胸にすーっと染み込んでいきます。


長テーブルには、色とりどりの美味しそうなお菓子と神紅茶が置かれていた。


わたしの好きなマカロンが沢山置いてあります。嬉しい。


どうやら、密談パーティー会場が完成していたようだ。


ロムは、いつでも給仕出来るよう準備万全の体勢をとり、バランの横で姿勢を保っていた。


ダグは、彫像のように全く動かない。


彼神も御心の中では、大変心配しているのだが、この場で教皇神様を守れるのは、自神だけと気を新たに空間全体の些細な兆候に神経を全集中する。


ヘスカは、舞台が完成しその後もずっと心配そうに、バランを見守っていた。


バランを心配するあまり、へスカの綺麗な翠玉の神眼ゴッドエメラルドアイうるんでいる。


ほんの少しだけ貴神等に視線を向ける余裕ができたバランに、ヘスカは堰を切ったように思いの丈を口から出していく。


「教皇神様、今回はどのような悩み事をかかえておられるのですか」

「そこまで根を詰めておられますと、御神体をくずしてしまいます」

「どうか、この私ヘスカに、教皇神様の御心の内を全て吐露するよう、おっしゃてください」


その真摯な思いは、バランの御心を解きほぐしていく。


そして、誰もいない脳裏空間の中で思念派で呟いた。


(ごめんなさい。貴神達にこんなに迷惑をかけてしまって)

(1柱で考え込むのは、やはり間違っていました)

(これからは、もっと貴神達を頼ることにします)


頼りになる貴神達に直接言うのは、さすがに少し気恥ずかしかったようだ。


「そうねえ、ここまで場を整えられると、私の負けになりそうです」

「ここは大人しく観念して相談することにしましょう」


バランは、この言葉をかけるのも何だか恥ずかしげだったが、


言葉をしゃべりだすと思いが重なるようにすらすらと口から出て行く。


「ヘスカ、聞いてくれるかしら」


そしてバランは、この場にいる仲間に対して、感謝の意を思い浮かべ微笑んだ。


「承知しました」

「このヘルカ、神脳に全御力を注ぎ込んで拝聴いたします」


へスカはお鼻をふんすと鳴らすかのように気合を入れて返答する。


他2柱、ダグとロムも集中して、バランの発するお言葉に耳をそばだてる。


「まず、最初に白状しますが、私は知り得た内容を全て話すことができません」

と約束しましたから、話しても良い内容だけへスカに話すことにします」

「話せない内容については一度脳裏で丁寧に整理してみます」

「そして話せる内容だけ改めて相談に乗ってもらうことにしましょう」

「それで、いいかしら」


あの子と聞いただけでピンと閃たくないのに、閃いてしまった3柱は、


あ奴のいつものやり口に、思わず反吐が出そうになるのを必死に我慢して、


あのエロ悪魔やろー今度はどんな厄介事に巻き込むんだと、


思念派でお互いやりとり仕合いながら、


回を増すごとに巨大化していく難題に恐怖を覚えながら、


頑張ろうぜ、俺も負けるものかと、皆御力を合わせましょうと


己を奮い立たせる3柱。


「承知しました」

「私ヘスカは、いつものように壁になります」

「まずはヘスカをただの壁と思い、教皇神様の御心の内を全てお話しください」


いつもの緊急対策派閥『メグの暴走をなんとかし隊』の緊急協議会が開始された。


----------メモ設定 参考資料------------


魔神化


邪神が使う邪神威、魔神が使う魔神威、暗黒神が使う暗黒神威など、闇属性の神威を限界以上に神体に浴びると神属性が裏返り、邪神、魔神、暗黒神などの闇属性の神に落ちてしまう。

一時なら浄化できる可能性があるが、何者にも限度がある。

必要以上に浴びてしまうと戻れないことが多い。

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