恐怖の電話

もう20〜30年前になります。

高校生の頃、幽霊の世界にかける電話番号があると友人が言い出したんです。



昔、そういった電話サービス?があったのをご存知でしょうか。

トイレの花子さんにつながるだとか、怪談話を聞かせてくれる電話だとか、色々とあったんです。

そのうちの一つだと思うのですが、幽霊の世界に電話するという「恐怖の電話」というのがありまして、それが44444444というものでした。

4を何回かは忘れてしまいましたが、番号全部4でそろえたものです。

まあ、友人もからかい半分で教えてきたんですが、私も興味がありまして。

かけてみたんですね、近くの公衆電話からですけど。


しばらく呼び出し音がした後、つながったんです。


恐る恐る、私は「…もしもし」と呼びかけてみたんです。

すると


「お世話になっております。〇〇社、△△支局、◇◇課のTです」


と返されまして。

あれ?

ちゃんとしすぎている対応だと思いつつ、Tという名前と電話の声に聞き覚えがありました。


それで、「…え、お母さん?」って聞いてみると


「え!? Kくん⁉︎ ちょっとアンタ!何でこんなところにかけてきてるの⁉︎」


と、その後電話のまま延々と叱られました。


なぜか、母親の職場につながってしまったんですよ。


通話中に誰かの声が聞こえる、いわゆる「混線」は当時ちょくちょくありましたけど、こんなにちゃんと、番号と違う所につながってしまうなんてことは滅多にありませんでしたから。

いやぁ不思議なこともあるもんだと、友人との笑い話になりました。

その後、出張から帰ってきた母親に小言を言われたんですよ。


「アンタね、そういえば昨日の電話は何だったの?」


母親が、職場に電話をかけてきたことをまた咎めてきたんですが。




昨日ではないんです。




私が恐怖の電話にかけたのは、母親が出張から帰る2週間前のことなんですね。




「昨日?かけてないよ」と、当時私も弁解したんですが

「何言ってるの。職場に急にかけてきたじゃないの。お母さんびっくりしたわよ。しかも何にも用事ないなんていうからさ」と話になりません。




つまり私は、2週間先の母親に、電話をしたことになる訳でして。




いやぁ、不思議なことってあるもんです。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る