繰り返される自殺
いつだったか、友達と車で移動中でした。
ある幹線道路を走っていると、道路沿いに建つビルを見て運転中の友人が
「あのビルから飛び降りる幽霊、出るらしいよ」
と、知りたくもない情報を知らせてきました。
夕日を背中に受けた黒い人影が、屋上に現れて飛び降りるのだそうですが、ドパーン!という重い落下音と軽い地震のような振動が、分かる人には分かるのだそうです。
しかも、その黒い人影は何度も何度も現れ、飛び降りを繰り返すのだとか。
横から聴こえるおどろおどろしい話ぶりを聞き流しながら、ふと思ったんです。
なんで、繰り返されるのだろうって。
個人的には、面白さを際立たせるための誰かの脚色・演出だろうとは思ってはいたのですが、結構この手の話って色々な説が生まれるんで、興味深いなぁって思ってたんです。
霊がその地に縛られ最期の時を繰り返している説とか。
いやいや、繰り返しは自殺という罪深い死を選んだ者に与えられる地獄だという話も聞いたことがあります。
でも、その地に縛られたからって繰り返すかな、とか。
自殺が罪深いってなんか、キリスト教的な話だなぁ、とか。
ただの怪談話にそんな意地悪な、自問自答をしてみたり。
いろいろ説があるけど、どれもなんとなく腑に落ちないところがあるよなぁって思ったりしてて。
まあでも、こうした話には元々のがあったとしても、それに尾鰭はひれがついただけのものもありますしね。
そこに伝言ゲーム的な曲解が加わって、自然と怪談の面白さが醸成されていったりしているってことかなぁって。
まあ、どうでもいいことなんですけど。
思考訓練みたいに色々と考えてみて、自分なりには楽しめたので。
とりあえずの決着が、自分の中ではついたんですよね。
「死ねないからよ」
突然、女性が耳元で囁いたんです。
助手席に座る僕の左耳にです。
思わず声をあげ、友人を驚かせてしまいました。
何何何何?と慌てる友人をなだめながら今あったことを説明すると
「え? ビルから飛び降りるのって女性らしいんだけど、知ってんの?」
と言われ、二人で黙ってしまいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます