引越しの理由 其の三
俺、怪談好きなんですよ。
それでとうとうやってみたんです、百物語。
百話掲載されている怪談本があって、で、それを一晩で読むと怪異が起こる。
そういうのがあったんで、やったんです。
友達にもLINEしておいて1人になるようにして。
なんていうか俺んちって溜まり場になりやすかったんで。
前の週から、よく来る奴らにその日だけは来てくれるなって言っといて。
そんでお菓子とかコーラとか買って、家から出なくていいようにして。
なんかテンション爆上げだったんですけど。
そういう感じで全部準備して、やりました。
でもまあ、特に何も起こらなくてですね。
ラップ音するとか変な夢見るとか。
そういうのを期待してたんですけど何もなかったんです。
そういうもんかぁって思って、フツーに過ごしてたんですよ。
で、なんか1週間くらいして、あれって?
友達が全然、家に来ねぇって思って。
だいたい、こっちから呼ばなくても誰か来てたのに全然来ねぇなって。
なんか、なんとなく寂しいじゃないですか。
で、1人よく来るやつに、なんで遊びに来ないのってLINEしたんですよ。
そしたら
「いやこないだ行ったけど、いなかったよな」
って返信あって。
何がって返したら、金曜に行ったんだけど出なかったって言われたんです。
っていうのも、百物語やったのが木曜日だったんです。
だから友達はその次の日に家に来たらしいんですね。
いやでも、俺その日は家にいたんですよ、ずっと。
なんで、いや家にいたけどって返したら、いやエントランスで呼出してもLINEしても音沙汰ねぇから帰った的なこと言われて。
は?ってなって。
なんか、たまたますれ違ったんかなくらいに思って。
そいつはそのうち行くわ〜みたいなLINEして終わったんですけど。
で、また違うやつにLINEしたんです。
そしたらそいつも似たようなこと言ってきて。
そいつは木曜の、だから百物語の日です。
さすがにもう読み終わったろうと思って、夜の11時くらいに俺んち来たみたいなんですけど。
でも、やっぱ呼出してもドア開かないし、外から見たら部屋真っ暗だったから、寝てるんかなって思って帰ったって言われて。
いやフツーに家にいたし、起きてたんですよ。
なんかちょっと怖くなってきて。
そいつに今から来てって行ったんですけど今ちょっとって言われちゃって。
もう1人家が近いやつがいたんで。
今すぐ来てってLINEしようとしたんですよ。
そしたらなんか、ちょうどそいつから電話来たんですよ。
もしもしって出たら、お前か?って。
うん俺、って答えたら、土曜日にさ、お前んち行ったんだよって言われたんです。
でもその日は、俺いなかったんで。
なんで、あ〜ごめんその日はちょっと出てたんだよねって言ったら。
いやお前、いたぞって言われて。
そいつが言うには、百物語どうだった?的なことで俺んち来たらしんですね、そいつも怪談好きなんで。
エントランスで部屋番号押したけどドア開かなくて、管理人に言って開けてもらったらしくて。
で、部屋のチャイム鳴らしたら、俺が出たって。
「いやいやいや、ようこそいらっしゃいました。ささっどうぞ、お茶でもお出ししましょう」
って、めっちゃニコニコして、旅館の人みたいだったって。
いやいやいやキモイからって、そいつ部屋に入らずに帰ったそうなんですけど。
「百物語のせいじゃねぇの?」
って言われて、鳥肌立って。
もう、すぐに、引越しました。
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