夜の公園①

学生の頃、すごい太りまして。

ダイエットのために近くの公園まで走りに行ったんです。



初めて一人暮らしを始めたころで土地勘なかったんですけど、地元から通う同じ専門学校の人に、自分のアパートの近くに公園があることを教えてもらったんです。

まずは、そこまで走るところから始めようと思いました。

とりあえず下見に行ったんですけど、自分のアパートから距離にしてだいたい1km強といったところですかね。

集合住宅に囲まれた公園で、入り口登ってすぐ左手にブランコと砂場があるだけで、あとは三角ベースができそうなちょっとしたグラウンドがある、まあまあ広めの公園でした。

なまった体に刺激を入れていくのに、手始めとしてちょうど良いだろうと思って、その週末、夜の10時ごろに走り出しました。

なんでそんな時間かと問われれば、恥ずかしかったからですね。

太ってるの気にしてんだ、とか言われるのも恥ずかしいし、カッコ良くすぽぉてぃに走れるわけでもなかったんで。

人目を避けるため、夜更けにどたどたと公園目指して走りました。


ゆるい上り坂が続くので10分くらいかかってると思うんですけど、流す程度だったとはいえ、ひさしぶりにしては調子良く走れたんで。

公園で一息ついた後グラウンド1周して、あとはウォーキングで家まで戻ろうくらいのことを考えてました。


って、入り口の坂を登ったら、メッチャびっくりしたんですよ。


ブランコで女の子が遊んでるんです。


なんか、ぶおんって感じの風を切る音が聞こえるな、とか思ってたら、その女の子のブランコの音なんです。


こう、横から見たときのブランコの軌道が半円になる感じ、分かります?


なんなら、ブランコ釣り下がってる柱のちょい上あたりまで、大きくブランコを振りかぶって遊んでるんですよ。



しかも座ったままで。



立ちこぎでも難しいですよ、そんなの。



うふふ、ふふふ、って笑いながら楽しそうに、白いふりふりのワンピースきた女の子が豪快にブランコで遊んでるのを、夜10時の公園で見たら、どうします?



自分は見なかったことにしました。



入り口あたりで腰に手を当てて息を整えながらぐるぐるして、ここはただの通過点に過ぎないんですよ、と。

だからあなたのことはよく見えませんでした、何にも気づきませんでした、という空気を全身から発して、来た道を走って引き返しました。




めっちゃ怖かったッス。





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