ライト
実家の近くは山とか田んぼが広がってまして。
高校当時はその辺を走ってたんです。
体力をつけたかったので、田んぼの周りとか山とか走って、途中にある神社の階段で登って降りてをやって、またコースを周回するのを日課にしていました。
そのコースで3周するとだいたい10kmくらいになって丁度良かったんで、毎日走ってました。
田んぼから山に差し掛かるあたりに、打ちっぱなし?のゴルフ場があって、その辺りの車通りがまあまああったので。
あんまりお客さんがいない、車が通らない時間帯を狙って夜の9時とか10時くらいに走ることもありました。
ある日の夜そこを走っていると、ゴルフ場の駐車場の方が光ってて、なんだろうと思ってると、どうも誰かがライトで照らしているんですね。
マグライトみたいなライトでこっちの方を照らしているんですけど、その光がだんだんと僕の方に向かってきて、僕自身を照らし始めたんです。
駐車場は、だいたい100mくらい向こうにあるんですけど、その駐車場に入る道の途中あたりに誰かが立ってて、僕を照らしているんです。
僕が走る道と駐車場に入る道とでT字路になっているので、僕はそのライトに照らされながら横切るような形になるんですけど、その間、ずっと顔を照らされているんですよ。
まぶしいですよ、って分かってもらうために手でひさしを作ってたんですけど、なんかずーっと照らしてきてて、なんなんだと思ってそっちを見たんですが。
なんとなく見えたのが、どうもジャージ姿の中学生っぽい女の子なんですよね。
おさげしているようにも見えました。
駐車場は煌々と明かりがついてはいるんですけど、ちょうど立っているあたりは逆光になってて、その上ライトで顔を照らされているのでよく見えないんです。
中学生っぽい女の子がこっちをひたすら照らしているっていう、すごく迷惑な状態のまま通り過ぎました。
ふと振り向くとやっぱり光は僕に当たってて、結局よく分からずじまいで、なんなんだと思いながら走って神社に差し掛かったときに、ふと思ったんです。
こんな時間に中学生の女の子が立っているのっておかしいなって。
気になりますよね。
僕もちょっと気になったので、神社の階段登りをやらずにもう一回さっきのゴルフ場の所まで戻ってみようと思いまして。
ゴルフ場と神社との間は2kmくらいなんで10分かかりませんし、引き返してみました。
ゴルフ場や駐車場が見えてくると、やっぱりその途中の道で誰かがライトで照らしているなって感じが見えたんで、今度は駐車場に行ってみようくらいの気持ちでいたんです。
T字路が近づいてライトが僕の方にあたるかな、ってあたりで
向こうから救急車が来たんです。
サイレンを消した状態で救急車が駐車場に入っていったんですけど。
そのライトが、救急車を照らすようにくっと向いたら、消えたんですよね。
その直後、救急車のライトでその道が照らされていくんですけど誰も立ってませんでした。
誰かいれば、救急車のライトに照らされてもいいのに誰もいない。
ライトを消してその道を引き返したとしても、駐車場の明かりに照らされるので誰かが走るなりしていたら分かるはずなんですが、そういう人もいない。
ライトとともに中学生らしき人も消えた、ようにしか見えませんでした。
見てはいけないものを見たのかも、と少し怖くなって、その日はそのまま家に帰りました。
後日、母親から聞いたんですけど、そのゴルフ場に来ていた中学生の女の子が怪我をして運ばれたそうです。
お父さんと一緒に来ていた女の子で、隣の人の打球が天井にあたって跳ね返り、その子の頭に当たったそうで、幸い命に別状はなかったそうですが、意識を失い救急車で運ばれたというものでした。
やっぱり僕は、見てはいけないものをみたのかなという思いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます