燃えてる

両親から聞いた話です。



私がまだ十ヶ月くらいの赤ちゃんだった当時、母は産休に入って私の面倒をみて、父が仕事に行っていました。

ある日、仕事を終えて帰ってきた父がベビーベッドに入っている私に話しかけようとしたら、真顔で私が



「燃えてる」



って、はっきりとした日本語で言ったらしいんです。

一瞬何が起こったのか分からない父は、とりあえず母を呼んで一緒になって私を見つめていたんですが、今度は私がベッドの柵につかまりながら立ち上がって、おしゃぶりやおもちゃを帽子につめこみながら



「お父さんお母さん聞いて。燃えてるよ」って



聞き間違えとかじゃなく、こっちを向いて両親に言ったんだそうです。



私がなのか、両親がなのか分からないんですけど、外の風に当たれば正気に戻るだろうと思った両親はとりあえず、私を抱っこして外に出たんですね。



そしたら、下の階の一室からもうもうと煙が出ていたんです。



オムツやミルクセットが入れっぱなしになっていたカバンに、携帯と財布を詰め込んで逃げることができたそうですが、燃えていた一室というのが1階に降りる階段のそばの部屋だったこともあって、もう少し遅かったら退路を断たれて危なかったんだぞと、逃げるときに負った右手の火傷を見せながら父が教えてくれました。

その後の私は、突然喋り出すこともなく普通に育ったらしんですけど。




もちろん私は覚えてないんですが、今でも両親は私に助けられたと言っています。



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