第4話
「それじゃん」
ミーちゃんが僕の鼻にねじ込んだ鉛筆を左右に広げようとしながら言った。
小学生にやられた姿が見たいと言ってきたのだ。断って無理に突っ込まれても恐いので、二つ返事でOKした。痛い。
「たしかに神様は願いを叶えてくれたわけだね。この体なら強いだろうし、クマ好きの彼女に好かれる要因は備えている。おまけに光演出付きでわかりやすいことこの上ない。いたれりつくせり神対応」
「じょ、冗談じゃないよ! あだだだだだ!」
「冗談じゃないのはこっちだけどね。私という妹がありながら、ほかの女にうつつ抜かすなんて……信じられない。それでもダメ人間のつもり?」
「べ、別にダメ人間なんかじゃ――」
「ああ、今はケモノだっけ」
と、ミーちゃんが鉛筆を引き抜く。鼻水が伸びた。ぶほ、とおならが出た。
「へえ、ほんとに出るんだ。覚えておこう」
「頼むから忘れてほしい」
ミーちゃんは『愛するお兄ちゃん観察記録#138』と書かれたノートになにやら書き込む。
「とりあえず、その白石さんのことは見逃してあげるよ。愛人の一人や二人、なんてことないから。」
なにやらミーちゃんの中ではとんでもない計画が出来上がっているらしい。
「前から聞きたかったんだけど、どうして僕のお嫁さんになんかなりたいの?」
「お兄ちゃんよりおもしろい存在なんかいないからよ」
反論の余地がないほどはっきりと断言される。ちょっとへこんだ。
「それより、原因の可能性はつかんだわけだから。次の行動よ」
「行動ったって、神様の仕業だってわかっただけで何をすればいいのか……」
「そんなの、とりあえず思いつくままやるしかないでしょ。第一、神様の仕業だって確証もないわけだし、このさい手当たりしだいやるしかないのよ。まずは、現場百回。その神社へ行きましょう」
「えぇぇ! この姿で?」
さすがにそれはまずいんじゃなかろうか。
猟友会にでも通報されたら、そのまま射殺なんてことも……。
「うーん。そうねぇ」
ミーちゃんが腕を組んで考える。
「あ、これならいいと思うよ」
満面の笑みを浮かべた。
ああ。
これはヤバい笑みだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます