第10話 アイドル達との面会(2)
「……スケジュールは以上です。それと他のメンバーとの顔合わせは1時間後となります。また、仕事の時はこの臨時の社員証を胸につけて下さい。このビルに入館するときもテレビ局や他の企業に行くときも必要になりますから」
今後のスケジュールを俺は手帳に書き込む。
結構、忙しそうだ。
それに、ストーカーの件はさっさと終わらせ、マネージャー業務の方を優先している。何か違和感を感じる。
俺はストーカーの件について少し突っついてみた。
「それと、蓼科さん。一度倉元さんの自宅にお伺いしたいのですけど」
俺がそう言うと、リリカは怒りを俺にぶつけて来た。
「何であんたみたいな奴を家に入れないといけないのよ!無理、絶対無理!」
「黙ってよく聞け。さっき聞いたストーカー被害の件だ。間違いなくお前の自宅に盗聴器が仕掛けられている。ストーカーにいろいろなことを聞かれても俺は構わないが」
「いいわけないでしょう!でも、前に美晴さんに調べてもらったのよ。もう一度調べる必要はないでしょう?」
「私が調べた時は盗聴器は発見できませんでしたけど、それは必要な事なんですよね?」
マネージャーの蓼科さんはそう言うが素人判断は危険だ。
「普通の機器では発見できないタイプもあります。用心のためです」
「リリカ、東藤さんに一度調べてもらいましょう。その方が安心でしょ?」
「嫌よ。こんな奴家に入れたくない。それにこいつ、美晴さんには丁寧な言葉で喋るけど私に対して何でそんなに偉そうに喋るの?気に入らないわ」
「そんなの当たり前だろう?話す相手のレベルに合わせているだけだ」
「むきーーっ!!頭にきた!!」
「リリカ、落ち着きなさい。そんなんだからダメなのよ。今の貴女はトップアイドルなんだから普段から意識してないとすぐボロが出ちゃうわよ」
「私だってバカじゃありません。相手によって使い分けてますーー」
はあ、ちっとも話が進まない……
これでもリリカは16歳、俺よりひとつ下の年齢だ。
本当に子供みたいな奴だ。
しかし、ストーカー被害に遭ってるのに、何でこんなに強気なんだ?
早く解決した方が本人も安心だろうに……
話す相手は蓼科さんに絞ろう。
このバカ女は無視だ。
「倉元さんは一人暮らしですよね。他のメンバーは、自宅から通っていると調査書で拝見しました。あっ、そうですね。倉元さんは忙しい身ですから部屋もろくに掃除もできませんよね。アイドルの部屋が汚いと知られたら嫌だというのが本当の理由なんですよね。そうでしょう蓼科さん」
「え〜〜っと……」
困った様子でリリカを見る蓼科さん。
煽ったらやはりリリカが参戦してきた。
「あんたね〜〜私の部屋が汚いって言ったわね。見もしないでよくそんな事が言えたわね。いいわ。本当は嫌だけど部屋に入るのを許可します。そして、私の部屋が汚くなかったら謝罪してもらいますからね。勿論、土下座よ!いいわね」
「ああ、それで構わない」
やっと話が進んだよ。
はあ、マジ面倒臭い……
だけど、蓼科さんの違和感の正体はわからなかった。
◇
応接室での打ち合わせの後、他のメンバーとの顔合わせがある。
ぷんすか怒りながらリリカは先にレッスン室に向かっている。
俺は細かい注意事項を蓼科さんから聞いていた。
ビルの上階にレッスン室があり、他のメンバーはそこに集まっているようだ。
なんか甘酸っぱい匂いが立ち込めている。
蓼科さんの案内で、そのレッスン室に行くと『FG』5のメンバーが振り付けのレッスンをしていた。
「皆んな、ちょっと集まって〜〜」
蓼科さんが手を叩いて声をかけると、少女達がこちらを向いた。
倉元リリカも着替え終わってそこにいた。
相変わらず、こちらを睨んでいる。
「前に言ったと思うけど、私が『苺パフェ』のマネージャーを兼ねる事になったから、その穴埋めの為にサブマネージャーを、この方にお願いしました。東藤さん、自己紹介をお願いします」
「東藤和輝です。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げるとメンバーの1人が、
「え〜〜、それだけ?」
「ほらっ、皆んなも自己紹介しなさい」
蓼科さんが間に入ってメンバーに挨拶を促した。
「倉元リリカ、チームのリーダー。先程はどうも……」
「リリカちゃん、先に会ってたの?何かズルい。私は
芹沢アヤカ、髪の毛を銀髪にしている女の子だ。
背は160センチぐらいだろう。
「私は、
少しおっとりとした感じ。
黒髪をヘアピンで留めている。
「
身長が153センチぐらいだろうか、小悪魔的な感じのする少女だ。
髪の毛は赤みがかかったブラウンに染めている。
「
身長は165センチとリリカと同じぐらいある。
だけど、なんだろう?大人びているのだが、まだ子供って感じだ。
髪の毛は、栗色。ポニーテールにしている。
みんなの挨拶が終わると直ぐに、柚木カレンは俺に質問してきた。
「17歳の高校二年生だ」
「ねぇ、ねぇメンバーの誰推しなの?」
アヤカと名乗る少女の質問は俺には意味不明のものだった。
「推し?意味がわからない」
「えっーー!推しだよ。推し。つまり、このメンバーの中で誰が好みかって事」
「推しとはそう言う意味なのか?わかった。記憶しておく」
「はあ〜〜!?美晴さん、この人何なの?私達の事知らないって事はないわよね?」
アヤカって子はリリカの次に面倒臭そうなタイプだな。
「さあ、私も詳しいことは知らないのよ。信頼ある方からの推薦だから。どうなんでしょう?東藤さん」
蓼科さんも困って俺に振ってきた。
「みんなの事は全く知らない。そもそもアイドルって意味がわからない」
俺は正直に答えた。
「「「「「えっーー!!うそーーっ!」」」」」
仲は良いみたいだな。上手くハモってる……
「俺は2ヶ月前に日本に来たばかりだ。海外暮らしが長くて日本のことはあまり知らない」
「帰国子女なんだあ、そうか、それなら納得だよ」
「アヤカ、それって私達は海外では全くの無名って事でしょう」
「リリカの言う通りだよ。日本ではメジャーになったけど、今度は海外でも知名度上げないといけないだよ」
「でも、どうやって?言い出しっぺのユキナには案があるの?」
「動画サイトにバンバン載せればいいんだよ。私達の歌とダンスをさ」
「カレン、それはもうやってる。アクセスも順調に伸びてるはず」
「じゃあ、ミミカは何か良い案あるの?」
「う〜〜ん、メンバーで漫才とか?」
いきなり、メンバー達で戦略会議が始まってしまった。
真剣にアイドルってものに取り組んでいるようだ。
「ハイハイ、そこまでにしなさい。海外の件は今後の課題です。秋には国際映画祭が東京で行われます。打ち上げのパーティーで貴女達が国歌を歌うことになっています。まだ、予定だけどね」
「え〜〜凄い」
「初耳」
「パーティーって偉い人がたくさんくるんでしょう?」
「逆玉狙い」
「わ〜〜今から緊張してきたよ〜〜」
「その前に貴女達は夏のツアーがあるんだから、先のことより目先のことに取り組みなさい。それじゃあ、東藤さん、お願いしますね」
蓼科さんは、そう言ってレッスン室を出て行った。
「じゃあ、みんなもう一度初めから通しでやろう」
リーダーらしく声をかけてレッスンを促すリリカ。
「それと、そこのサブマネージャーさん。飲み物を買ってきて頂戴」
「リリカ、いいの?そんな事頼んで」
「いいのよ。だって、こいつサブだから」
「じゃあ、私はスポーツドリンクね」
「私は緑茶。甘いのは太るし……」
「はいは〜〜い。ミミカはオレンジジュースがいい」
「私は家から水筒持ってきたからいらない。でもアイス、ゴリゴリ君が食べたい」
「「「「私も〜〜」」」」
「………わ、わかった」
パシリがマネージャーの仕事なのか?
まあ、いい。ここに居るより気が楽だ。
俺はレッスン室を出て、ビルを出て数軒先のコンビニに向かったのだった。
はあ、先が思いやられる……
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