第2話ミニチュアの爪
「真壁さん、おめでとうございます!かわいい女の子ですよ!」
ふにゃあ、ふにゃあ、という大きな、けれどもまだ弱い泣き声が聞こえる。
息もまだ整わず、髪が汗で顔にひっつき、気持ち悪いことこのうえなかったが、
助産師の呼びかけに彼女は涙を浮かべつつ微笑んだ。
「真壁さん、お待たせ。赤ちゃん綺麗になったよ。」
数分後、綺麗にされた赤ん坊がうすいピンクの布にくるまれ、彼女の脇へ置かれた。
小さな目、小さな鼻、小さな口、小さな手。
なにもかもが小さい。
そっと手のひらをつつくと、思いの外つよい力で握ってくる。
その小さな指に、信じられないほど小さな爪がきちんと揃ってついていることに何故だかいちばん感動してしまう。
「かわいい…」
赤くてくしゃくしゃな顔なのに、
見ているだけで、頬がゆるんでしまう。
人生でいちばん酷い痛みのあとに、
人生でいちばん愛おしいものに出会える。
「ありがとうね、わたしのところへきてくれて…絶対、幸せにするからね…」
彼女はそう誓ってみせたが、
赤ん坊はただ、ぷぅー、と息をはいた。
しらたまにちぎりパン あかはし陽菜子 @akahasi_hinako
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