第47話 4人の力
「ハハハッ。惨めねぇ」
俺は文香の罵倒を無視して、逃げるようにメルアの障壁の中に避難。
「信一君!」
すぐにメルアが心配そうな声で俺に駆け寄ってくる。
俺はメルア達に視線を合わせて話しかける。
「心配ありがとう。なんとなくわかった。俺1人では、文香に近づくことはできない」
「そ、そんな……」
がっくりと肩を落とすルナ。そりゃそうだ、でもそれは事実だ。だから──。
「俺1人では文香に勝てない。だから力を貸してほしい」
そう、力を合わせればいい。
「そうだね。4人で戦えば、きっと勝てると思う!」
メルアもポジティブになった。一気に雰囲気が明るくなる。それでこそ彼女だ。
そして俺は3人に作戦を打ち明けた。
「──という作戦でいいかな?」
「面白そうだ。早くアイツをぶっ飛ばしたいぜ!」
「私は、やってみる。それしかないもん」
「力を合わせて、頑張ろう!」
みんな、ありがとう。これなら、戦えそうだ。
そして、俺とダルクが文香の方向を向く。この中で接近距離の戦闘ができるのは俺とダルクだけ。
メルアとルナは障壁の中で魔力を俺たちに供給している。しっかりとしたサポート、頼むぜ。
俺は両足に魔力を込めて一気に天空へと向かって駆け上がる。
当然、その瞬間に竜巻が出現し俺の行く手を阻み始めた。
──が、今の俺はさっきまでとは違う。ルナとメルアによって強大な魔力を与えられているので、襲ってくるがれきや滝の枝がスローペースに見える。
動きも滑らかでそれらを容易にかわしていく。それどころか、がれきを踏み台にすることだってできるくらいだ。
「こいつ、生意気ね!」
文香が歯ぎしりをしているのがわかる。そして一気に加速をつけて文香の元へ。
文香相手に急接近を仕掛けていく。ルナとメルアのおかげで速度もパワーも上がっている俺は接近戦を仕掛けようと文香に切りかかる。
文香も力を込め応戦。互角の戦いといった所だ。
そして俺と文香が互角の戦いをしているところに──。
「くらええええええ!」
叫んだのはダルクだ。
彼女が背後からダルクが襲い掛かった。
「こいつ──」
文香は無理やり力を込め剣を振り下ろす。馬鹿力というやつだ。手がしびれ思わず一歩引いてしまう。
そしてその間に文香はダルクに切りかかる。
「邪魔なのよ。消えろぉぉぉぉぉぉぉ」
文香のバカ力にダルクは耐えきれず、攻撃をモロに受ける。
そしてダルクは攻撃を受け地面に向かって落下。その光景を見て文香は思わずほくそ笑んだ。
「とんだ期待外れね! あの世で後悔なさい!」
その言葉にダルクはにやりと笑い反論。
「バカだなお前。後悔するのはお前だ!」
そう叫んでダルクが俺に向かって手をかざす。
そう、これが作戦。わざとだっるくはこの場から去った。ダルクの役目は文香に俺の背後を向かせること、もう1つは俺のさらなる力を与えること。
感じるぜ、ダルクから受け取った強い力を。
ダルクは数々の死線を潜り抜けているから、どれくらい魔力を残せば生き残れるかを、本能的に理解している。
だから無駄なく俺に力を渡してくれた。
「こいつら──」
慌てて文香はくるりと方向を変え、俺の方向を向く。そして剣を振り上げる。振り向きざまだから正面で向き合うときと違って力が完全には入らない。これなら勝機がある。
そして俺は剣を振り下ろし、魔力を込めた光線を文香に向かって解き放つ。文香もその攻撃に負けまいと無理やり体勢をよじり攻撃を解き放つ。
両者の攻撃は衝突。そして俺の術式は文香の攻撃を打ち破り、文香に直撃。
「そ、そんな……」
「し、信一君──」
「やった!」
歓喜の声を上げるルナとメルア。これで勝負はあった。
そして落下していく文香、これでとどめだ!
「これで最後だ──。メルア、ダルク、ルナ。俺に力を貸してくれ!」
「「うん」」
「ああ!」
3人は掛け声を出すと、最後の作戦に打って出る。
まずはルナとメルアが、祈るようなポーズになり、さらに俺への魔力供給を上げる。
さらに魔力が強くなっているのを感じる。
けど、それだけじゃない。「全員」の力を合わせるんだ。
そしてダルクが地上に着地。
「俺の最後の力、受け取れ!」
ダルクが叫ぶと、彼女の力も俺に向かっていくのがわかった。
そして──。
「これが、俺たち4人の底力だ。どうだ、思い知ったか文香!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
文香に、最大級の魔力を伴った砲撃を当てる。
そう、これが俺たちの結束の力だ。そしてそれが、文香の力を打ち破ったのだ。
文香は、地上にそのまま落下し倒れこんだ。
もうこいつは宙に舞うことも出来ない。
これで勝負はあった。そう安心しきっていると──。
ズッ──、カタッ。
「ウソだろ。まだやる気なのかよ」
ダルクの言葉通りボロボロになっていた文香は魔剣を地につけ、それを支柱にゆっくりと立ち上がり始めたのだ。
「まて、もう勝負はあっただろ! 潔く投降するんだ」
「投降、冗談──。なんで私が、あんたたちなんかにひざまずかなきゃいけないのよ──」
まあ、こいつの傲慢な性格ならば十二分にあり得る。だが現実としてこいつの魔力ではもう戦うことができない。
魔剣からも魔力をほとんど感じない。現実を見ずに無理やり立ち向かった所で結果は見えている。
「やめなよ文香ちゃん。もう勝負はついて──」
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