第46話 みんな消し炭にして、滅ぼしてやる!

「どうしてここにあなたたちを呼んだか、わかってる?」


「まあ、ただ事じゃないのは理解できる。決着をつけるとか、そんなことだろう?」


 仁王立ちしている文香の口元が、にやりと笑みを浮かべだす。


「いい勘しているじゃない。それでいて逃げずに来たんだから、その度胸は褒めてつかわすわ」


「やめて文香ちゃん。戦いたくないよ。また、一緒に村で過ごそう?」


 その空気を察してメルアが叫ぶ。


 敵とはいえ、村でしばらく一緒に過ごしている彼女と戦うことに抵抗があるのだろう。

 流石はメルア、優しい性格だけはある。そういう所、俺は大好きだ。


 けれど──。


「冗談──。私の信一を奪い取ったあんたたちなんかいらない。私を捨てた信一なんていらない。みんなみんな消し炭にして、滅ぼしてやる!」


 今の文香に何を言っても無駄だと思う。目つきを見ればわっかる。怒りに満ちていて、何を言っても受け入れないであろう目。


「あきらめろメルア。あいつはもう、何を言っても無駄なんだ」


 ダルクは、それを理解している。子供ながら、死線を潜り抜けているたまものだ。


「そうだ、それが、文香が選んだ道だ。だったら俺たちがすることはただ一つ。文香の想いを受け止め、全力で戦うだけだ」


 その言葉に戸惑いながらもメルアは理解する。


「わかった。私、戦うよ」


「そうよ。この文香様を散々コケにしたんだもの。今更和解なんてありえないわ」


 やはり戦うのか。そして文香が右手を天に向かって上げる。今までとは比べ物にならない戦いが始まるのだと、俺の本能が感じ始める。


「刮目しなさい。魔王直々に受け取ったこの力。これがあなたたちのすべてを粉々に打ち砕いて見せるわ!」


 魔王直伝。本当か──? だとしたら相当な攻撃が来るに違いない。


「みんな、気をつけろ!」


 俺が後ろを振り向くと、3人とも首を縦に振る。理解はしているようだ。

 そして文香の振り上げた右手にからどす黒いオーラの様なものが出現し始める。それは黒い光の柱となり天に向かっていく。


 空に突如真っ黒い雲が出現しそれが空一帯に覆いわたる。そして彼女の右手には1つの剣が出現し始めた。


 真っ黒い光に覆われ、禍々しい形をした剣だ。それを見たルナが叫ぶ。


「あれは魔剣『ウロボロス』です。魔王など、限られた人しか持っていない、最強の魔剣といわれているんです」


「そ、そんなにすごいのか?」


「はい。その剣の使用者によっては、大国そのものを滅亡させる力を持っているほどです」


 そ、そこまでの魔剣なのか。これは本気でかからないと死ぬことになりかねない。



 文香の肉体は宙に浮き始め、雲の中に入りこんでいく。するとゴロッ、ゴロッという音と共にピカピカと雲が光始めた。まさか──。


 ゴロゴロ──、ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!


 真っ黒い光をした雷が突如地面に向かって落下し始める。それも何発も。

 雷が落ちた場所は地面がえぐれてクレーターのようになる。当たったら……、俺達は間違いなく死ぬだろう。


「はっはっはっ。愉快よ。おとなしく消滅しなさい! 私を好きにならない、あんたなんてこの世にいらないのよ!」


 ふざけるな。慌てて俺たちはメルアの元に集まる。彼女の障壁なら、何とかなるかもしれない。


「私に任せて」


 慌ててメルアは弓を構え、天に向かって矢を放つ。そして矢から光が放たれ球状の俺たちを覆うシールドとなる。


「いや、これじゃあ持たないぞ!」


 ダルクの言葉通り障壁に雷が当たるとその部分にひびが入る。このままじゃ決壊するのは時間な問題だ。


 するとルナが両手を組み祈りのポーズを取り始める。


「私も、力になる」


 すると彼女の体が白く光始める。そしてその光は障壁に到達する。光は障壁を包み始め、入っていたヒビが何事もなかったように修復。


 雷が再び当たるものの、びくともしないのがわかる。


「ありがとうルナちゃん」


「どういたまして」


 とりあえず攻撃は防げた。けれどこれだけじゃあ勝てない。

 姿が見えない文香に攻撃をするには、これしかない。


「とりあえず、


「リスクはある。けれどこのまま閉じこもっているわけにはいかない」



 そして俺だけ障壁の外に出る。雷の位置に注意しながら両足に魔力を込めて飛びあがる。

 これで雷を撃破しながら雲の上まで行く。俺は魔力で一定時間中にとどまることはできる。あまり動くことはできないが──。


 それで文香を探す。そして雲まで差し掛かろうとすると──。


「甘いわね。そんな不自由な動きじゃ、お話にならないわ」



 文香がどこからかそう叫んだ瞬間、黒く染まった空に風が吹き始めた。


 それは円形状に少しずつ強くなっていき、大きな竜巻となる。

 竜巻は地上にある岩や土、遠くにあった機などを巻き上げ、俺に襲い掛かってくる。


 俺一人の魔力では、そこまで俊敏には動けない。



 とてもじゃないけど、これ以上前に行ける気がしない。仕方ない、いったん降りよう──。

 と降りようとしたその時。


「ぐはっ──」


 小石が俺の体にあたってしまった。その瞬間魔力制御が乱れ一気に落下してしまう。


 そこまで大ダメージじゃないが、連続でくらうとやばい。

 俺は地上に激突寸前で慌てて魔力を制御しなおし、直撃だけは避ける。


「ハハハッ。惨めねぇ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る