第41話 方法、一緒に見つけよう

 ゾドムとヒュドラに比べればどうってことない。行ける。


 そして十数匹もいた「フェンリル」も残り2~3匹くらいまで減った時、偶然ルナに視線が入る。


「おいルナ、どうしたんだ?」


 俺は気づいてしまったんだ。ルナの体が震えていることに。


 彼女は体をこわばらせ、何かに抵抗しているようなしぐさをしている。

 ──が、その抵抗もむなしく、ルナの瞳から光が消えているのがわかる。


 そして……。

 何とルナが突然大きな杖を右手に召喚し、俺たちに向けてきた。その杖から真っ黒い光の光線を出す。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 俺な何とか攻撃を防ぐ。その後ろにある建物は見事に粉砕されてしまったが。


 すると、メルアもそれに気づいて大きな声で呼びかける。

 しかし、ルナはその掛け声に反応せず、再び俺たちに向かって攻撃を放つ。


「えいっ!」


 慌ててメルアが障壁を張り、何とか攻撃を防ぐ。しかし、どうすればいい。迂闊に攻撃なんてできないし、周りに危害を加えるのもまずい。


 何かいい手はないかと考えていると──。



「これで、おわりだああああああああ!」


 ダルクが最後のフェンリルを倒す。これでフェンリルは全滅。すると──。


 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。


 ルナの体を包んでいた真っ黒い光が徐々に弱まっていき、消滅してしまう。どうやら周囲に魔王軍がいるときに、その魔力を吸収してしまうのだろうか。

 そしてルナの瞳に再び光りが戻る。どうやら正気に戻ったようだ。


「ま、また私──」


 彼女の瞳からうるうると涙がこぼれているのがわかる。

 と、とりあえず何か声をかけてあげなきゃ。


「ルナ、この──それは」


「わかっているんです。私に意識がない間に、もう1人の私が出てきて、悪いことをしてみんなを傷つけているってことを」


 俺の予想は当たっていた。近くに魔王軍かいると、その魔王軍の力に反応してしまい、人格に乗っ取られてしまうのだ。




 メルアも、ダルクも、かける言葉が見つからないようで、ただ黙っている。


「私、このまま街から去った方がいいのかな……」


 悲しそうなルナの表情。今はまだ知られてないからいいけど。もし公にこの事実が知らされてしまったら、ただじゃすまないだろう。





 心優しい彼女は、ただ自分を責める。無力だと、何もできないと──。

 俺は泣いているルナを見て強く決意した。彼女を、二度とあんな目に合わせないと。


 そして彼女の手をぎゅっと握る。


「大丈夫、絶対助けて見せる。何か方法はあるはずだ。一緒に見つけよう」


「見つけ……、られるの?」


「ああ! 絶対大丈夫だ。俺たちが、開放してやる!」


「うん。わたしも協力するよ」


「俺も。力になってやるよ!」


 ダルクとメルアも、強い口調で言い放つ。

 その言葉に、ルナの表情が少しだけ明るくなる。涙で瞳を濡らしながら、そっと視線を合わせた。


「約束、してね」


「うん。約束する」


 よしこれでルナは俺たちの仲間だ。


「とりあえずさ。私達と一緒に居ようよ」


「そ、そうだね。メルアちゃんと、信一君と、ダルクちゃんといたとき私、楽しかった。だから、もっと一緒に居たい」


「じゃあ明日、私達と一緒にいろいろ遊ぼう。せっかく友達になったんだし。楽しく過ごさなきゃもったいないよ!」


 意気投合するメルアとルナ。とても仲良く打ち解けあっているのがわかる。


 これなら仲良く過ごせそうだ。さすがはメルア、誰とでも仲良くなれる明るさを持っている。そういう所、俺はとても大好きだ。


「じゃあさ、明日みんなで遊ぼうぜ。一日中街を歩いたりさ。ルナの友達祝いってことで」


「いいねぇナイスアイデアだよダルクちゃん!」


「い、いいの? 私、こうやって大勢の人と遊ぶの初めてー。ワクワクする。楽しそう!」


 ダルクのアイデアが通り、明日は思いっきり街で遊ぶこととなった。ルナも心の底から喜んでいるのがわかる。


「とりあえず、私の家しばらく使っていいよ。一人暮らしだから、特に気を遣うこともないし」


 なるほど、これならホテルに泊まらなくて済むから金の心配はない。ルナとも親睦を深められそうだし一石二鳥だ。


 ちなみに両親とは別居しているらしく、原因はルナの能力が気味悪がられているかららしい。

 両親からも疎まれていたのか。


 だから、俺たちが大切にしてあげなきゃ!


「じゃあ私の家、案内するね!」


 そして俺たちはルナに先導されて彼女の家へ。



 これから、楽しい日々を過ごせるといいな。






 そして俺たちはルナの住んでいる家にお邪魔する。


 大都会の中の、アパートのような集合住宅のような場所が彼女住んでいる部屋だった。


「お~、おしゃれだね~~」


「狭くて小汚い所だけど、良かったら入って」


「いや、汚くなんかないよ。すごい綺麗だよ」


 入った部屋、それはゴミ一つない綺麗な部屋。そして、家具類一つ一つはかわいくれしゃれているものを使っている。とてもルナらしい部屋だった。


「なんか疲れちゃったね……寝ようか」


「じゃあ、みんなの布団、準備するね──」


 俺たちは長旅の疲れもあり、すぐに寝ることになった。

 ダルクは遊び疲れていてあくびをしている。


 もともと両親が来る時用に布団を用意していたらしく、俺たちはそれを使うこととなった。


 全員で準備を終え布団を出すと、歯を磨いた後、すぐに夢の中に入ってしまった。

 明日はルナたちと一日中街を遊ぶ日。たっぷりと、楽しめるといいな──。

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