第40話 だったら、やるしかない

「私ね。なぜか生まれつき、魔王軍の力があるってことは知っているでしょ?」


「うんルナちゃん。それは聞いたよ」


 メルアがコーヒーを飲み干した後、険しい表情になる。ルナの雰囲気を、察したみたいだ。


「だから、周囲からも気味悪がられちゃって、なかなか友達ができなかったの」


 シュンとしたルナ。よほどつらかったのだろう。


「それでね、その中で初めてできた友達がシェルムさんだったの」


「ああ、あの人か。確かに、親切そうな人だったからな……」


「親切だった。私の力を何とかしようと聖霊使いや、呪術師、いろいろな人の力を頼ったけどダメだった。それで、いつも魔王軍と戦っているあなたたちを頼ったの。これでだめなら、あきらめるしかないかもしれないって言って」


「ルナちゃん。そんなことがあったんだ……」


 ルナの、切なそうな表情。彼女は決して争いを好まず、平和に過ごしたいだけ。それなのに、魔王軍の力を持ってしまったせいで周囲から疎まれ、孤立してしまっている。


 そしてどうすることも出来ず、俺たちの所に来たということだ。


 だったら、やるしかない。


「やっぱり、追放されちゃうのかな私。みんな、私を腫れもののように扱って、誰も打ち解けてくれなかった。わたし、どこにも居場所が無いの……。シェルムさんのところ以外」


 彼女が暗い表情をしながら語っているとき、俺はルナの両手を強く握る。

 ルナはびっくりして顔をほんのりと赤くさせ、言葉を失ってしまう。


「わかった。俺たち、ルナの力になるよ。安心しろ、みんなから疎まれているなら、俺たちがルナの友達になってやる。居場所がないなら、俺たちがお前の居場所になってやる。だから、そんな悲しいこと言わないでくれ!」


 その言葉にルナは黙りこくったままびっくりしてしまう。

 すると、隣にいたメルアがニヤニヤしながら話し始める。


「信一君。ルナちゃんを落とそうとしているんだー。一途だと思っていたけど、とんだすけこましくんなんだねぇ~~」


 す、すけこまし? そういう事じゃなくて……。

 メルアは顔をぷくっと膨らませそっぽを向く。


「ご、ごめん……。今度埋め合わせはするから──」


 するとメルアはため息をついて微笑を浮かべた。


「もう、信一君は優しいんだから。その時は、お願いね」


「あ、あのー」


 するとルナがいいずらそうに手を上げて一言。


「あ、ありがとうね、信一君。よろしくね」


 とりあえず、ルナが仲間になった。大切にしよう。

 そして俺たちは食事を終え、店を出る。


 そのあと歩きながらも明るいメルアがルナに話しかける。


「すっごいよあの店。あんなおいしいデザート私初めてだよー」


「で、でしょー。この店、おいしいデザートがいっぱいで私よく来てるの」


 メルアと楽しそうに話すルナを見て俺はほっと息を下ろす。


 最初出会ったときは、人見知りでどうやって打ち解けようか迷ったけど、本当は上品でかわいいぽわぽわなお嬢様って感じだ。


 これなら、仲良くなれそうだ。安心しきっていた時、俺の背中に電撃が走った。


「な、何だ?」



 と思いフッと後ろを振り向いた。


 そして俺はあり得ないはずの姿を見てしまう。

 その姿に思わず後ろを確かめる。

 小走りであいつがいた角まで歩いて存在を確かめるが、奴はどこにもいない。


「信一君。どうしたの?」


「な、何でもない、ちょっとあっちの店の中が気になっただけだよ」


 メルアの呼びかけに、俺は慌てて言葉を返し、小走りで彼女たちの所に戻る。

 そうだ、アイツは今ガムランとイチャイチャしていたり、お楽しみの時間を満喫していることだろう。


 こんなところに来るはずがない。


 文香がここにいるなんて、ありえない。きっと、他人の空似なのだろう。考えすぎだ。


「あの店? あれはね、エスニック系の雑貨を売っている店なの」


 今度はルナがその店を紹介する。

 彼女との会話は、本当に楽しい。笑顔が、とても似合う。



 ──が、そんな時間はそこまで長くは続かなかった。

 この後、俺やルナに悲劇が訪れる。


 そして俺たちが楽しそうに会話していたその時──。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!



 大きな爆発音が聞こえだす。

 すぐに俺たちはその方向を振り向く。すると──。


 グルルルル──、グォォォォォォォォォォォォォォ!!



 大きな雄叫び声を上げて暴れまわっている生き物がいる。

 魔王軍特有のどす黒い光に包まれたオオカミのような生き物。それが15匹くらいいる。


「たしか、あれは「フェンリル」っていうんだっけ」


「うん。あの牙からの攻撃が強いから気をつけなきゃいけないの」


 なるほどな、会ったことはないけど、そこそこ強そうだ。

 魔王軍が突然襲ってきた。急襲というだけあって周囲に冒険者はいない。ここは俺たちが何とかするしかなさそうだ。


「でも、なんでこんなところに魔王軍がいるんだ?」


 ダルクの言葉、俺も感じる。俺たちの故郷とは違い、魔王軍の土地とは程遠い。


「多分、内通者がいるんだと思う。2人とも、戦える?」


 そうだった。犯人捜しは後でいい。今はこいつらを倒す事に専念しよう。


「ダルク、行くぞ!」


「いつでもいいぜ。ぶっ飛ばしてやる!」


 そして街中での戦闘が始まる。

 相手はそこまで強くないこともあってこっちが優勢に進む。俺もダルクも、次々と「フェンリル」達をなぎ倒していく。

 そしてそれを援護するメルア。


 こいつらは、力こそ強いものの、ただ餌を見つけた魚の様に食いついていくだけ。ちょっと罠をハッタリすればすぐに引っかかる。


 ゾドムとヒュドラに比べればどうってことない。行ける。




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