第10話 魔王軍幹部 ヒュドラ
その姿を見るなり、メルアの表情が引きつり、こわばり始める。
「どういうことだ。強いのか?」
「うん。ヒュドラはデュラハンやケルベロスとは違って幹部のような存在なの。多分この襲撃のリーダはあいつだよ!」
マジかよ。魔王軍幹部の1人か。ということは魔王軍でもそこそこ地位があるということか。
「多分、1人で行っても勝算はないし、バラバラに攻撃してもかわされたりするだけで勝ち目は薄い。連携をとってあいつを倒そう」
「そ、それもそうだね」
「で、どうすればいいんだ。早くしてくれ、あいつをぶっ殺すやり方」
ダルクはイライラしながら俺に聞いてくる。あまり待たせるとさっきみたいに暴走してしまいそうだ。
そして俺は2人の耳元でその作戦を手短に説明。
「うんわかった、私が援護すればいいんだね」
「んで、その瞬間に俺がヒュドラをぶっ殺せばいいんだな」
まあ、そこまで魔王軍をぶっ殺したいなら、花束はダルクに持たせた方がいいだろう。
教会の家の庭では他の冒険者たちが懸命に戦っているが、相手の方が明らかに強いらしくボロボロ。そしてヒュドラは腕には持っている大砲を倒れこんでいる冒険者たちに向け──。
ドォォォォォォォン!!
大きな爆発音を上げ、冒険者たちが数メートルほど吹き飛ぶ。もう戦えないだろうなあれでは。
「ふっ。たわいもない。そんなままごとで、われに勝てるわけがなかろう」
ヒュドラは余裕の表情で、教会の隅に座り込んでいる子供たちに視線を移す。
子供たちは恐怖し、すっかり怯え切っている。
「な、なんで教会を狙うんだよ。俺たちになんか用かよ」
1人の男の子がヒュドラに向かって突っかかる。するとヒュドラは子供たちに接近し、ニヤリと笑みを浮かべながら言葉を返し始める。
「ほほぅ。われの姿を見て口答えができる勇気があるとは大したやつだ。まあ、その褒美として教えてやろう」
「な、なんだよ」
「奴隷として育てたり、われらのために最前線戦う兵士として育てるなど。使い道は豊富にある。じきにこの村は我らが制圧し、領地は我らのもの。村人は奴隷としてわれらの繁栄に貢献、子供たちは死線で戦う兵士として育成。そんなところだな」
その言葉に子供たちは全身を怯えさせ恐怖する。
冗談じゃない。そんな蛮行、許せるはずがない。
「信一君。そうだよ」
メルアの言う通りだ。だが、相手は強敵、ただ感情のままに戦っても勝ち目は薄い。
「さて、コルテスとかいううるさいジジイはすでに拘束。冒険者は雑魚ばかり。あとはこいつらを連れていくだけだな」
そんなこと、絶対にさせるか!
「わかった。作戦開始、ダルク。子供たちのために頼むぞ」
「ああ──、信じてるぞ」
そういってダルクはこの場を去り、作戦通りの配置につく。俺はそれを確認すると、ヒュドラを倒すための作戦の遂行に入る。
「行くよ、メルア」
「うん!」
そして俺はヒュドラに接近する。
「ヒュドラ。ここは俺の住処だ。今すぐ出ていってもらおうか!」
「なんだ、愚か者が。この俺を誰かと知っての口答えか?」
うっ。対峙しただけでわかる。こいつの強さとオーラ。足が軽く震え、逃げ出したいという恐怖のような感情が体の底から湧いてくる。
「ヒュドラでしょ。聞いたよ」
メルアが1歩踏み出し、ヒュドラをにらみつける。よく見ると足が震えている、俺と同じでヒュドラに対する怖さがあるのだろう。
「ふっ。負けるとわかっていて戦うのは、勇気ではなく蛮勇というものだ。思い知らせてやろう」
そしてヒュドラは大砲を俺たちに向けてくる。
俺は右とメルアは左と正反対の方向に移動。
「なるほど、まずは攪乱しようということか」
大砲を持っているということは、遠距離攻撃を仕掛けてくるはず。
まずは俺とメルアが1直線上るのはまずい。ヒュドラに狙いを定められ、攻撃されるからだ。
「ちょっとは考えるようだな。だが、そんなお遊戯で我に勝つと思うなよ」
ヒュドラはメルアに視線を向ける。弓矢なので遠距離なら彼女を警戒しようと考えたのだろう。
そしてメルアが弓矢を7~8発放つ。しかしヒュドラは剣を一振りしてその矢を叩き落とす。
「なんだそれは、その程度のお遊戯。我には通用にない」
そう叫ぶとこっちに向かってきた。
そして急接近すると、その剣を俺に向かってぶん回してくる。
俺はその攻撃を受けるのだが。
──な、なんて強さだ?
驚いたのはその威力。今までにない強さ、ダンプカーの突進を腕1本で受けているような感じだ。
あまりの強さに腕の感覚がなくなる。
次いで、ヒュドラはメルアにも攻撃。メルアは攻撃を受けようとするが、その強い攻撃を受けきることができず──。
「フッ、軟弱な小娘だ」
メルアの肉体が数メートル吹き飛び、教会の壁に強く激突。ぐったりと倒れこむ。
「あとはお前だけだ。さあ、降参して子供たちを渡してもらおうか」
「ふざけるな。渡すか!」
子供たちは、恐怖で体を染まり切っていて、身を寄せ合っている。
「フッ。つまらない意地を張っているのか、身の程を知らないのか。では、勝負を決めさせてもらうぞ」
そしてヒュドラは再び俺に向かって接近してくる。
一発食らったら致命傷なるような威力の攻撃を、俺は受け止め、かわしていく。
さすがに強い、幹部だけある。俺一人なら確実に勝てない。
「どうした? あれほど威勢のいいことを言っている割には、逃げてばかりではないか」
「そうかもしれないな」
お前にはそう見えるよな。けどそろそろだ。
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