第1章ー通り雨 part1
学校に着いた僕は二年F組の教室に入った。その窓側の一番後ろが僕の席だ。県立高校ならではの少し古い木の匂いが心地良い。
四月の進級とともに、クラス替えをして新しくなったこの学級は一年生の時の友達だったり、コミュニケーション能力の高い人たちがもうグループを作り始めている。
僕のグループはというと、クラスでのカーストトップ、リア充たちで構成された超トップグループ——なんてことはなく、僕はどこにも属さない一匹狼。つまりはボッチである。
一年生の時にはかろうじて智哉がいたが、クラス替えで離れてしまい、こうして元々人と、喋るのが得意ではない僕はボッチのポジションを確立したのである。
まあ、もともと智哉はクラスで人気だったし、あまり話せなかったから、そこまで状況が変わっているってわけではない。
ということで、僕は特に誰と喋るでもなく朝のホームルームが始まるのを待つ。
※
8時30分になった。そこでチャイムが鳴る。
担任の加藤先生が入ってきた。年齢は20代中盤くらいだろう。ボブカットのふんわりとした黒髪に整った容姿は生徒の間で密かに人気であり、軽いファンクラブなんかも出来ていたはずだ。
「はーい、席についてねー」
加藤先生の可愛らしい明るい声に生徒たちが、話をやめて自分の席に着く。
「ではホームルームを始めます」
日直の挨拶で生徒たちがまばらに「おはようございます」と小さな声で挨拶をした。
もちろん僕は口パクだ。
「えー、今日はビックニュースがあります!なんと、このクラスに転校生が来ます」
え、嘘だろ。高校に転校生が来るのはドラマやアニメの世界だけじゃないのか?
そんな僕の考えはみんなも持っているようで所々で、「え、まじかよ」「青春イベントきたー!」とか、歓声が上がっている。
「その子のことを本当はここで紹介したかったのですが、遅刻をしたみたいで残念ながら、紹介できないことになりました」
そんな嘘みたいな加藤先生の言葉にみんなは混乱していた。
僕も情報量が多くてついていけない。
そこで、クラスの男子が先生に質問した。
「せんせーい、その子の性別はどっちですか?」
クラスのみんなも気になっていたようで賛同の声が上がっている。
「女の子ですよー」と返答が返ってきて、クラスの男子たちは声を上げて喜ぶ。女子も友達ができるかもということからか控えめに喜んでいる様子だ。
しかし、僕は知っている。アニメやドラマの話ならまだしも、現実の世界では転校生は美少女や、美男子だということは少ない。というか、ほぼない。ソースは僕。
第一、僕はまだ河村先輩のことを女々しく引きづっているというわけでその転校生には特に興味はなかった。
ただ、期待しまっている自分がいることも事実ではある。
そんな、重大な発表があり、やや浮き足立った様子でホームールームを終え、特に特別なこともない、いつもの学校生活を過ごした。
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