君は通り雨

ゆでぃ

プロローグ

 5月、僕こと竹井春樹〈たけいはるき〉はいつもの通学路を歩いていた。頭上の曇り空は僕の心情みたいにどんよりとしていて、妙に腹立だしい。


 僕がずっと片思いをしていた先輩、河村美波に昨日振られたんだ。告白なんて初めてで僕なりに勇気を出したんだけど、結果はお察しの通り惨敗。


 放課後に校舎裏で告白なんて、ドラマみたいなシチュエーションではなく、ただの帰り道に「好きです」ってストレートに言ったら「ごめんね。そういう対象じゃないの」とかシンプルに振られた。


 僕はそんなに友達が多いわけでもなく、スポーツ万能とか頭脳明晰とかそんな誰でも羨む特徴を持っているわけでもない、黒髪黒目、可もなく不可もなくな顔立ちの至って普通の無気力な高校生だ。

 

 そんなわけで、なぜか仲良くしてくれた先輩に勝手にその気になってしまったというわけだ。


 リア充の人間からしたら「そんなの勘違いしたお前が悪い」とか言われそうだけど凡人の僕からしたらその気になって当然だと思う。


 そんな出来事を思い出しながら、はぁ、とため息をついていたら後ろから勢いよく肩を掴まれた


「よぉ、春樹。どうしたんだ辛気臭い顔して!」


 こいつは志賀智哉〈しがともや〉。いかにも友達の多そうなイケメンだ。若干茶色っぽい髪がこんな天気だというのに爽やかに揺れている。なぜか僕のことを気に入っていて少ない友達の一人だ。ちなみにサッカー部。


「昨日話しただろ。わかってて言ってるよな?」

「そうだっけか?まあ、終わった恋は忘れて新しい恋見つけろよ!」


 智哉はこれまた爽やかに笑いながら僕に言ってきた。僕を励ましてくれているんだろう。こいつはこんな感じのスカしたやつだけど、友達思いな面もあって僕はそんな彼が好きだった。


「そんな簡単にいくもんでもないんだよ」

「まあ、待っとけって。今に可愛い女の子との出会いが待ってるだろうよ」

 

 そんなことあるわけないと、聞き流しておいた。この後の運命の出会いなんて知らずに。

 

 

 

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