第104話 禁断の果実

 きっとマリクはガクシャケンの丘で、ジェス姫をずっと待ってたんだろう。

 だけど、ゲームによるラブレターは届かなかった。

 

「で、ガクシャケンの丘に行って見たの」


 ジェニ姫はゲームを15ループ目でクリアし、エンディングに到達した。

 マリクのメッセージを頼りに、城から42km離れたガクシャケンの丘へ足を踏み入れた。


「思った通り、チートの実が落ちてたの」


 だが、そのチートの実は時間が経ち、腐っていたそうだ。


「ジェニ姫は、まさか、それを......」

「そう食べたの」

「お腹大丈夫ですか?」

「うん。何ともないよ」


 ジェニ姫はローブの上からお腹をさすって見せた。

 しかし、チートの実とは一体何なのか?


「チートの実は、お伽話や神話で語られる架空の果実。自然災害や、怪物、病気に怯える人間の憧れみたいな物よ。こんな都合のいい実が、実際にこの世にあるなんて誰も信じてないわよ」

「へぇ、でも、マリクはそれを手に入れたわけですよね」

「ジェス姉はチートの実を食べて、無限の能力を手に入れてこの世を平和にしたいと思っていたの。マリクはそれにつけ込んで、偽物を用意してジェス姉を呼び出したと思ったけど。実際は本物だったみたいね。私が食べてみたらこの結果。腐ってて不味かったけど。マリクはこれをどこで見つけたか知らないけど......。あいつは何でも出来るからなぁ。こんな神話じみた物も見つけることが出来たのかもね」


 そのチートの実のお陰で、ジェニ姫は今やこの世界で敵無し。

 最強の存在になったわけだ。


「これからどうするんですか?」


 ジェニ姫は小さな顎に手を当て、考え込む。

 フッと、口角を上げ、こう答えた。


「そうね。世界征服、といったところかしら」


 僕はそれが冗談だと分かっていた。

 だから、笑顔でこう返す。


「僕と一緒に......住」


 その先の言葉を待たずして、ジェニ姫は意識を失った。



雑用係と姫のリベンジ編 おわり

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