第100話 『クソゲーム』の攻略法

まず、どこから話そうかしら。

そうね、私のこのスキルについてから話した方がいいかな。

このスキルはマリクが自殺すると発動されるの。

変なスキルでしょ?

私も変だと思ってる。

まぁ、目覚めたものはしょうがない。

これで得している部分もあるから私は受け入れてるの。

逆に言うと、マリクが誰かに殺されたらこのスキルは消えてなくなるわ。

恐らくね。

何で、マリクが自殺すると発動されるか、分かったのかって?

だって見たんだもん。

あいつが自殺するところ。

このセーブポイントからループする様になって20回目だったかな。

結構いいところまで行ってた時よ。

......って、言っても君は覚えてないか。

マリクとの最後の戦いで、一歩及ばず瀕死のダメージを受けた私は立つことさえも出来なくなった。

あっ、その時、ケンタ君はもう死んでたから。

そんな残念そうな顔しないの。

大丈夫。

このループで終わるから。

そうなる様に、私はループするたびに色んな事を試して、攻略法をあみだしたんだから。

マリクが支配するこの『クソゲーム』の攻略法を。

話を元に戻すね。

私が死んだと勘違いしたマリクは、こう呟いた。


「また今回もダメだったか」


ま、ケンタ君はこのセリフの意味が分からないと思うけど。

その後、マリクは電撃の魔法で自殺した。

と、同時に私の意識も飛んだ。

気が付いたら、またいつもの朝だった。

それまでは、私が死んだらループするかと思ってた。

それが違ってたのね。

う~ん、ちょっと悔しかったわ。

で、

マリクはきっと誰かに倒されたがってるのよ。

理由は分からないけど。

この世で圧倒的に強い自分。

その自分を恐れさせ、ひれ伏させるような、そんな相手を求めている。

それがケンタ君、あなただったの。

ケンタ君、目が点になってるよ。

まぁ、驚くのも無理ないよね。

ケンタ君は特に攻撃力も魔力も無いし、あるのは商才スキルだけ。

マリクは、そんなケンタ君に倒されたがってたんだよ。

ケンタ君が復讐しようと思った動機を思い出して。

マリナさんをグランに奪われたからでしょ。

全ての黒幕はマリク。

セーブポイントの設定の仕方で分かったわ。

私が初めてループを自覚したのは、グランの結婚式の日。

このセーブポイントから一週間前のポイントよ。

ケンタ君がグランに寄り添うマリナさんを見て、取り乱したあの日。

あの時、ケンタ君の復讐心はMAXに達した。

マリクは、その状態のケンタ君なら、自分を倒してくれると期待した。

だから、結婚式の朝にセーブポイントを設定した。

MAXケンタ君が何度も、挑戦してくれる様にね。


 ジェニ姫はこの話をもう何度も僕にしたらしい。

 だけど、僕にとっては初めて聞く話だ。

 それは驚きの内容だったし、グランに対して怒りを覚えた。

 そして、ジェニ姫は目に涙を浮かべ、僕に頭を下げた。


ごめんなさい。

私、ケンタ君に嘘を付いていました。

マリナさんは気持ちが変わったわけじゃない。

マリクの魔法でグランを愛しているだけなの。

マリクはあなたに倒されるためなら、どんな酷い仕打ちもあなたにするのよ。

そんな目で見ないで。

私、ケンタ君と一緒に居たかっただけなの。

だけど、本当のことを言わないと、ダメだって思った。

このまま私がケンタ君と一緒にいると、世界が崩壊する。

ケンタ君。

君は救世主なんだよ。

皆のもので、私だけのものじゃない。


 食卓に、ポタリ、ポタリと涙が落ちる。

 サファイヤブルーの瞳が揺れている。

 僕はジェニ姫のことを恨んでなんかいない。

 ここまで来れたのは彼女のお陰だからだ。


「ひとつ訊いていいですか?」


何?

やっぱり、不思議に思うよね。

何で、セーブポイントが変わったのかって。

きっとマリクは相手を変えたんだと思う。

自分を倒してくれる相手を......

私に。


つづく

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