第60話 死亡フラグは立たせない
10分前に遡る。
反乱軍によって城が崩壊したのを確認した僕は、踵を返しビワ湖へ向かった。
ソウニンがそこでソロキャンプしているのは、兵士から聞き出した。
場所は良く知らないが、その兵士がボロボロの身体を引きずりながらソウニンの元に向かっているので、その後ろを付いて行けばいい。
「いたいた」
湖のほとり、お目当ての人物が焚火の前で肉を焼いている。
「じゃ、皆、ソウニンが兵士に気を取られてる間に、後ろに回り込むぞ」
僕の言葉にジェニ姫とマスタツが頷く。
マスタツは反乱の前日に、ギルドで出会った武闘家だ。
もちろんステータスは、武闘に関することに関してカンストしていた。
美人武闘家ソウニンはあっけなく、マスタツに負けた。
「くっ......殺せ!」
ソウニンはドカッと丸い石の上に座った。
「いや、殺さない。お前には聞かなきゃならないことがある」
「何だ?」
「グランの弱点だ」
「そんなこと......言えるわけが......」
「今はまだ言わなくていい。その代わり僕らの仲間になってくれ」
「私がお前の様な雑用係の仲間になど、なるものか!」
とりあえずでもいいから、仲間になってもらわないと困るんだよなあ。
タケル、コブチャ、チナツはグランの弱点を言おうとして殺された。
ジェニ姫はこれらの事象をフラグと呼んでいた。
フラグとは旗と言う意味だ。
旗が立つと、敵や他のプレイヤーがそれを検知して次の行動に移る。
要するに、グランの弱点を言おうとする者は、死亡フラグが立つんだ。
ジェニ姫が遊んでるゲームでも、プレイヤーがある行動をすると、敵や他のプレイヤーの行動も定まる。
僕が反乱の前日にギルドに行くと、カンストメンバーに出会えるというフラグが立つ。
ソウニンをとりあえず仲間にしておけば、彼女は殺されることはない。
「ソウニン、君の師匠であるオオヤマ先生から手紙を貰ったんだ」
『ソウニンへ
グランの暴虐を許すな。
わしが教えた正義の拳を、今こそ活かす時が来た。
ケンタ殿と力を合わせよ。
』
「オオヤマ先生......」
子供の頃、奴隷として働かされていたソウニンはオオヤマに拾われた。
オオヤマはソウニンの武闘家としての素質を見抜いた。
子供がいなかったオオヤマは、養子であるソウニンに一子相伝の『オキナワ破顔流空手』を受け継がせた。
ソウニンはその極意をもってグランのパーティに加わり、魔王討伐に貢献した。
「分かった」
ソウニンが仲間に加わった。
いつもの様に、空から光の波動が振ってくることも無かった。
死亡フラグが立たなかったんだ。
僕はジェニ姫と目が合った。
お互い、頷く。
武闘家の国編 おわり
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