第56話 もしかしたら、伝説になるかもしれない

 あ~あ、やっちゃった。

 僕はがっかりした。

 実を言うと、サオリには色々ゴタゴタが終わった後、マリナを召喚してもらおうと思ってたんだ。

 クシカツは仕事を終えたデーモンを、一旦、魔界に帰した。

 あ、そうだ。


「なぁ、クシカツ」

「なんだ?」

「僕のお願い聞いてくれるか?」


 マリナを召喚するように頼んだ。


「追加料金取るぞ」

「もう払えない額を既に請求されているけど……」


 彼への報酬である999999999999999エンは、僕が大富豪になったら払うことになっている。

 その上に、マリナを召喚したら追加料金を取られるとは。


「将来払いますんで、お願いします!」

「分かった」


 僕はマリナの特徴を教えた。

 クシカツは魔法陣の前に立った。


降臨サモン


 まばゆい光と共に、マリナが現れるはずだ。

 ……って、何も無い。


「おかしいな。俺の召喚魔法でも呼び出せないものがあるとは……。そのマリナという女のいる場所に、俺より強力な召喚魔法使い、ないしは、賢者の存在が考えられる」


 クシカツは顎に手を当て、一人考察を巡らす。

 そして、「じゃ」と手を振り後は何も言わずに去って行った。


「な、なに……今の人?」


 一部始終を見て呆気にとられたジェニ姫が僕に問い掛ける。


「あ、ああ……彼はね」


 ジェニ姫にクシカツのことを話す。


「なるほど……」


 ジェニ姫は頷くと、語り出した。


~~~~~~~~~

黒い流れ星が落ちる時、魔王がこの大陸に降り立つだろう。

同時に救世主も誕生する。

救世主は6人の使徒を引き連れ、魔王を倒すだろう。

~~~~~~~~~


 僕が子供の頃、マリナに教えてもらった伝説だ。


「もしかして? 君が救世主?」

「え?」

「だとするなら、まるで用意されたかのように各国にいるカンストメンバーは、6人の使徒……」


 ジェニ姫、僕を買いかぶりすぎだよ。

 ジェニ姫が続ける。


「3年前、黒い流れ星が落ちた。それを見たお父様が予言したの『魔王が復活する』って。予言通り魔王ハーデンがこの大陸に降り立った。そして、グランは6人のメンバーを引き連れ、魔王ハーデンを倒した。伝説の通りだと私は思ったけど……。実は本当の魔王はハーデンんじゃないってことね」


「本当の魔王はグラン」


 チナツが補足する。

 周囲に沈黙が流れる。


「ケンタ。パーティにいた時は、色々嫌がらせしてゴメンさなさい」

「いや、いいんだよ」

「ケンタをイジメないと、私がグランからイジメられるから……」


 チナツが僕に何度も謝る。


「私もグランを倒す旅に連れて行って」


 チナツが仲間に加わった!

 ジェニ姫もいる。

 一緒に旅する仲間が増えたんだ。


「ル、ルビー様……」


 背後からうめき声が聞こえる。


「トールス!」


 チナツが駆け寄る。


「こっ、この国は私にお任せ下さい」

「いいの? そんな体で大丈夫なの?」

「は、はい……」


 トールス、タフだな。

 愛の力だね。

 だれか、ここに治癒魔法使える人、いませんかー?


「私、しばらくトールスの様子見てから旅に合流するわ」

「分かりました。僕らは武闘家ソウニンがいる北の国を目指します」


 僕はそう言って、踵を返し掛けた時、


「あっ、待って。グランの弱点を教えておくわ」


 チナツが駆け寄る。

 あっ、やばい。

 このフラグは……。


つづく

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