第51話 彼氏寝取られ女 VS その彼氏寝取った女

 僕らはルビーの城に向かった。


「こうなったら出たとこ勝負よ」

「そうですね! 私、本番には強いんです!」


 ジェニ姫とサオリのやり取りを、僕は一歩下がったところで見ていた。

 胸の数字が『1』から『24h』に変化していた。

 一時間ごとに23h、22hと減って行くので、恐らく時間だろう。

 あと、22時間の命だ。

 このまま何もしなければ、僕は死んでしまう。

 サオリの召喚魔法は完ぺきではないが、やるしかない。



 禍々しく赤く染まった城。

 門番の兵士に要件を伝えると、中に通してくれた。


「そいつが召喚魔法使いか。中々やり手の様だな」


 玉座に座るルビーは、白装束をまといフードで顔を隠したサオリを指差した。

 尖った爪は真っ赤に染まっている。


「お望みの人を召喚して見せましょう」


 僕はそう宣言する。


「ふむ。この男だ」


 ルビーの執事(確かトールスって名前だったな)が、僕らの方に歩み寄る。

 彼は一枚の紙を見せた。

 そこには、ルビーが召喚して欲しい男の姿が描かれていた。

 黒髪短髪のツンツン尖った髪型。

 逆三角形の輪郭をした顔。

 ヤンチャそうな細い眉。

 三白眼のつり目で、悪系のイケメン。

 全身黒ずくめの服装で、首の辺りを守るためか襟の部分が立っている。

 胸の中央から腰の辺りまで、縦に並ぶ5つの金ボタンが印象的だ。


「慶太君!」


 突然、叫びだすサオリを、皆が一斉に見る。


「なぜ、この男の名前を知っておる……」


 ルビーが眉根を寄せる。


「だって、この人、私の彼氏だもんっ!」


 僕は周囲の空気が硬くなるのを感じた。

 ルビーがスックと玉座から立ち上がり、ツカツカとサオリの元へ真っすぐ歩いて行く。


「きゃっ!」


 真っ赤な5つの爪でフードを掴み、引き上げる。

 栗色の髪が舞い、サオリの白いおもてが露わになる。


「お前はっ……!」


 ルビーはそう叫んだまま、次の言葉が出ないみたいだ。

 部屋の中が徐々に熱くなっていく。

 元々赤いルビーの髪がさらに赤く、血で染まった様になる。

 僕は、この二人に何か言い知れない因縁めいたものを感じた。

 その予感が確かだったことを、数秒後に知る訳だけど……。

 サオリはじっと、ルビーの顔を見た。

 そして、何か思い出したかのように、叫んだ。


「千夏!」


 チナツ?

 誰だ?


「あなた、死んだはずじゃあ……」


 サオリがルビーを指差したまま、後ずさる。


つづく

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