第50話 AKIMOTO商人と召喚獣

 校庭の魔法陣の前に立つ、サオリ。

 いつの間にか観客が集まり、彼女を中心に円が出来ていた。


降臨サモン!」


 サオリが唱和すると、魔法陣から光が立ち昇る。

 光の中から現れたのは、身長10メートルはあろうかと思われる土の巨人、ゴーレム。


「おお!」

「凄い!」


 ゴーレムは観客達を睥睨した。


「グオオオ!」


 ゴーレムが暴れだそうとする。


「わー!」

「きゃー!」


 観客達が逃げ惑う。


「おやめなさい!」


 暴れだそうとするゴーレムを、サオリが一喝する。

 途端にゴーレムは大人しくなった。

 サオリの元にスゴスゴと近づき、ひざまずいた。


「う~ん。素晴らしいわ」


 その様子にジェニ姫が感心する。


「召喚自体は、素質のある魔法使いなら修業を積めば出来るようになる。だけど、手なずけるのは才能が無いと中々出来ないのよね」

「そうなんですか」


 僕もサオリの成長ぶりに驚いた。

 彼女は入校してから一週間で、強力なモンスターを召喚出来るレベルに達していた。


「お代、いただきます!」


 僕は観客達に声を掛けて回った。

 一日一回、サオリの上達ぶりを確認するために召喚魔法を唱えさせている。

 モンスターが召喚される様は、イリュージョンショーの様で見栄えがいい。

 それにサオリはめちゃ可愛いので、まるでアイドルのライブみたいだ。

 いつしか僕は、街の人に有料でそれを観てもらうことにした。

 握手会付きで。

 評判は上々で、口コミで毎回1000人は来るようになった。

 儲けた金は、学校の運営に回している。

 そして、サオリの魔法を見て、魔法使いに憧れる子供が多数入校して来る。

 多額の学費も入ってくるようになった。

 全てが順風満帆だった。

 だが、


「でも、本当に会いたい人は中々召喚出来ない……」


 サオリ本人は悩んでいた。

 いくら魔法が上達しても、愛する人と出会えないということに。


「大丈夫よ。これだけ強力なモンスターを召喚出来るんだもの。近いうちに恋人を呼び出せるわ」

「はぁ……」


 ジェニ姫に慰められても、サオリの顔は曇っていた。


「グオオッゴゴゴ!」

「クゥンクゥン!」


 サオリが呼び出したモンスター達が、彼女を慰める。

 子ケルベロスにゴーレム、キメラにミノタウロス。

 トロルにドラゴン……。


「正直、これだけ揃ったらこの世界の力関係が崩れそうだ……」


 僕はそうそうたる面子を見て、そう呟いた。


「それにしても、思った通りのものを召喚するって難しいんですね」

「うん。召喚魔法を極めるって言うのは、思ったものを百発百中で召喚出来るっていうことなの。サオリはまだ極めるところまで行ってないわ」


  サオリ(16歳)


  Lv.9500

  スキル :召喚魔法(上級)

  攻撃力 : 10

  防御力 : 15

  HP : 531

  MP : 9300

  素早さ :3001

  知力 : 2858

  運 : 1591


 あと少しか。

 僕は彼女のステータスを見てそう思った。


 そして、月日は流れた。

 僕の右胸に刻まれた命のタイマー。

 それが、遂に『1』になった。


つづく

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