第49話 愛こそすべて!

 子ケルベロスを抱っこしながらサオリがこう言った。


「見て、見て。私が召喚したんだよ。これ」


 三つある頭の一つがサオリの腕を甘噛み している。

 残りの二つはジャレてるのかケンカしてるのか、噛みつき合っている。


「凄いですね」

「でしょ? 異世界転生したからにはきっと何か特殊能力が身についてるとか、ステータスがカンストしてるかと思ってたんだ。だけど、まさか召喚スキルとはね! 何? 私、ヒロイン決定? このまま仲間達、見つけてパーティ組んで魔王討伐とか!?」


 僕は彼女の言っていることの半分も理解出来なかった。

 だけど、彼女が召喚スキルを喜んでいることだけは良く分かった。


「彼女、やる気満々よ! ケイタを召喚するんだってね」

「なるほど」


 サオリには恋人がいた。

 この世界に転生する前の世界でのことだ。

 召喚スキルに目覚めたサオリが、ケイタを召喚したいのは、必然のことだろうな。


降臨サモン! 降臨サモン! あれ?」


 出てくるものは樽とか、酷い時はカビパンだったりした。


「え~? なんで? 慶太君をイメージしてるんだけどなあ」

「あのね、召喚魔法は大量のMPを使うのよ。言い方を変えると、あなたはスキルはあるけど、それを使うためのエネルギーが足りないの。だから望むものを召喚出来ないのよ。私達と修行して、そのエネルギーを増やしましょう」


 ジェニ姫が落胆するサオリを慰めた。


「分かりました! 先生! 修行ってなんだか、ますます異世界転生っぽくなって来ました!」


 サオリも魔法学校に入校した。



 次の日。

 ギルドに向かう。

 ギルドマスターが持っていた自家製の能力測定器(サチエの発明した機器だ。彼女の作った設計書が全世界に広まっているらしい。サチエ、凄い!)で、サオリの召喚魔法使いとしての能力を測った。


  サオリ(16歳)


  Lv.10

  スキル :召喚魔法(初級)

  攻撃力 : 1

  防御力 : 5

  HP : 30

  MP : 530

  素早さ :104

  知力 : 88

  運 : 263


「わー、これが私のステータス! まじ、ゲームみたい!」


 サオリが空中に浮かぶ文字を見て、はしゃぐ。



 その日から、特訓の日々が始まった。

 ジェニ姫は手を抜かなかった。


『魔法属性学』では、魔法の成り立ちと属性間の融合を徹底的に叩きこんだ。

『ディオ王国歴史学』では、エスターク一族の栄華と繁栄を語った。

『魔法機械学』では、魔法を帯びた機器の作り方と使い方を教え込んだ。

『魔法薬学』では、魔法と薬草の関係を教え、回復アイテムの作ることを実践させた。

『魔法武器学』では、魔法を帯びた武器の作り方と、魔法剣士とのコミュニケーションの取り方を教えた。


「もう、むりー!」

「まだまだ!」


 サオリは何度も弱音を吐いたが、ジェニ姫は攻めの手を緩めなかった。

 泣きながらもサオリはそれに応える。

 攻撃魔法、治癒魔法を基礎に、彼女の秘めたる召喚魔法スキルが開花して行く。


 全てはケイタと再会するために、か。


つづく

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