第43話 残り少ない命

 僕はルビーの城から釈放された。

 フラフラと街へ行く。

 召喚魔法使いを早く見つけなければ……見つからなければ、僕の命が無い。


トクン、トクン……


 心臓が高鳴る。

 僕は自分の左胸に手を当てた。

 熱い。

 シャツをはだけさせ、目で確認する。

 左胸には赤い文字で30と刻まれていた。


「一ヶ月以内に、最上級の召喚魔法使いを連れて来い」


 ルビーにそう命じられた僕は、約束を守る様にと魔法を掛けられた。


時限発火タイムドファイヤ


 その魔法のせいで、僕は一ヶ月(30日)しか生きられなくなった。

 この30という文字は日にちを表している。

 これが、日を追うごとに減って行く。

 そして、最後の日に僕は発火する。

 紅蓮の炎に身を包まれ、死んでしまう。


「まずは、召喚魔法使いを探すか」


 落ち込んでいても仕方がない。

 兎に角、動くのみだ。

 約束を果たせば、ルビーは魔法を解いてくれる。

 そして、僕は魔法が解かれた瞬間、ルビーを殺す。

 そのために、召喚魔法使いを見つけるのと、復讐のために仲間を集めるのを同時進行で行わなきゃ。


「ギルドに行って見るか」


 学校を作るのは最後の手段だ。

 まずは、手っ取り早く召喚魔法使いを見つけよう。

 酒場兼ギルドは、冒険者で賑わっていた。


「召喚魔法使いは登録していますか?」


 僕はギルドマスターに問い掛けた。


「あなたどこの人? 冒険者を募るなら他のギルドの紹介状を見せて」


 若い女のギルドマスターはそう言った。


「サチエさんの紹介状があります」

「サチエね。OK]


 サチエさんはギルド界では有名人らしく、色んなギルドで名前が通っている。


「残念ながら、召喚魔法使いはこのギルドにいないわ」


 キクヨというギルドマスターは名簿を見ながらそう言った。


「他のギルドに行けばいますか?」

「う~ん。召喚魔法使いは希少価値が高いからね。例えば、魔法使い一万人に一人いるかどうかの存在よ」

「そうなんですね」

「時空と空間を操る魔法だもの。選ばれた者しかなれないから」


 確かに。

 皆が好き勝手、異世界から色んなものを召喚出来てしまったら世界は破綻する。

 まさに神に選ばれた者だけがなれるのだ。


「チピピピ」


 僕の肩に鳥が乗っかった。


「ササミ!」


 先代の王、ディオのペットだ。

 久々の再会。


「ディオ王様はスライム島で元気にしてるかい?」

「ピチュ」

「何て言ってるか分からないや」


 ササミはディオ王とだけ話すことが出来る。

 ササミは片足を上げて見せた。


「お」


 手紙が結ばれている。

 僕はそれをほどき、広げた。



「ケンタへ


 元気か?

 まあ、お前の様子はササミがいつも見ている。

 と言っても、ササミにも入れる場所と入れない場所があるから、断片的に、だが。


 わしは元気にしておる。

 ルキも元気にしておる。

 東の国の統治者がカズシになってから、スライム島も少し雰囲気が変わった。

 カズシはノルマを緩くしてくれたし、食事も多少良くしてくれた。

 週休二日にしてくれたし。

 労働組合の結成も認めてくれた。

 ケンタ、お前のお陰じゃ。


 ところで、

 お前、西の国にいるそうじゃな。

 実はそこにわしの娘ジェニがいる。

 なんでいるかは直接、ジェニに訊いてくれ。

 あいつは、ギルドにいる。

 お前の力になってくれるはずじゃ。」


つづく

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