第35話 僕は復讐のために罪を背負って生きる
『病気に悩んでる人、是非、僕のところに来てください。治して見せます。 ルキ』
僕はそんな張り紙を街中に貼って回った。
「あの~」
「はい」
早速、僕の作った『診療所』に人が来た。
診療所と言っても、粗末な掘立小屋だんだけどね。
「うちの子を看てもらってよろしいでしょうか?」
「はい」
僕は母親に抱かれた子供を受け取ると、布団の上に寝かせた。
子供は5歳くらいの女の子だ。
熱があるし、体がきつそうだ。
明らかに、今流行している病気に罹っている。
「これを飲んで」
僕は『病気の特効薬』である石をすりつぶした粉を、その子に飲まそうとした。
「そんなもので治るんですか?」
母親が心配そうに声を上げる。
「疑うんですか? あなたは他に手を尽くしたけどどうしようもなくなったから、ここに来たのでしょう? コブチャじゃ治せないから有名でもない僕のところに来たのでしょう?」
強い調子でそう言うと、母親は泣きながら頷いた。
「僕を信じてください」
女の子はむせながら粉をのんだ。
「ママ、お腹空いた!」
数分後、女の子は元気になった。
「おお! 奇跡だわ!」
「いえ、奇跡ではありません! 治癒魔法という医学で治して見せたのです」
その母親の口コミで、僕の診療所には連日沢山の人が来た。
人々は僕の医療で治癒していった。
医療費として、お金もたくさん入って来た。
皆、感謝の言葉を述べ、コブチャ教に疑いを持ち始めた。
ただ、脱会となるとリンチを受けるため、皆、抜けれないでいた。
何人か組んで暴動を起こしたが、力及ばず鎮圧されたそうだ。
「コブチャの周りには屈強な兵や親衛隊がいますからね」
僕の診療所は、悩める人達が集まる場所になっていた。
僕を中心としたコミュニティが出来て行った。
「僕が知っているコブチャのことを話しましょう」
僕は彼の正体を話した。
パーティにいたころの悪行を。
旅の途中で、名も知らぬ村を襲い、略奪を繰り返したこと。
噂が流れることを恐れ、村ごと火で消滅させた。
自らを英雄だと奢ったパーティのメンバー達を、コブチャは治癒魔法で援護していた。
「暴走止められなかった僕も悪いんです」
「いや、ケンタさんは、悪くない。あなたはパーティの奴らに利用されただけだ。それに、あなたは私達を助けてくれた! あなたこそ、私たちの教祖様だ」
皆が僕を見て手を合わせる。
僕は申し訳なく思った。
だって、この病気を広めたのは、僕を中心とした仲間達の仕業なのだから。
「皆さん、僕はコブチャに復讐しようと思ってます! そのためにこの国に来ました!」
皆、力を貸すと言ってくれた。
僕は本当のことを言おうか迷ったが、マツヲとシヲリとタブの視線を感じて、やめて置いた。
つづく
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