第21話 ある物は、使っちゃおう!
「割引してもいいですよ」
僕は今思い付いたかのように言った。
「なんだって?」
工場長はとても嬉しそうな顔をした。
僕は工場長に提案した。
「その代わり工場側から、グラン王国のタケル領の港まで来てもらえませんか? そこでこの『スライムの欠片』を買い取って下さい。そうすれば一つあたり15万エンを10万エンにして差し上げます」
工場長は腕を組んで唸った。
そして、こう言った。
「こちらから、そちらに買いに行けば安くする......という訳か。抜け目がないなあ」
工場長は続けてこう言った。
「ちょっと、うちの社長と話してくる」
数分後、OKの返事が出た。
商談成立。
数時間後、僕は船でグラン王国に戻った。
港で船長に今日の商売について報告し、日が暮れる前にカズシのところに向かった。
カズシは今日の分のスライム狩りを終え、岩の上に座って一息ついていた。
「お前、面白いこと考えるなあ」
カズシは僕の話に感心していた。
「だって、船で『スライムの欠片』を運べないなら、向こうから取りに来てもらうしかないじゃないか」
「確かにそうだが」
「それに、取りに来てもらえば、船で運ぶ代金も掛からないしね」
「まあ、そうだな」
船で運ぶお金が掛からないから、その分を割引することが出来る。
「それに僕は元々10万エンで売ろうと思ってたから、損は無いよ」
カズシは「すごいな」と言って、笑った。
「しかし、上手く行くもんだな。向こうが取りに行くのを嫌がったら話が成立しないだろ?」
「僕は最初からうまくいくと思ってたよ」
僕はこう説明した。
「タケルはメルル王国から野菜を輸入してるんだよ。メルル王国から船が毎日、港に来るんだ」
「なるほど。航路が出来てた訳だ。その船で買ってもらった『スライムの欠片』を運んでもらえるって訳か」
カズシは「大した奴だ」と言って、笑った。
ある物は使う。
それが商売の基本だった。
それに......
僕の『スライムの欠片』はタケルのよりも品質が良いうえに、同じ値段だ。
売れない訳がない。
メルル王国と僕との間で商売が始まった。
工場は僕の『スライムの欠片』をメインに取り扱ってくれた。
そのお陰で、タケルの『スライムの欠片』は取り扱われなくなった。
「タケル様が売れなくなって嘆いているぞ」
船長が一仕事終えた僕に声を掛けて来た。
「船長は、大丈夫なんですか?」
「俺は無事に物を運べばいいだけだから。別にタケル様が儲からなくても、ちゃんと給料はもらえる」
なら、安心だ。
「それに、お前が儲けてくれる方が、投資した俺としては嬉しいからな」
僕、期待されてるんだなあ。
つづく
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