第20話 密輸したものを売る
僕は船長に相談しに行ったんだ。
「確かにスライム島のものより色つやがいいから、高値で売れそうだな」
船長は、僕の『スライムの欠片』を手に取ってそう言った。
「これを売りたいんです」
「うむ」
僕は船長の船を指差した。
「この船は『スライムの欠片』を、メルル王国まで運んでますよね」
「そうだけど」
「この船で僕の『スライムの欠片』も、メルル王国に輸送してもらえませんか?」
「う~ん」
船長が腕を組んで考え込んでいる。
「そりゃ難しいな」
「なんで?」
「だって、この船はタケル様の船だ。勝手に管理していない物を運んでバレたら、俺の首が飛ぶ」
......確かに。
「じゃ、僕を船員として雇ってください」
「またっ!?」
「で、『スライムの欠片』を私物として持ち込みます」
僕は袋一杯の『スライムの欠片』を見せた。
「だめだ、だめだ。そんなにいっぱい持ってたら親衛隊に怪しまれる」
う〜ん。
どうしようか。
ブオー。
汽笛を上げながら桃色の船が入港して来た。
「あの船は?」
「メルル王国の船だよ」
「へえ」
「タケル様の国はメルル王国から、農作物を輸入しているのだ」
桃色の船から沢山の野菜や果物が下ろされている。
それを見て、僕は閃いた。
「よし」
上手く行くか分からないけど、この方法で行くか!
「じゃ、とりあえず船員として雇ってください」
船長は僕の考えを聞くと、
「それは面白い」
と、僕を船員として再雇用してくれた。
次の日。
僕は船に乗って、メルル王国に着いた。
メルル王国は、グラン王国と同じくらいの人口、面積の国だ。
魔王からの侵略を受けなかったので平和だし、国民も穏やかだ。
「じゃ、行ってきます」
「おう」
船員として一仕事終えた僕は、船長に挨拶すると船を後にして街に向かった。
自由時間の間に、商談をまとめなくちゃ。
「ここだな」
船長に教えてもらった工場だ。
スライム島で採れた『スライムの欠片』はこの工場で、ポーションやらエーテルを作る素になっているそうだ。
「僕の『スライムの欠片』は品質がいいんですよ」
僕はポケットに一個だけ忍ばせておいた『スライムの欠片』を、工場長に見せた。
僕より背が小さく日焼けしたマッチョな工場長は、それを手に取ると目を細めた。
「おお! いい輝きだ!」
「でしょ? 買いませんか?」
「だけど、もう、グラン王国のタケルから輸入するって決まってるからなあ」
「うちの方がタケルのやつより品質がいいし、安く出来ますよ!」
「いくらだ?」
工場長の目が輝いた。
「15万エンでどうでしょう?」
「むむ、それじゃ今より高いじゃないか」
やっぱり、工場長はもっと安くしてほしいみたいだ。
「でもこの品質ですよ」
「確かに品質は素晴らしいが、値段がなあ......。せめて今の輸入業者と同じ額にならんかね」
「う~ん」
僕は悩んでる振りをした。
名案を悟られないように。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます