第17話 僕の商売に投資してください

「俺のスキルは『魔法剣技』なんだ」


 カズシはそう言った。


「知ってるよ」

「このスキルは、ガチャを引いた時に手に入れたものだ」


 カズシは親に反抗して城を出たその日、とある森の中で『ガチャ』と出会った。

 その『ガチャ』を引いたことで『魔法剣技』というスキルを身に付けたそうだ。

 ちなみに、その『ガチャ』はカズシが最後の一回を引いたから消滅したそうだ。


「で、これが魔法剣」


 カズシが腰に差した剣を抜き取り、僕の前で一振りした。

 刀身が明りに照らされてキラキラ輝いた。

 『魔法剣技』スキルを身に付けた者が剣を持つと、その剣は『魔法剣』となるらしい。

 そして、使えば使う程、『魔法剣』は強力になって行くそうだ。


「で、名案って何だい?」

「この魔法剣でスライムを狩ることだ」


 僕はカズシが何を言いたいのか、まだ理解出来ない。


「どういうこと?」

「俺の魔法剣でモンスターを倒すと、モンスターはいつもの10倍の素材をドロップするんだ」


 魔法剣に備わる『素材倍増マテリアル・テン・タイムス』という魔法。

 それによって、モンスターを倒した後にドロップされる素材が、通常の10倍になるそうだ。


「例えば、スライムを一匹狩れば『スライムの欠片』は一つしか手に入らないが、俺の魔法剣で倒せば、『スライムの欠片』は10個手に入る」


 スライムだけじゃない。

 ゴブリンを倒せば、『ゴブリンの骨』が10個手に入る。

 キメラを倒せば、『キメラの翼』が10個手に入る。


「すごいね!」


 僕は感動した。


「俺が何でタピオカを沢山集めることが出来たか、これで分かっただろ?」

「そうか、魔法剣を使ったんだね」


 カズシは頷いた。


「魔法剣で芋のモンスター『タロイモ』を沢山倒したんだ。そいつはタピオカをドロップする」


 これでカズシの謎が一つ解けた。

 ほんと、友達になれて良かったよ。

 カズシは僕にこう言った。


「スライムはこの街を出て森を抜けたところに、そこそこいる。そこで狩りをしよう」


 次の日。

 僕はギルドに行った。


「タピオカミルクティー屋を辞めます」

「あら」


 サチエが驚いている。


「新しい商売を始めます」


 そう告げると、僕はサチエに約束通り二倍の敷金と礼金を払った。


「いらないわ」

「え?」

「君は商売の才能がある。その敷金と礼金はあなたへの投資金とするわ」


 そう言われた僕は紙を取り出し、そこに投資してもらった金額と僕の名前『ルキ』と書いた。


「株券みたいなもんね」


 サチエはその紙切れをそう呼んだ。

 そう言えば船長もそんなこと言ってたな。

 何だろう?

 株って?


 次に港に行き、船長に会った。


「タピオカミルクティー屋を辞めて、新しい商売を始めます」

「そうか」


 イカツイ顔の船長は僕に「お疲れさま」と言って、10万エンを手渡した。


「お前は商売の才能がある。だから新しい商売にも投資しよう」


 僕はまた船長に、金額と名前を書いた株券を渡した。


つづく

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