第18話 ようこそ! スライム牧場へ

 森を抜けると、そこに滝が現れた。

 5メートルくらいの落差で、水が上から下へ降りてくる。

 僕の顔に冷たい水しぶきがかかる。


「ここでスライム狩りをしよう」


 カズシが僕にそう言うと、早速水の中からスライムが飛び出して来た。


「たぁっ!」


ブチュッ!


 カズシの魔法剣でスライムは真っ二つになった。

 数秒後、スライムから煙が出て消滅した。

 後には緑色の『スライムの欠片』が残されていた。

 普通の武器で倒した時の10倍の量だ。


「すげー!」

「この調子で、どんどん行くぞ!」


 カズシは滝の周りにいるスライムを狩って回った。

 僕はそんな彼のサポートに回った。

 ご飯や飲み物を買って来てあげたり、肩や腰をマッサージしてやった。


 そして、だんだん日が暮れて来た。


「今日だけで、100個採れた」


 つまり、スライムを10匹狩ったとうことだ。


「どうだ?」

「う~ん。タケルの量に比べたら少ないね」


 スライム島では、500人の労働者が一日に一人あたり5個の『スライムの欠片』を採っていた。

 一日で2500個だ。

 今日、僕らが頑張った分の25倍。

 これじゃ、勝ち目がない。


「さすがにスライム島ほど、ここにはスライムはいないぞ」


 カズシが仕方なさそうに言う。


「スライムが多ければいいんだよね。う~ん」


 僕は考えた。


 そうだ!


「スライムを繁殖出来ないかな?」

「どうやって?」

「それはこれから勉強するんだ」


 次の日。


 スライム狩りはカズシに任せて僕は街の本屋に向かった。


『モンスター大図鑑』

『スライムの特徴』


 この二冊を買った。

 専門書なので、結構値が張った。

 出費が痛かった。

 だけど、先行投資だ。


 カズシがスライムと戦っている横で、一心不乱に僕は本を読んだ。


「スライムの大好物は米......」

「スライムの雄と雌の割合は、3対7......」


 色んなことが分かって来た。

 僕は早速、スライム繁殖のための設備を整えることにした。


 まずはスライムを囲うための柵を作った。

 乗り越えられない様に上にはネットを張る。

 餌となる米を大量に調達し、ネットの隙間から放り込んで食べれる様にする。

 即席のスライム牧場が出来上がった。


「生け捕りにしたぞ!」


 タケルが雄と雌のスライムを一匹ずつ持って来た。

 それを柵の中に入れる。


 次の日。


 スライムが三匹になっていた。

 やった!

 繁殖に成功したのだ。

 子供のスライムが大人になるまで三日掛かる。

 それまで待つことにした。


 そして、三日後。


 大人になった子供スライムを狩ってみる。


「あれ? 何だか? 色が悪いね」


 『スライムの欠片』の色つやが悪い。

 その後も、牧場で繁殖させたスライムがドロップする『スライムの欠片』はどこか品質が悪そうだった。

 これじゃ高値で売れないなあ。


「多分、柵の中に閉じ込めて育てるのが良くないんだよ」


 カズシがそう言った。


「確かに、野放しにしてるスライムの方が健康的で『スライムの欠片』の色つやも良いね」


 僕は納得した。


つづく

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