第16話 『スライムの欠片』で僕は財を築く!

 僕がタピオカミルクティー屋を始めてから二週間が経った。

 お客さんが連日列をなして来てくれた。

 主に観光客や若い女の子が中心だった。

 そんな中、船長やサチエ、そしてカズシもよく買いに来てくれた。

 カズシはタピオカミルクティーが飲みたいというよりも、僕の店に親衛隊が攻めてこないか、見張りに来てくれてる感じだった。


「さぁ、今日もそろそろ終わりますかね」


 空がうっすら暮れて来た。

 僕は店の戸を閉め、売り上げ金を計算する。


コンコン。


「はい」


 僕はノックに応える。


「ケンタ。俺だ」


 カズシの声だ。

 僕はカズシに自分の本当の名前を教えていた。

 彼は僕の友達だからね。


「カズシ。こんな遅くに何だい?」

「お前に教えたいことがあって来た」

「ほほう」

「タケルがタピオカミルクティー屋を始めるそうだ」


 カズシが言うには、タケルは僕のタピオカミルクティーが飛ぶように売れているのを見て羨ましくなったそうだ。

 国をあげて街のあちこちにタピオカミルクティー屋を開店する予定らしい。

 価格は僕の店より安い一杯30エンで売るそうだ。


「う~ん」

「どうする?」

「タピオカミルクティー屋は今日で閉店だね」


 僕の答えにカズシは目を丸くした。


「いいのか? 今、儲かってるんじゃないのか?」

「うん。だけど……僕の店より安いうえに、沢山店を作って売られたんじゃ勝てないよ。全部お客さんを取られちゃう」

「確かにそうだが……」

「それに、そろそろ辞めようかと思ってたんだ」


 僕はタピオカミルクティーを一杯50エンで売ることに限界を感じていた。

 いくら頑張っても一日10万エンを稼ぐのがやっとだった。

 そこから家賃や材料費を引くと、儲けは3万エンくらいだ。

 もっと儲かる商売はないものかと考えていた。


「カズシ、君は『スライムの欠片』というのを知っているかい?」

「ああ。あのポーションとかいう傷薬の原料になるやつだろ」

「うん」


 数日前、僕は盗んだ『スライムの欠片』を道具屋に持って行った。

 売った場合の値段を訊いた。


「なんと、10万エンもしたんだ」

「すげえな」


 時価だから、日によって値段は変わるのかもしれない。

 だけど、たったひとつでタピオカミルクティー屋の一日の売上と同じなのにはビックリした。


「僕は『スライムの欠片』を集めてそれで商売がしたいんだ」

「確かに儲かるかもな」


 カズシは頷いた。


「僕が『スライムの欠片』で商売したい理由は儲けたいからだけじゃないんだ」

「何だ?」

「タケルも『スライムの欠片』で商売をしている。僕も同じ商売をする。そして、奴の『スライムの欠片』の儲けを奪ってやりたいんだ」


 僕は『スライムの欠片』をタケルより沢山仕入れて、他国や工場に安く売る。

 いずれ、『スライムの欠片』は供給過多になって値崩れを起こすだろう。

 そうなれば、タケルの財力は弱まるだろう。

 反対に僕は財力が強まるはずだ。

 その儲けを重税で貧困にあえぐこの国の人々に分配するんだ。

 そして、皆で力を付けて反乱を起こすんだ。


「問題は『スライムの欠片』をどうやって集めるか、なんだけどね」


 カズシは僕の話を聞き終わるとこう言った。


「俺に名案がある」


つづく

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