第13話 出会い

 そして、程なくして候補者が見つかった。


 カズシ(18歳)


  Lv.19

  スキル :魔法剣技(中級)

  攻撃力 : 100

  防御力 : 100

  HP : 150

  MP : 30

  素早さ :70

  知力 : 50

  運 : 45


「うん、なかなかいいと思うわよ」


 サチエは自家製の能力測定器で、そのカズシという男の魔法剣士の能力を測った。

 彼は僕の『タピオカ仕事』に手を上げてくれた。


「じゃ、カズシさん。お願いします」

「おうよ」


 細身だけど鎧の下は細マッチョって感じだ。

 そして、クールな感じだ。

 顔は僕の方がちょっとカッコいいかな。

 でも、ステータスは僕より優れてる。


「じゃ、行ってくるぜ」

「明日中にお願いします」


 そして翌日の朝。

 僕がギルドに行くと、もうカズシが来ていた。


「ほらよ」

「おおっ!」


 机の上に、袋に入った5kgくらいのタピオカが置かれている。


「ありがとうございます! でもこんなにいっぱいどうやって?」

「そんなことどうでもいいだろ。ところで、それ何に使うんだ?」

「タピオカミルクティーを作るんです!」

「何だそれ? 美味いのか?」

「はい。飲んでみますか!?」

「いらん」


 不愛想だけど、頼りになるな。

 この人を雇いたいなあ。


「あの......カズシさん。僕と一緒に冒険しませんか?」

「お前、何がしたいんだよ。商売するんじゃなかったのか?」

「そうですね」


 カズシさんは用があると言って、去って行った。


 僕のタピオカミルクティーは飛ぶように売れた。

 特に若い女の子に。

 友達とお話しする時に、これを買うらしい。

 一杯50エンで売っている。

 原価が30エンだから一杯20エンの儲けだ。

 皆、大切なお小遣いから買ってくれてありがとう。


「キャー!」


 タピオカが地面に転がる。

 ミルクティーが地面に吸い込まれる。

 さっき買ってくれた女の子が地面に引き倒される。


 親衛隊だ。


 3人いる。

 憎きあいつらが僕のお客さんを蹴散らしながらやってくる。


「貴様か! ここで許可なく商売をしているという者は!」


 一番偉そうな奴が僕を怒鳴りつける。

 僕は質問に応えず睨みつけた。


「なんだ、その態度は!?」

「僕はちゃんとここで家賃を払って商売してるんだ! 何であなたたちの許可がいるんだ!」

「この土地はタケル様が治める国であり、グラン王国の一部なのだ。だから場所代をおさめよ!」

「......っく」


 僕は憎きタケルやグランに金を払いたくない。


「払わなければ、分かってるな」


 親衛隊が腰に差した剣を抜いた。

 殺される......。

 僕の脳裏に牧師様の首の無い死体がフラッシュバックする。


「......分かりました......」


 ここは耐えよう。

 だけど、涙が止まらなかった。

 力が無いばっかりに、こんな奴らに従わなければならないなんて。


「いくら払えばよいのですか?」

「50万エンだ」

「えっ......そんなにありませんよ!」

「嘘を付け! お前が不正に稼いでいるという通報があったんだ!」


 親衛隊が黒い軍靴をカツカツ言わせながら店に殴り込む。

 やめろ!

 やめてくれ!


「お前ら! やめないか!」


 聞き覚えのある声がする。

 振り返ると、そこには剣を手にしたカズシがいた。


つづく

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