第2話 雑用係の生い立ち

 『平民』その言葉に僕は耳を疑った。

 僕は雑用係とはいえ、パーティのメンバーとして皆をサポートしたつもりだ。

 そのお陰で魔王を討伐出来たんだ。

 そして、皆、今回のことでそれなりの地位を得た。

 同じ苦労をして来た仲間なのに……なんで僕だけが。


「あ、あの……」


 緊張でカラカラに乾いた口から、声をやっとこさ出す。


「何だよ?」

「僕……」

「お前をちゃんと評価した結果だよ! ありがたく受けろ!」

「はいっ」


 戦士タケルがイライラした様子で僕を怒鳴る。

 パーティのメンバーの中でも特に血の気が多い彼のことを、僕は苦手だったし怖かった。


「まあ、生活保護は出してやるから」


 グラン王は表情一つ変えずにそう言った。

 まるで氷のように冷たい。

 僕は彼の冷徹な性格を思い出した。

 許しを乞う魔王を、笑いながら輪切りにしていた。

 僕はこの人が王様になったとしたらどうなるか考えてしまった。

 この国は大丈夫なのかなあと思ったよ。

 どのみち、能力のない僕が声を上げても握りつぶされるだけだろう。

 そんな僕のステータスはこんな感じだ。


  Lv.13

  スキル :なし

  攻撃力 : 10

  防御力 :15

  HP : 50

  MP : 0

  素早さ :100

  知力 : 20

  運 : 0


 これは賢者マリクのスキル『能力監視キャパシティーモニター』で見てもらった結果だ。


 ちなみに、グラン王のステータスはこんな感じ。


  Lv.9999

  スキル :剣術(最上級)

       魔法(火、水、土、風属性)

       空間維持

       時空補正(2秒間)

       武器自動回復

       火竜化

       氷竜化

       召喚(オーディーン、カーバンクル、ゴブリン×100、シルフ、サキュバス、ゴーレム、オーガ)

  攻撃力 :9999

  防御力 :9999

  HP :9999

  MP :9999

  素早さ :9999

  知力 :9999

  運 :9999


 カンストってやつだ。

 グランは他の皆よりも成長力が高かった。

 何より沢山のモンスターを率先して狩っていたからね。

 経験値も十分得ていたはずだ。

 だけどこのステータスは異常だと思う。

 何か裏があるのかなあ。

 ま、ステータスだけを比較すると僕と同じ年齢とは思えないよ。

 そんな僕でも、素早さだけは多少あると自負している。

 逃げ足は速いよ。

 だからおとり役や使いっパシリを任された。

 何でこんな僕が勇者パーティに入れたかって?

 実は僕は孤児なんだ。

 今年で16歳。

 背は165センチ痩せ型。

 黒髪で顔は普通だと思う。

 孤児院のシスターが言うには僕は教会の前に捨てられていたらしい。

 シスターは雨に濡れている僕を抱きかかえてくれた。

 彼女が僕の育ての親になってくれた。

 僕より10歳年上の黒髪の美人で、僕は密かに彼女のことが好きだ。

 孤児院には僕みたいな子供が沢山いた。

 食べ物には不自由したけど、友達も出来たし楽しく生活していた。

 14歳のある日、国を挙げて魔王討伐が計画された。

 討伐のために沢山のパーティが編成された。

 孤児院の子供達は戦力としてパーティに引き抜かれていった。


「今こそお国のために働けってね」


 孤児院は税金で運営されていたから当然といえば当然の話さ。

 友達とは離れ離れになった。

 で、僕はグラン王のパーティに引き抜かれたんだ。


つづく

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