283●「2024兵庫県知事選挙」と『プリズナーNo.6』第四話『われらに自由を』(1967)➀「情報一択状態」の恐怖、そして「情報三原則」、そして『ウルトラQ』

283●「2024兵庫県知事選挙」と『プリズナーNo.6』第四話『われらに自由を』(1967)➀「情報一択状態」の恐怖、そして「情報三原則」、そして『ウルトラQ』



 事実はSFよりも奇なり……を、本当のリアルで目の当たりにした感の「2024兵庫県知事選挙」は、11月17日(日)の投開票日からわずか一週間の間に、ビックリ箱をひっくり返したみたいに、出るわ出るわのドンデン返し大会の様相を呈してきました。


 その原因は、SNSが世論形成に多大な影響をもたらして選挙情勢を席巻したことに尽きるでしょう。私は兵庫県外人ですが、それでもヤフーのニュースをチラチラとウォッチするたびに、心底ゾッとしたものです。


 投票日がせまり、あと一週間あたりになったころ、ヤフーニュースのコメント欄には、S候補を賛美する文面がドーッと並んで、そればかりになってしまいました。

 それまではS候補への批判も相当数見受けられましたが、ある時点から一方的なまでの絶賛怒涛状態となりまして、読むにつけ、なんだか怖くなってきたものです。

 そのことの良し悪しは別として、ある一つの意見なり見解に塗り固められたかのような画面には、どこか尋常でない雰囲気を感じずにおれなかったのですが……


 この「情報一択状態」の不気味さよ。


 やはり怖い、もう本能的に、怖い。

 記事もコメントも、読むときには対立見解なり反対意見を頭に置いて、一方に偏らない読み方をしたいと思うのですが、なにせ物量の物凄さ。

 ついフラフラと、S候補のカルトファンに染まってしまいそうな幻惑にとらわれてしまいますね。

 まあ私は兵庫県外人なので、あくまで他人事で済んでしまったのですが……


 SNS、あな恐ろしや。

 このたびの知事選は、その結果はさておき、実に多様な問題点を浮き彫りにしてくれました。たとえば下記のニュースにあるように……


       *


ネットのニュース

●立花孝志氏を刑事告訴、百条委の奥谷謙一委員長「虚偽のSNSで名誉毀損」…「出てこい奥谷」演説でも被害届

2024/11/22 23:52 読売新聞オンライン

兵庫県議会百条委員会の委員長を務める奥谷謙一県議(39)は22日、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏にSNSで虚偽の内容を投稿され、名誉を傷つけられたとして、県警に名誉毀損容疑で刑事告訴した。

告訴状では、立花氏が10月31日~11月19日、疑惑を告発した職員が死亡した原因について、奥谷氏がマスコミに圧力をかけて 隠蔽したなどとする虚偽の内容を、X(旧ツイッター)やユーチューブに投稿。これらの投稿後、奥谷氏の自宅や職場には、 誹謗ひぼう 中傷の電話やファクスが寄せられ、「社会的名誉が大きく損なわれた」としている。

また、知事選の選挙期間中、立花氏が奥谷氏の自宅兼事務所前の路上で街頭演説し、「出てこい奥谷」などと発言したことについても、県警に脅迫と威力業務妨害の両容疑で被害届を提出したという。

立花氏は22日、記者会見で奥谷氏について、「私がデマを吹聴していると言っているので来週中に東京地裁に提訴する」と述べた。



ネットのニュース

●兵庫県知事選中「虚偽通報でアカウント凍結」、稲村和美氏の支援団体が「氏名不詳の複数人」刑事告訴

2024 11/22(金) 23:57配信 読売新聞オンライン

兵庫県知事選で落選した稲村和美氏を支援する政治団体が運営していたX(旧ツイッター)のアカウントが、選挙期間中に凍結された問題で、団体側は22日、不特定多数の人物が虚偽通報を一斉に行った疑いがあるとして、偽計業務妨害容疑で県警に告訴状を提出した。



ネットのニュース

●〈斎藤知事に公選法違反疑惑〉票を「収穫」、広報の「お仕事」と女性社長がウッカリ暴露。社長は過去に兵庫県の知事直轄事業「空飛ぶクルマ」にも関与か

2024 11/23(土) 21:02配信 集英社オンライン

斎藤元彦知事(47)が再選された兵庫県知事選の公正性が疑われる重大疑惑が噴き出した。斎藤氏から選挙の「広報全般を任された」と主張する同県内のコンサルタント会社社長が、SNSを含む広報戦略を「仕事として手掛けた」とネットで自慢し始めたのだ。ネットでも選挙運動を行なった者に報酬が渡れば公職選挙法の買収罪にあたる可能性があり、そうなれば候補者だった斎藤氏本人も連座制適用で当選取り消しがあり得る。斎藤県政とともに疑惑もシーズン2の幕開けである。



ネットのニュース

●斎藤元彦氏側が知事選で「広報全般を任された」会社に報酬支払い、SNSでは違法との指摘相次ぐ

2024 11/23(土) 22:44配信 読売新聞オンライン

斎藤元彦知事が再選された兵庫県知事選を巡り、県内のPR会社の経営者が、斎藤氏側から「広報全般を任された」などとインターネットで投稿した。選挙運動の対価として報酬を支払うことを禁じた公職選挙法に抵触するとの指摘がSNSで相次いでいるが、斎藤氏は違法性を否定している。

20日付の投稿によると、同社は斎藤氏のキャッチコピーを考案したほか、SNSの公式応援アカウントの開設や運用を手がけたとしている。

総務省は、業者が主体的に選挙運動の企画立案を行う場合、業者は選挙運動の主体であるとされ、業者への報酬の支払いは公選法が禁じた買収になる恐れがあるとしている。

斎藤氏は22日、記者団に「法には抵触していない」と主張。斎藤氏の代理人弁護士は読売新聞の取材に、同社に報酬を支払ったことを認めた上で、「ポスターの製作など、法で認められたものを依頼した」と述べた。同社は「一律に取材は断っている」としている。


       *


 特定県議に対する名誉棄損や脅迫、威力業務妨害の恐れ。

 また、それらの影響で議員辞職までした県議がおられたこと。

 特定候補者へのSNSアカウント凍結事案に基づく偽計業務妨害の恐れ。

 コンサルタント会社社長が、SNSを含む広報戦略を「仕事として手掛けた」とネット投稿したことに基づく、知事選当選者の公職選挙法抵触の恐れ。


 それらの問題が開票翌日から続々と浮上して来たのですね。

 いずれも今後の百条委員会のありかたや、選挙結果自体にも影響するかもしれない、ヘビーでクリティカルな事案。

 こんな選挙を見たのは初めてです。

 これまではたいてい、結果が出れば世間は寝静まって、ゴタゴタすることはほとんどなかったと思うのですが……

 これはもう、戦慄するしかないような。


 ぜひともこのリアルをドラマか映画になさっていただきたいですね。

 いや、NHK様、これはドキュメンタリーですよ!

 まんま、ホラー感覚のポリティカルSFになりますって。

 オーウェルの『1984』よりも怖いぞ。

 ゲッペルスが生きてたら腰抜かしますって。


 というのは、来年七月には参院選。

 あと半年余りしかありません。

 もしも、このまま「特におとがめなし」で参院選に突入したら……

 国政選挙です、飛び交う札束は一知事選の比較ではないでしょう。

 そして一県ではなく一国まるごと、SNSの巨大な暴風が吹き荒れるはず。

 特定候補者の賛美だけでなく、ライバルを押しつぶすネガティブキャンペーンも、えげつないほど露骨にネットに溢れ返るかもしれません。

 しかもそれが、特定候補が意図的に仕組んだら違法ですが、だいたいことごとく、匿名で出所不明な不確実情報の大津波ですよ。

 もう犯人が多すぎて、捕まえられないのでは?


 今、気にかかるのは、政権与党がこの事態をどうとらえているか、ですね。

 「特におとがめなし」のまま、ズルズルと参院選に突入したら、それこそ与党にとって好機かもしれません。

 今回と同じSNSを駆使した情報操作が、カネ任せで許されるとなったら……

 一県の知事選のスケールをはるかに超えたウルトラスーパーサイクロンハリケーンな「情報一択状態」が全国規模で出現するかも……


 なんとなれば、現在の政権与党の鉄板支持者の多くは、高齢者だからです。

 長年、与党を支えてきた団塊世代高齢者はすでに70歳代。

 あと十年二十年もすれば、申し訳ありませんが他界されて自然減で消滅していく傾向が顕著になるはず。

 それまでに若者層の支持を盤石にしておきたい。

 若者はTVのニュースも新聞にも関心が薄く、情報源はSNS。

 今度の参院選は、与党が力押しでネット情報戦に勝利する最初の実戦舞台となりそうな……そんな気がしてなりません。


 となると、「特におとがめなし」のまま、ズルズルと参院選に突入する???


 しかしこのままSNSのモンスターを放置していたら、誹謗中傷の洪水に呑まれて自死に追い込まれる候補者、関係者が続出するかもしれません。

 それほどに恐ろしい、悪魔のパンドラの箱が開いてしまったようです。


 この国、どうなるんだろう?


 ろくなことにならないような気がします。


 ともあれ手前味噌ですが、私の「情報三原則」。

① 情報は全て意図的に流される。

② 情報にはウソがある。

③ 大事な情報は隠される。


 この三点を頭に置いて、常々、「本当のところはどうなのか」と疑ってかかるしかなさそうです。


 特に、「同じ内容の大量の情報」しか存在しなくなる「情報一択状態」に、うっかり押し流されてしまわないように。


       *


 さて「情報三原則」の③「大事な情報は隠される」を現状にあてはめてみますと……


 騒ぎになったとたん、S知事のSNS対応戦略を請け負っていた? ……と報道されたPR会社のホームページやネット投稿が次々と閉鎖や消去されましたね。

 ということは、そこに大事な何かがあったということでしょうか?

 そこにあったものが「不都合な真実」でなく「都合のいい虚構」だったら、閉鎖や消去はされないでしょうしね?


 もうひとつ、なんだかずーっと、「隠されてきた」感が引きずられているのが、百条委員会。

 知事選の前は、当時のS知事の「パワハラとおねだり」問題ばかりが何度となく繰り返されて、ニュースを見る私もなんだか辟易ぎみでした。

 それよりも大事なことが、後回しにされていないか?

 ①公益通報らしき文書に対するS知事の対応は、適切だったのか?

 ②野球パレードにからんで、県の補助金を県への寄付にキックバックさせた? という疑惑。

 この二点についての調査検討が、まるで「隠された」かのように後回しになったみたいで、議論の俎上そじょうに上る間もなくS知事の失職と再選挙に突入してしまいました。

 この二点に関係してなのか、職員の方が二人もお亡くなりになったというのに。

 百条委員会の今後に注目したい最大のポイントですね。

 大事なことが、上記➀と②に隠されてはいないかな? 

 それとも、隠されたままで終わるのかな?

 もう一度知事の不信任が可決されたりしたら、たちまち議会解散でガラガラポンのやり直し。 

 そうなると百条委員会は吹き消されませんか?

 

       *


 今回の選挙を見てすぐに思い浮かぶのが、20世紀のTVドラマ『プリズナーNo.6』(1967~68)の第四話『われらに自由を』ですね!

 次章で触れます。


 20世紀の実写SF“連続ドラマ”で最高峰は迷わず『プリズナーNo.6』!

 二位は『マックス・ヘッドルーム』(1984、1987)。

 三位は国産の『ウルトラQ』(1966)ですね。

 『ウルトラQ』はいかにも子供向けですが、だからいいのです。とかくインテリを気取って難解になりがちなSFを優しく噛み砕いて作品化し、小学生も含めた大衆に開放した姿勢は素晴らしいと思います。金城哲夫氏をはじめ脚本家の皆様の力量は、今観ても神業かみわざですって!

 大好きな回は17話の『1/8計画』。

 なんといっても21世紀のフィギュアが1/8サイズを基本にしていることからも、作品の発想の先見性、普遍性に驚愕させられますね。

 そして結末のオチのSF熱量の高さ。

 1/8、みんなでなったら怖くない!

 なるほどそうか! とガッテンさせてくれますね。 

 なによりも、人間を1/8にすれば国土は8倍! (利用効率は自乗の64倍かな?)という、わかりやすくて説得力抜群のアイデアにド肝を抜かれましたね。

 人間を1/8サイズにすれば、その環境負荷も1/8に減ることが期待できそうですから、マジ、国連と世界の環境保護活動家の皆様に提案すべきではないでしょうか。

 人類を遺伝子操作で小型化する(ほら、ミニブタやコビトカバみたいに)と、環境キャパシティに大貢献しますって。

 それに、人を1/8に小型化したら戦争も減るかもしれませんよ。

 戦車も戦闘機も1/8になっちゃいますし。

 



   〈次章へ続きます〉


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