224●『おたくのビデオ』(1991)⑪「書店絶滅時代」のサバイバル
224●『おたくのビデオ』(1991)⑪「書店絶滅時代」のサバイバル
ニッポンのオタク文化を支えてきたアニメとラノベの内容が、ここ十数年、似たり寄ったりのマンネリ化に陥っている傾向は否定できないでしょう。
タイトルだけをとっても、「異世界」「転生」「貴族」「チート」「無双」「成り上がり」「ハーレム」「下剋上」「やり直し」「悪役令嬢」「ポーション」……と、聞きなれたキーワードに彩られていますね。
それはすなわち、出版社がリスクを排して「売れ筋」の路線に
冒険的な異端の作品は、やめておこう……と。
その理由は明白。
書籍出版のマーケットの縮小ですね。
おそらく、本が、着々と売れなくなっているのです。
その事象は、「書店数の減少」として、目に見える形になってきました。
そういうことですよね。
本というものが右肩上がりで売れていれば、書店が増えることはあっても、廃業するはずがありませんから。
では具体的に、どれほど減ったのか。
ネットのニュース
●20年で店は“半減”――消えゆく書店を「国が支援」へナゼ 「税金投入は無駄」…ネットでは厳しい声も 書店の魅力と将来は?
2024 3/6(水) 10:12配信 日テレNEWS NNN
書店の数は約20年で半減。若者が本を読んでいない現状は深刻で、書店経営は厳しさを増していますが、なぜ今、支援へ動き出すのでしょうか?
有働キャスター「そんな皆さんが期待を寄せているのが、経済産業省が(2024年3月)5日設置した、書店振興プロジェクトチームです。書店は新たな発見があり、視野も広がる街の文化拠点だから、国が支援していこうというものです。なぜ、今なのでしょうか?」
小野高弘・日本テレビ解説委員「店主の皆さんは悩んでいましたが、実際大変です。出版科学研究所によると、書店の数は2003年度に全国で2万880ありましたが、2022年度は1万1495と半分近くに減っています」「本が読まれていません。文部科学省の調査(2022年)で21歳の若者に1か月に読んだ紙の書籍の数(雑誌と漫画を除く)を聞いたところ、0冊が62%でした。紙ではなく電子書籍ではどうか聞いてみたところ、0冊という回答は78%もありました」
小野委員「経産省は今後、書店経営者などからヒアリングして支援策を考えていきたいとしています。一方でネットでは、『需要がなくなった書店に税金を投入するのは無駄ではないか』『図書カードを配布した方が本を買うのでは?』という厳しい意見もあります」
●消える老舗、「書店危機」の実態◆国の支援に分かれる賛否
谷山絹香2024年05月04日10時00分【時事ドットコム取材班】
街の書店が危機にひんしている。全国の書店の数は10年間でおよそ3割も減り、市区町村に1軒も書店がない「無書店自治体」は27.7%に達した。背景には、活字離れやネット通販の台頭、電子書籍の普及などさまざまな事情が絡んでおり、国は専門のプロジェクトチームを設置して「書店支援」に乗り出した。ただ、国の支援の在り方を巡っては、業界内外からさまざまな意見が交錯する。(時事ドットコム編集部 谷山絹香)
日本出版インフラセンターによると、2013年度で全国に1万5602店あった書店は、2023年度には1万918店まで減った。特に目立つのが小規模店の苦境だ。売り場面積300坪以上の大規模店は10年間で1120軒から1039軒と微減にとどまったが、49坪以下の小規模店は5598軒から3789軒と、大幅に数を減らしている。
書店が1軒もない「無書店自治体」の割合も増している。出版文化産業振興財団の調査では、2024年3月現在、全国の自治体の27.7%が無書店自治体に該当し、書店が1店舗しかない自治体も含めた場合、47.4%に達したことが分かった。
*
引用が長くなってすみません。要約すると、こういうことです。
◆全国の書店数:2003年度に2万880店
→ 2013年度に1万5602店
→ 2023年度に1万918店へ減少。20年でほぼ半減した。
◆2013~2023年の10年間で、
売場面積300坪以上の大規模店:1120軒→1039軒と微減にとどまった。
売場面積49坪以下の小規模店:5598軒→3789軒と大幅に数を減らした。
◆2024年3月現在、
全国の自治体の自治体の27.7%が無書店自治体に該当。
→自治体の4分の1が「書店ゼロ」となった。
書店が1店舗しかない自治体も含めた場合、47.4%に達した。
その背景には、まずは若者人口の減少。
そして活字離れやネット通販の台頭、電子書籍の普及などさまざまな事情が絡んでいる。
そこでとうとう、国は専門のプロジェクトチームを設置して「書店支援」に乗り出したとさ……。
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やはり、由々しきことです。
ざっくり言いますと、紙の本を出版しても、売れる部数が「20年前の半分くらいになった」ということですね。
若者人口の減少、活字離れ、ネット通販、電子書籍の普及……といった大きな社会的背景がありますので、書店減少の流れが食い止められなくなったと思われます。
とうとう、国が「書店支援」に乗り出す事態に……!
しかし、こうなることは、20年ほど前からある程度予測されていたこと。
出版不況を打開するため、全国の書店を挙げて一つの対策が講じられてきました。
「本屋大賞」ですね。
2004年から始まった本屋大賞は、ウィキペディアに、“この賞は「全国書店員が選んだ いちばん! 売りたい本」をキャッチコピーとして掲げており、主催する本屋大賞実行委員会は書店員こそが(商品と顧客という形で)本と読者を「最もよく知る立場」にあると位置づけ、投票資格者を書店員主体にしていることの新しさを強調する。”と紹介されています。
「いちばん! 売りたい本」をコンテスト型式で大々的にアピールすることで、シンボリックな“一大ベストセラー祭り”を創出し、店頭に集客して売り場を活性化しようとする意図は明らかですよね。
「売りたい本」を大々的に宣伝するのですから、その目的は書店の売上向上にあること、疑いようもありません。
しかし気になるのは、これまで20年間の受賞実績をみると、ノミネート作品も含めて、特定少数の作家さんに限られている印象であること。ウィキペディアでは“一方で突出した、異彩を放つような作品が受賞しておらず、ラインナップも含め平均化されているという声もある。”と指摘されています。
どうも、もともと別の賞を獲得して颯爽と文壇に登場し、ベストセラー間違いなしと予測できる作家さんをクローズアップして、店頭で確実に結果を出せるキャンペーンを展開、書籍の売上全体を引っ張り上げる“プラスの異常値”を作り出そうと画策されているように見えます。
それはこれまで、成果を上げてきたはずですが……
それでも結果的に、書店数は20年で半分近くに減ってしまいました。
ただし、ドカッと減ったのは小規模書店であって、大規模書店は微減にとどまったわけですね。
どうやら「本屋大賞」の集客力の恩恵を受けたのは大規模店の方であり、小規模店には、ご利益の神通力が及ばなくなった……という結果がうかがえるわけです。
もう、書店側の自力では、店舗数の現象を食い止められない。
そこで国が乗り出してきたということでしょう。
ということは……
いまや、書店は絶滅危惧種になろうとしているってことです。
無理もありません。
私も、20年前に比べたら、全く本屋さんへ足を運ばなくなりました。
そもそも、本屋さんがありません。
県庁所在地なのですが、市街地に三軒あった大規模店が、今は一軒になりました。
小規模店なんて、老舗の商店街に一軒、それ以外は見かけなくなりました。
マジ、絶滅危惧種です。
しかし市立図書館が便利な場所にあります。
図書館の方が、本屋さんよりも近くにあるのですよ。
読みたい新刊書は、まずは図書館。
その次はネットの古書店。
というのは、文庫のラノベなんか、図書館には入らないからです。
あ、「SFマガジン」さえも一昨年あたりから図書館に置かなくなりました。
もう世も末です。SFすら絶滅危惧種になってしまったのか?
ともあれ文庫のラノベなら、ネット販売の古書店で、半年待てば半額とか。
一年待てば二百円ほどに落ちてしまったり。
こうなると、よほど気になる本でなければ、待ちますよね。
これでは、書店が減るのは当然です。
しかし、支援に国が乗り出したところで、書店さんの最大のライバルは、じつは公立の図書館なんですよね。
話題の新刊書は、だいたい図書館に揃えられます。
庶民は経費節約で、図書館を優先的に利用します。
本は極力買いません。買って読んだあとは、置き場に困るのでブ●クオフなどに売るのですが、それなら最初からブ●クオフで中古本を買えないか? となります。
図書館ある限り、書店さんの危機は救われません。
図書館が怪獣の如く、書店を食い潰そうとしているのではありませんか?
こうなると、窮鼠、図書館を噛む。
「書店vs図書館」の、シン・図書館戦争、勃発か?
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にしても、恐ろしいことです。
おしなべて本が売れなくなっている。
出版業界も、例によって格差拡大で二極分化しているはず。
つまり、恵まれた一握りの万年ベストセラー作家さんは生活を維持できても、その他大勢に甘んじる弱小新進のラノベ作家さんはたちまち干上がってしまうということですね。
大規模書店は微減にとどまったが、小規模書店はバタバタと倒れていく。
ラノベ作家さんも、相似的な関係にあると思われます。
つまりもう、よほどの大ヒットを当てなくては、ラノベ作家では食べていけない。
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ネットのニュース
●作家・百田尚樹氏、10万部売れても手元に入るのは…「『夢の印税生活』なんて言葉は大昔の話」
2024 6/26(水) 20:34配信 スポニチアネックス
「幻冬舎」編集者・箕輪厚介氏はXに「読者の本離れ以上に著者の本離れが加速すると思う。動画で育った世代に大変なのに儲からない本を出してもらうのは大変」と投稿。
(中略)箕輪氏は「間違いないです。百田さんは異常ですが、10万部のベストセラーで印税1500万円、1万部で印税150万円。普通に考えて本を書くことだけでは多くの人は食っていけないですね」と出版不況について投稿。
作家・百田尚樹氏(68)はこの意見に「はい。『夢の印税生活』なんて言葉は大昔の話ですね。まもなく本だけで生活できる専業作家はほとんど絶滅するでしょうね。ま、それも時代の流れです」と返信していた。
*
文庫ラノベの損益分岐点は、販売部数がおおむね一万といったところでしょうか。
しかし今の作家にとって、同じ一万部でも、売るための難度は20年前の2倍になっていると考えられます。
というか、無名の新人作家で一万部なんて、まず実現できないのです。
出版できても、紙の本を書店の棚に置いてもらえるのは良くて三週間くらいでしょう。しかも、表紙のイラストが売れ行きを左右する市場です。
ラノベは大量生産→大量消費の薄利多売商品。
たちまち次なる新刊ラノベが書店の棚にやってきて交代させられます。
なんだか、スーパーの生鮮食品みたいな感じですね。
スーパーは値引き処分してでも売り尽くしますが、本は出版社へ返品されてしまいます。
先に引用した記事では「1万部で印税150万円」とありますが、それは
これはキツいですよね。年に四作出せても、それぞれ一万部だと、年収280万円なんですから。ほぼ、非正規雇用という感じですか。
しかも最近は、そこから消費税を納めなくてはならず、登録や納税手続きが複雑すぎて、税理士さんを頼めば少なからぬ経費が発生します。本当に国は殺生です、「本屋さんを支援する」というなら、まず、本の消費税をゼロにすればいいでしょう。
あ、食料品もね。
零細ラノベ作家は、今年あたりから事実上、息の根を止められた感があります。
経済的には、まず絶対に成り立たない。
とすると、生活の柱となる本業を維持し、創作は趣味と割り切るしかない。
専業作家は夢のまた夢。
そのうち、ラノベ作家では売れずに死んで転生して、異世界で売れっ子になり、専業作家の夢をかなえた! ……なんてラノベが出てくるのではありませんか?
【次章へ続きます】
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