195●この国が良くなる気がしないのは、なぜだろう?⑩『エヴァ』に垣間見る、“エヴァ無き理想郷”の姿とは?

195●この国が良くなる気がしないのは、なぜだろう?⑩『エヴァ』に垣間見る、“エヴァ無き理想郷”の姿とは?



 アニメにおける「“家族愛至上主義”から“おひとりさま物語”への移行」が、現実のこの国の若者たちの実態を表しているとしたら、政府にとって困ったことになりますね。


 家族関係は断捨離して、親からの自由を得て、おひとりさまで生きよう……となったら、当然、婚姻率が下がり、出生率も下がります。

 実際、その傾向は年々、深刻化しつつあるのでは?


 その解決のために、政府は「こども家庭庁」なる、おままごとの「こども銀行」みたいな名前のお役所をつくり、育児休暇の取得促進や、大学までの学費の無料化などの施策を打ち出しています。

 それとは別に、下記の「支援金」のために、国民健康保険料に上乗せして財源を確保するとか。


ネットのニュース

●1人平均450円 こども・子育て支援金、政府が試算発表

2024 3/29(金) 10:30配信 日テレNEWS NNN

新たなこども・子育て政策のために創設される「支援金」について、国民1人あたりの平均の負担額が、ひと月450円程度と発表されました。

「子ども・子育て支援金」は社会全体で、こどもや子育てを支えるという理念のもと、個人と企業などから公的医療保険料に上乗せして集めるものです。

実際に納める支援金の負担額は所得に連動し、会社員と自営業者など、加入する医療保険の種類によっても異なりますが、医療保険料の5%ほどになる見込みだということです。



 まあ、これ、どうみても、出生率対策として逆効果ですね。

 “おひとりさま”の若者たちは、そもそも結婚することに意欲がありません。

 なのに、未婚のままなのに、健康保険料から徴収される。

 子供がいないのに、お金だけ取られるというのですから、反発が強まるだけでしょう。

 「医療保険料の5%」は大きいですよ。「ひと月450円程度」は低所得者の場合も含めた、あくまで平均、人によっては月千円近く持っていかれるらしいとか。


 どうして国債でまかなわないのだろう。じゃんじゃん発行してるじゃないですか……。

 (できないのにはそれなりの理由があるんでしょう? 知りたいものです)


 未婚のままシングルマザーとして出産するケースもありますが、「それでも子供を育て上げたい」と覚悟できるかどうか、ですね。一人育てるのに大卒まで通算数千万円のコストがかかるというのですから。しかも……


ネットのニュース

●あすから新年度 食品値上げ続く 公的年金や医療保険どう変わる

2024年3月31日 19時31分  NHKnews

新年度となる4月に値上げされる食品はおよそ2800品目に上ることが、信用調査会社の調査でわかりました。値上げ率の平均はおよそ23%となっています。



 「食品の値上げ率が平均23%」というのでは、今春の賃上げはまるで追いつかず、実質マイナスは決定的でしょう。「弊社はソーリのご指導で賃上げしてコストが増えたので商品を値上げします」と、しれっと言い訳されれてもねえ……

 怖いのは、値上げに連動して消費税も上がる、ってことです。


 この国、このままでは一向によくならないって感じがします。

 出生率を上げたければ、未婚の“おひとりさま”が、結婚・出産・子育てに加えて、持ち家を取得する費用を含めて、「老後まで稼いで行ける」という希望が持てなくてはなりませんよね。


 昭和の昔、1960-70年代では、大学進学率が2割程度とかで、子育てしても中卒や高卒で就職して稼ぎ始めるので、そもそも子育てのコストが現在よりも格段に少なくて済んだのではないでしょうか?

 しかし今はもう「なんとかなる」という希望的観測では子供をつくれなくなりました。

 潤沢に資産のあるリッチーな御宅ならともかく、フツーの家では、「なるようにしかならない」どころか「なるようにもならない」のが現実でしょう。


 子育てはコスト。それを解決するには、国民の所得を底上げしなくてはどーにもならないと思うのですが……ね。

 少なくとも、


A:派遣労働の原則廃止(直接雇用による実質給与の向上)

B:消費税の原則廃止(物品税の復活による税制の単純化)


 は絶対必要不可欠に思えてくるのですが……


 この二つを今後も引き摺っていくかぎり、この国は多分、いつまでも良くならないという気がします。


 Aについては、もともと昭和の時代では「ピンハネ」として原則違法とされた雇用方式ですよね?

 やめましょう、低賃金労働者から実質的にピンハネするのは。

 賃金は派遣業者にではなく、全部、働いた本人に渡されるべきです。


 Bについては、「物価が上がれば自動的に税金も上がる」という、低所得者の首を絞める悪魔税制サタンタックスです。やめた方がいいですよ。

 どこかの議員さんみたいに裏金を稼いで堂々と納税しない人もおられるのですから、消費税も、やめちゃいましょうよ? ソーリ様、税収の不足は国債でガバチョと補われてはいかがですか。無限に発行してもドンマイでダイジョーブなんでしょう?


 AとB、ともに1980年頃以前の昭和の時代にはなかった制度です。

 どちらも無しで、高度経済成長の好景気を生み出しました。

 どちらも無しでいいんですよ。AとBが現れてから、30年余り、この国の庶民の生活はいいとこ無しだったんですし。

 戻しましょう、あの元気で明るい昭和の時代に。


 そんなこと不可能だ、と笑うのも結構ですが、ひとつ想像イマジンされてはいかがでは?

「エヴァの無い世界」のついでに「派遣労働と消費税の無い世界」を……


       *


 もうひとつ、下記のCが必要でしょう。


C:“家族愛至上主義”の復活。(親子など家族で経済的に助け合う、合理的な家族像の構築)


 要するに、『世界名作劇場』に見るような、互いに助け合う家族関係を、再構築リビルドすることですね。

 必然的に「年功序列・終身雇用」な感覚の、古臭い伝統的な昭和の家族関係を物置から引っ張り出すように見えますので、「いまどきの多様性は? 台場シティは?」と、某政党の青年政治家たちの破廉恥パーティの言い訳みたいに非難されそうですが、しかしながら、最も血縁の濃い家族同士が同居するなどで様々なコストをシェアして、経済的に助け合うのは極めて合理的ではないでしょうか。

 三世代同居で家族同士が協力できる生活基盤を築けるような施策を講じれば、子育ての困難さはかなり軽減できるでしょう。

 まあ問題は、三世代同居を援助する政策が、まず皆無ってことでしょうね。


 閑話休題あだしごとはさておき

 桜開花で花より団子、ならぬ、鼻から値上げ、の新年度。

 今年もより一層、チマチマとみみっちく節約する生活が続きそうです。



       *



 さて本題に戻って……

 『新世紀エヴァンゲリオン』の一連の作品は、下記の三パーツに分けられますね。


➀TVシリーズ(1995-96)

②TV版の25-26話を新作を加えて映画化した“旧劇場版”(1997-98)

③“ヱヴァンゲリヲン新劇場版”四部作(2007-21)


 TVシリーズは、ラストの第25-26話が哲学的不条理劇なスタイルとなって、ストーリーの論理的結末というものが吹っ飛んでしまいました。視聴者は右往左往。

 しかしその「わけのわからなさ」が、大ヒットにつながりました。


 問題の第25-26話を新作を含む劇場版に仕上げた“旧劇場版”も、ラストの「キモチワルイ」の名セリフに象徴される「わけのわからなさ」が、かえってファンの考察マニア気質を強烈に刺激、全国で考察合戦となり、さらなる大ヒットに。


 この “旧劇場版”とは、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』のこと。

 第1話〜第24話の総集編である『DEATH』(デス)と、新作された第25話『Air』の前半『REBIRTH』(リバース)からなる2部構成で、1997年に公開されました。

 そして……

「『DEATH』の再修正版『DEATH (TRUE)²』と第25話『Air』、第26話『まごころを、君に』の3編を合わせた、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』が1998年3月7日に上映された。」(ウィキペディア)わけです。


 これがまた、混乱の元。

「『DEATH』編は、後に修正版『DEATH (TRUE)』(WOWOWオンエア版)と再修正版『DEATH (TRUE)2』(1998年公開『REVIVAL OF EVANGELION』版)が公開され、VHS・LD化の際にも再修正版『DEATH (TRUE)2』が収録された。」(ウィキペディア)

「なおVHS・LD版およびリニューアルされる以前のDVDには『REBIRTH』編が収録されていたが、内容が次作の『Air/まごころを、君に』(第25話「Air」)と重複するため、『REBIRTH』編は2003年以降に発売されたリニューアル版DVDには収録されなかった。このため映像ソフトで『REBIRTH』編を視聴することが出来るのは長い間VHS・LD版およびリニューアルされる以前のDVDのみであったが、2015年8月26日に発売されたBlu-ray BOXとDVD BOXに『REBIRTH』編が再収録された。」(同)


 いやもう、どれがどれなんやら……

 ファンとしては、全バージョンを時系列に集めたいのですが、どこの何を買えばいいんだか……で、結局、無定見にあれもこれも買ってしまい(それでも頭の中はカオスでぐるぐる)、エヴァDVDメーカーのマーケティングの手中にすっかりはまってしまいました。


 しかも、21世紀の「③“ヱヴァンゲリヲン新劇場版”四部作」では、さらにもう一回、TV版の前半ストーリーをおさらいする形となり、脳内のエヴァ世界はますます五里霧中。

 というのは、お墓参りのエピソードで、墓標のデザインがTV版とこっちで微妙に違うのはなぜだろう? とか、細かい相違点が妙に気になって、整理がつかないんですよね……


 もう、各種ストーリーがごちゃまぜダンジョンになってしまいました……


       *


 ということで、何が言いたいかといいますと……


➀TVシリーズ(1995-96)

②TV版の25-26話を新作で映画化した“旧劇場版”(1997-98)

③“ヱヴァンゲリヲン新劇場版”四部作(2007-21)


 この三パーツを連結して一本の物語と解釈すれば、エヴァは「シンジ君の父殺しの物語」で終劇となります。

 「エヴァは“父殺し”の物語」という定説にうなずけます。


 しかし三パーツを別々の物語とすれば……

 ➀と②は、全然「父殺し」じゃないんですね。

 作品テーマに対する視点がかなり異なるのです。


 となると、シンジ君が求めた「エヴァの無い世界」の姿も、それぞれ異なってくると思われます。

 「エヴァの無い世界」とは、いったい、どんな世界を言うのでしょう?

 エヴァの無い世界、それは理想郷でしょうか。

 ➀②③それぞれについて、比較検討してみます。



     【次章に続きますね】


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