177●『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)。④未解決事案、『日本沈没』後の主権維持。奥能登が無人化したら何が来るのか?
177●『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)。④未解決事案、『日本沈没』後の主権維持。奥能登が無人化したら何が来るのか?
地震国ニッポンの究極の結末を暗示して一大ベストセラーとなったのが、故・小松左京先生の『日本沈没』(1973)。
日本国民がたいてい知っている、『源氏物語』に匹敵する著名作品ですね。
これ、出版されたその年に映画化されました。
映画『日本沈没』(1973)。
公開は同年の12月29日で、
凄いのは、そのタイミングです。
田中角栄総理(当時)のベストセラー『日本列島改造論』が1972年。
田舎まで道を通し、トンネルを通し、新幹線を通して活性化し、全国の不動産価値をドーンと上げる……という、イケイケアゲアゲの高度成長バブルバイブル。
田中角栄総理(当時)の在任期間である1972~74年、日本列島が「改造ブーム」に沸騰し、地価も物価も高騰し、主婦やサラリーマンが生活苦に卒倒して、たちまち熱が冷める狂乱の時期を、『日本沈没』が駆け抜けていったわけです。
そして田中角栄前総理(当時)が、ついに、ロッキード事件によって逮捕されたのが1976年7月のことでした。まさに真夏の太陽が沈むが如く……
『日本列島改造論』が、我が世の春とばかりにドーンと持ち上がったところに冷水を浴びせるが如くに、『日本沈没』がブームの津波を起こしていったわけでして……
政治とSF、両雄の対決。
結果、『日本沈没』の激震が『日本列島改造論』をズブズブと沈没させるという、歴史的快挙(?)を成し遂げてしまいました。
今、私たちの記憶に残っているのは『沈没』の方ですね。
小説『日本沈没』(1973)はその後、映画にTVドラマに漫画にパロディ小説にパロディ映画へと、瞬く間に領土を広げました。
21世紀に至っても続編の小説『日本沈没 第二部』(2006)、リメイク映画『日本沈没』(2006)、アニメの『日本沈没2020』(2020)、TVドラマ『日本沈没 希望のひと』(2021)……と、もはや“大日本沈没帝国”と呼びたいほどの巨大作品群が形成されるに至りました。これじゃ沈没どころか大陸隆起!
もう、断言できますね。
「沈没しなきゃ日本じゃない!」
*
本稿では、映画の『日本沈没』(1973)と、21世紀にリメイク作品としてヒットした同名の『日本沈没』(2006)を主に扱います。とにかく関連作品群が多すぎて、系統的に整理するのは困難ですので……
*
さて、原作の『日本沈没』(1973)だけでなく映画『日本沈没』(1973)もそうでしたが、ストーリー上、ひとつ大きな「物足りない点」がございます。
そう、未解決の事案、それは……
日本国の主権はどこへ行った?
1973年の原作でも映画でも、ニッポンは完全に100%沈没したのではありません。
ちょこちょこと、わずかな小島が残ったことになっています。
とりわけ、その去就が語られていないのは、沖縄。
残ったのか、残らなかったのか……
弧状列島の沈没範囲のまさに“土俵際”だけに、とりわけ気になりますね。
沖縄が米国から返還されたのは1972年。
晴れて日本国の領土となった翌年に、さっそく沈没話です。
沖縄の皆様には、ちょっとヤな気分かもしれませんが、原作にも映画にも触れられずにスルーされたところが、もっとヤな気分にさせられたかもしれませんね。
残ったのか、残らへんかったのか、どっちやねん、はっきりせい!……の心境ではないでしょうか?
*
映画のDVDを繰り返し見ても、自衛艦内のD計画指令室のスクリーンのアニメ画像では北方領土と沖縄が画面の枠外ですし、沈没した日本列島の最後の俯瞰映像では、雲か霞か火山灰か、もやもやした状態で判別できません。
ああ、沖縄はどうなった!?
というのは、沖縄本島が残っていたら、そこに日本政府を置くことができ、米軍基地の一部を間借りして、当時の陸海空の自衛隊を収容でき、その自衛力をもって、残りわずかな島嶼とはいえ、日本国の主権を維持することが可能になるからですね。
だって、残された貴重な島々と岩礁に近隣の例の某国がやってきて、勝手に旗を立てて埋め立てて飛行場やら基地を作り、“21世紀の南沙諸島化”されたらたまったものではないじゃないですか。
つまり沖縄本島が残れば、小さいと言ってもモナコやアンドラ、ナウルやシンガポールよりも大きい独立国として、十分に主権を維持でき得るということです。
自衛力さえ失わなければ、そこに日の丸が翻り、国家再建も容易になるはず。
……ということは、沖縄も沈んじゃったってことかな?
*
で、沖縄も沈んで、小さな小さな島と岩礁が点々と残る状態だったとしたら……
日本国は自衛力を維持できず、「21世紀の南沙諸島」化は避けられなくなります。
どうすべきか?
窮余の策ですが、「自主的な主権放棄」という手があるでしょう。
日の丸を立てるのをやめるのです。
その代わり他国に軍事占領させる。
第一候補は米国でしょう。
返還前の沖縄、あるいは終戦直後のマッカーサー時代と同じように、日本国は米国に占領されて、米軍に隷属する形で、米国内に(残った島の上に掘っ建て小屋を載せて)傀儡政府を置かせてもらうのです。
え? それって21世紀の今のニッポンと変わらないって?
ま、そういうことでしょうね。
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ことほどさように、「日本沈没の後に日本国の主権をいかにして維持するか」は、大きな課題となります。
これ、「D2.5計画」と呼びたいくらい、肝心かなめのミッションでしょうね。
主権を維持できたら、国連で一票を投じられますし。
*
さて、突然ですが、能登半島地震に戻ります。
被災後一年、五年、十年と経過したら……
奥能登の過疎化は一段と徹底的に進むでしょう。
住民が根こそぎ移転し、無人地帯が広がるのではないかと危惧されます。
石川県のホームぺージにある『能登地域半島振興計画の概要(平成28年2月23日最終変更)=西暦2016年』によりますと、能登半島の人口は……
「人口減少が続いて(過去10年間で7.6%減)おり、今後も、この傾向は続くと予想(今後10年間で11.3%減)されており、特に北部地域での減少は著しいもの(過去10年間で15.5%減、今後10年間で19.6%減)となっている。」
2016年を現在とすると、前後併せて20年(2006~2026)で、北部地域(奥能登)の人口は「計35.1%の減少」が予測されていることになります。
20年間で約35%の減少!?
このまま10年先、2034年あたりには、どうなっているでしょうか。
人口半減か、それ以下に……?
恐るべき数字ではないかと思います。
しかもこの数字、今回の地震を想定していない予想なのですから……
20年~30年先を考えると、奥能登の少し不便な閑村は、シャレ抜きで廃墟殺伐たる無人地帯と化してしまうのでは?
*
奥能登で、広範囲に無人地帯が広がったらどうなるのか?
冒頭の『日本沈没』(1973)のお話を思い返してみて下さい。
沈没しても残った、わずかな島々、そこに日本国の主権を残すことはできるのか?
……といった問題でしたね。
この問題が、近い将来の奥能登に当てはまってくるかもしれません。
仮に……あくまでも仮のお話、私個人の妄想ですが……
奥能登の多くの地域が無人化したとすれば……
大まかに、三つの可能性が考えられると思います。
【次章へ続きます】
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