175●『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)。②避難所の備えは、なぜ、こんなにも不足していたのか?

175●『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)。②避難所の備えは、なぜ、こんなにも不足していたのか?




 “2024能登半島地震”の避難所の様子がTVやネットの映像に映ります。

 そのとき感じられるのは……

 得も言われぬ、悲しき“既視感デジャヴ”。


 いつか見た、懐かしい光景、というべきなのか。


 そう、体育館などにマットや布団を敷いて雑魚寝する風景。

 プライバシーを保つ間仕切りは、あっても段ボールの粗末なもの。


 もう、嘆息するばかりです。

 思い返せば30年近く昔の1995年、阪神淡路大震災。

 あの頃の避難所の風景、そのまま。


 これでいいのか?

 フツーに、いぶかしみますね。

 30年もの間、何一つ進歩していない!


       *


 これ、2024能登半島地震で最大の驚きです。

 体育館の雑魚寝風景、加えて、断水がもたらしたトイレ問題。

 30年前と、まるで同じ。


 そして食糧、まるで足りていない。

 ネットのニュースなどで、避難所で調理ボランティアを引き受けたプロ調理師が嘆いています。個人の支援物資でしょうか、「賞味期限の切れた、古い食材ばかり。廃棄するしかない!」

 ありがちなこととはいえ、このような嘆きがニュースになること自体、避難所に運ばれてくる公的支援の食料品が全く不足していることを物語ります。

 公的な備蓄食品や、新しく搬送されてきた食材が潤沢にあるならば、賞味期限切れの食品は横に置いといて、期限内の食材を使うだけの話なので、調理師さんが嘆くことはなく、ニュースにもならないでしょうから。

 期限切れの食品に頼らなくてはならないほど、食品の補充が乏しいことの裏返しなのだと推察されるのです。「こんなものしかないのか!」という怒りなのですから。


 奇妙なことです。

 雑魚寝問題、トイレ問題、支援物資の不足……

 いずれも、30年前の阪神淡路大震災の教訓ではないですか。


 そして2011年には東日本大震災。

 この時も同じような問題を抱え、同じような教訓を得ました。

 それから13年。

 教訓はなんら生かされていなかった!?

 

 そう考えざるを得ません。


 たとえば、雑魚寝環境を改善するため、体育館のような建物の中に、小型テントをずらりと並べる方式。

 テントの中には段ボールベッド。

 30年前に比べて、多少は進歩したと思われるそんな風景が画面に映ったのは……


ネットのニュース

●金沢「1.5次避難所」新たに開設 高齢者などの一時受け入れ先に

2024年1月13日 19時42分  NHKnews

地震による避難生活が長期化するなか、被災した高齢者などの一時的な受け入れ先となる「1.5次避難所」が13日、金沢市内に新たに開設されました。

金沢市にある「石川県産業展示館2号館」(中略)にはおよそ80個のテントが並べられていて、テントの中には2台の段ボールベッドや毛布が用意されています。



 ようやく13日になって、“近代的”な避難所がお目見えしたわけです。

 しかし、これは被災地ではなく、県庁のある金沢市。

 その画像は物語ります。

 いちおう近代的な避難所のインフラ設備は、ほぼ被災していない金沢市にはあるけれど、肝心の被災地である奥能登にはもともと置いてなかったのだ……と。


 ということは、避難所設備は都市部で充実させ、田舎は手つかずのままだった!?


       *


 いやはや、なんとも……ですね。


 つまり、「奥能登の被災地には、近代的な避難所設備や水・食糧の備蓄は用意されていなかったのか?」という、素朴な疑問です。


 だって、1995年の阪神淡路大震災から、もう30年ですよ。

 その後、2011年の東日本大震災。

 それに加えて、能登半島は幾度となく、震度6クラスの地震に襲われてきました。

 2007年(平成19年)3月25日の、2007能登半島地震。

 そして2022年(令和4年)6月19日と、2023年(令和5年)5月5日に能登地方を震源とする地震が連続して発生。能登群発地震とも呼ばれる一連の地震ですね。


 おいおい……となりませんか?

 これだけ歴史的教訓が積み重なって、しかも一昨年、昨年と震度6に見舞われているというのに……


 それでも、なーんもしてなかったんかい!?


       *


 いや、それは何もしてなかったとは思えませんが、これだけ地震が繰り返されたら、誰だって「この土地はヤバい」となりますよね。

 当然、行政はハザードマップを作って、地域住民に警告していたんでしょうね?

 そして警告だけでなく、指定した避難所の整備と必要備品等の備蓄を進めていたはず……なんですよね?


 そうじゃなかったんですか?


 ここのところ、今後、専門家が検証することになるのでしょうが……

 14年前の“2007能登半島地震”では「全壊家屋686棟」という大きな被害を出し、能登空港は滑走路に亀裂、能登有料道路は路肩の崩落など。

 死亡者は一人でしたが、「石川県・富山県を中心に負傷者が356人出た。震源を中心に家屋倒壊・道路崩落や、電気・ガス・水道などのライフラインの寸断が発生し、震源地に近い沿岸部や富山県の氷見漁港などでも液状化現象が発生した。地震によってエレベーターが緊急停止し、エレベーター内に人が閉じ込められる事故も相次いで発生した。」(ウィキペディアより)


 これだけ大きな被害を出した挙句、2022、2023年と震度6を繰り返したら、「次は震度7か?」くらいの恐れが「想定内」に入っていたはず……だと思うのですが?


 で、何が言いたいかと言いますと……


 これって、ほぼほぼ、人災じゃね?


       *


 地域防災と避難所の拠点は、田舎の場合、まず小学校でしょう。

 体育館があり、給食のための調理配膳の設備があり、地域で守るべき小学生以下の子供たちにとって、滞在しやすい場所でもありますから。


 それならば、校舎の耐震化とともに、水・食糧の備蓄を進めていたでしょう。

 それだけでなく、トイレ対策として、当初からプールの水を利用できるように、あるいは屋根から雨水を集めてタンクに溜めて流せるように配管したトイレを特設しておくべきでしょう。

 電源対策として、免振構造の土台にソーラーパネルを設置して日ごろから使用しておくとか、市役所と結ぶ通信設備を充実しておくとか、ですね。

 体育館の中に、仮設ベッドとか、間仕切りのパネルを多数ストックしておくとか。


 そういった備え、ほとんどしてなかったんだろうなあ。

 していたら、あんなに困ることはなかったはず。

 最低限の電源が確保され、トイレは流れて清潔さを保つ。

 「備えていたから、憂いなし」と、みんな自慢していたでしょう。


 そう考えると、いささかあきれるとともに、ゾッとします。


 あれだけ地震が繰り返されてきたのに……


 結局、何もしなかった!?


       *


 いや、備えてはいたのでしょう。

 ただし県庁所在地とか、市役所とか、都市部の限られた場所に。

 そして奥能登の田舎の小学校あたりには、もしかして、何もしていなかった?


       *


 不気味な疑問が頭をもたげてきます。

 度重なる地震。

 なのに、驚くほどの、“備えの無さ”。

 金沢にはあったけど、奥能登にはなかった、屋内テント。


 遅くとも2007年の能登半島地震の被害を分析して、奥能登の村々に“避難対策”がなされていたものと思っていたけど……どうも、そうではなかったような……


 ということは……

 奥能登は17年前の2007年以来、行政から、ある意味、“見捨てられていた”のではないでしょうか?

 もちろん知事をはじめ、行政の誰一人として、そうとは認めないでしょう。

 しかし、、最後は、“見捨てていた”のと同じ結果を招いてしまったのでは?

 そんな懸念がぬぐえないのです。


       *


 奥能登は概して、過疎地ですね。

 年金暮らしの高齢者が多く、人口は激減、つまり選挙の票にならない。

 二次産業、三次産業が少なく、税収が少ない。

 政治家の関心が薄れやすい土地柄なのでしょう。

 加えて、珠洲市は1970~90年代に原子力発電所の誘致問題で揺れ、結局、反対派が優位に立って断念に至った経緯もあって、以降、なにかと政治的に“冷遇”されることになったのかもしれませんが……

(もっとも、原発が実現していたら、今回の震度7によって、第二のフクシマとなった可能性、あるかもしれませんが……)


 今後、過疎化も解消せず、いずれは誰も住まない土地が、特に山間部に広がると予想されることで、奥能登に対する行政の関心がますます薄れ、防災に税金をかける余裕がなくなっていったのではないかと思いますが……


 もしもそうだとすると、行政のさまざまな関心の低さが、このたびの避難所の窮状を招く一因になったのかもしれない……そんな、もやもやとした気分が、付きまとってくるのです。


いずれ、検証されるべきでしょう。

① 地震の警告は十分になされていたのか。

② 避難所など防災の備えは十分になされていたのか。

③ 備えは、役に立ったのか?


       *


ネットのニュース

●朝食はせんべいだけ、断水続きトイレが使えない日々 珠洲、輪島の避難所で支援者が実感した過酷さ

2024 1/15(月) 17:02配信 J-CASTニュース

停電と断水が、珠洲市や輪島市の広範囲で解消されないままだ。食事やトイレ、入浴に手洗いといった生活の基本が成り立っていない。輪島市の避難所の一部では、「朝食はせんべいやビスケットだけ」という話だ。

トイレは、便器に大型ポリ袋をかぶせて用を足し、凝固剤を入れて処理する非常用のものが今も使われている。だが、使用経験がなく使い方を知らない被災者が少なくない。結果、トイレが汚れて衛生面が悪化している。仮設トイレの設置は進んできたが、入るときに段差があって、足が不自由な人や高齢者には不便だ。

真冬の寒さも、避難者を苦しめる。指定避難所では、段ボールベッドの数が不十分で、板張りの床の上に畳1枚を敷いて寝起きしている。




          【次章へ続きます】




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