『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)

174●『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)。①陸の孤島、奥能登は見捨てられている?

174●『2024能登半島地震』と二つの映画『日本沈没』(1973)(2006)。①陸の孤島、奥能登はすでに見捨てられている?





 2024年1月1日午後4時10分、能登半島地震、発生。

 石川県能登半島にある鳳珠郡穴水町の北東42 kmを震央とし、地震の規模はマグニチュード7.6、最大震度は、石川県羽咋郡志賀町で観測された震度7とされます。

                   (以上、ウィキペディアより)


ネットのニュース

●「西日本は南海トラフ発生前の地震活動期」能登半島地震(中略)危険度「最高ランク」の活断層とは

2024年1月11日(木) 10:00 TBS NEWS DIG 中国放送

2024年の年明け早々、能登半島を襲った最大震度7の大地震。これまでに死者は200人を超え(213人・11日午前9時現在)、今なお断水や停電などで復旧のメドが立っていない地域も少なくありません。

今回の地震域付近では、2023年5月にも震度6強を観測するなど、およそ3年にわたって活発な地震活動が続いています。


      *


 最も迅速な対応をなさったのは、陛下でありましょう。

 宮内庁は1月2日に皇居にて執り行う予定であった「新年宮中一般参賀」の中止を発表しました。

 災害の様相をあなどることなく、国民に寄り添った的確な判断をなさったことが推察されます。


       *


 私は関西在住ですが、2日の朝、多数のヘリコプターの爆音で眼が覚めました。

 陸海空の垣根を超えた“災害自衛隊”の出動……、隊員の皆さんのご健闘を祈るばかりです。


 それから二週間……

 1月14日(日)現在、日本国首相は「能登半島地震で大きな被害を受けた石川・輪島市に到着し、安否不明者の捜索などに従事する自衛隊員らを激励した。」と報道されています。

 しかし現状は……


ネットのニュース

●孤立状態 依然2500人余 孤立解消した集落も“状況変わらず”

2024年1月11日 20時22分  NHKnews

石川県によりますと、11日午後2時の時点で、輪島市、珠洲市、能登町の少なくとも22地区の2500人余りが、道路が通れなくなるなどして依然、孤立状態になっているということです。



 それら孤立地帯に対しては、おそらく陸上自衛隊の皆さんが徒歩で物資輸送を行っておられるのでしょう。また消防・警察、海上自衛隊や海上保安庁のバックアップも、元日以来休むことなく続いていて、涙ぐましいほどのご尽力に感嘆するしかありません。


 被災から二週間を経てなおも孤立している地域には、明らかな特徴がみられます。

 北を上とする地図を見ますと、能登半島は、左下から右上へと竜が鎌首をもたげてカパッと口を開けた形に見えます。

 この竜の口と喉元に当たるのが、七尾市和倉町の和倉温泉。

 著名な観光地であり、地形的にボトルネックとなるこの場所を境とした、半島の北半分、“奥能登”と称される地に、多数の孤立地区が散在しています。

 前述のNHKnewsの地図(11日現在)を見ると、輪島市・珠洲市・能登町、この範囲で700人から10人程度の大小さまざまな孤立状況が、20か所あまりも点在しています。


 半島の「ボトルネックの北側:奥能登」が危機的状況にあるわけです。

 

 今、奥能登では、どのような避難生活が営まれているのでしょうか?

 

       *


 被災直後、ネットでは「まずは自助、共助で何とかするものだ、公助はすぐには来ない」といった、上から目線の教訓めいた表現が散見されました。

 お定まりの「自助・共助・公助」の順番論ですね。

 しかし現地の映像を見て、いささかの憤りも感じます。


 家が潰れ、家族が下敷きになっていて、食料も衣類もなく、着の身着のままで真冬の過疎地に投げ出され、電気も水道も、そして携帯すら通じない状態で、自助も共助もへったくれもないでしょう!

 これ、一秒でも早く「公助」を届けなければ、刻一刻、人が死んでゆくばかりなのです。


       *


 「公助」に関して言えば、「初動が遅かった」との批判がネットに渦巻きました。

 実際、遅かったのかどうか、今はまだ判断材料がありませんが、とても気になるのは……


 石川県知事の対応が、まるで伝わってこなかったことです。


 知事は被災当事者の一人であるはず。

 ならば、被災後二週間など待たずして、一日も早く現地視察して現況を把握し、被災家屋をバックに、TVで国に対して訴えられてもよかろうと思うのです。


 「万博はいいから、こっちを助けてくれ!」と。


 もちろん大阪府知事は反発なさるでしょうし、「二者択一ではない」との主張も、ごもっともなことと思います。

 でも、多くの国民は薄々感じ取っているでしょう。

 「じっさい、二者択一じゃん!」と。


 万博を中止か延期すれば、その資金と資源を、震災の復興に回せる。


 これは明白な事実だと思います。

 今回の地震が「激甚災害」に指定された以上、国家レベルで復興対策を講じるべきであり、その一手として、万博の中止か延期が語られても、不思議ではないように思います。

 まあ、現実には諸般の政治的事情で、万博の中止も延期もあり得ないのでしょうが、そんなことは百も承知で「万博はいいから、こっちを助けてくれ!」と叫ぶくらいのパフォーマンス力が、石川県知事には欲しかったなあ……と思うのです。

 「二者択一ではない」と非難されたら、言い返せばよいのです。

 「何言ってるんだ、こっちは人が死んでるんだぞ!」


 しょせん役に立たない議論……であることは、それこそ百も千も承知。

 何が言いたいかと言いますと……


 万博を蹴っ飛ばす勢いで、知事が猛然として、被災地の救援を全国に訴える。


 本来、そうしなくてはならないほど、事態は急迫し、そして窮迫していたのではないか?

 被災直後のNHK女性アナウンサーの悲痛な避難勧告。

 あの緊迫感は本物でした。

 石川県知事も、あのアナウンスをお聴きになっておられたはず。

 それならば……

 絶対的に貴重な最初の72時間、知事はどこにおられて、何を発信されたのか?

 刻一刻と人が死んでゆく、この時間帯にこそ、知事の勇断とご活躍が必要とされたはずなのですが……



 ……ということです。


       *


ネットのニュース

●自衛隊派遣、増員が容易でない背景 能登半島地震と熊本地震の差

毎日新聞 2024/1/7 12:18(最終更新 1/9 20:35)源馬のぞみ

石川県能登半島地方を震源とする地震に対する自衛隊派遣を巡り、野党の一部から「逐次投入」「初動が遅い」といった批判が出ている。

政府は部隊の増強を重ね、6日までに5400人態勢に拡充したが、2016年の熊本地震では発生から5日後に2万2000人を派遣した実績があるだけに、派遣規模に限れば見劣りの感もある。数字上で差が生じた背景には何があるのだろうか。

自衛隊は、地震発生翌日の2日までに2000人態勢を構築し、ヘリによる人員や物資の輸送、救助活動を実施。3日は4600人態勢で、重機を使った陸路の修復や給水・給食など生活支援にも活動を広げ、6日までに5400人規模に拡充した。

(中略)一方、最大震度7を2度観測し、震災関連死を含め熊本、大分両県で225人が亡くなった熊本地震では、発生翌日に自衛隊員1700人を投入。2日後に1万5000人、5日後に2万2000人と一気に派遣規模を引き上げ、日本の災害対応として初めて、被災地からの要請を待たずに物資を緊急輸送する「プッシュ型」の実現に貢献した。

こうした経緯を踏まえ、立憲民主党の泉健太代表は5日、「自衛隊が1000人、2000人、5000人という逐次投入になっているのは遅い」と批判。



 2016熊本地震の死亡者225人。

 現在のところ、2024能登半島地震の死亡者は11日時点で213人。

 人的被害は、ほぼ同等かそれ以上になると思われます。

 しかし自衛隊の投入規模は……


 2016熊本地震では、発生翌日に自衛隊員1700人を投入。2日後に1万5000人、5日後に2万2000人……

 2024能登半島地震では、発生翌日の2日までに2000人態勢、3日は4600人態勢(中略)、(4日後の)6日までに5400人規模……


 熊本県の2万2000人に対して、石川県の5400人。


 この差、シロウト目にも、いささか大きすぎはしないでしょうか?


 「自衛隊が1000人、2000人、5000人という逐次投入になっているのは遅い」といった野党の批判に対して政府は、「道路が寸断されていて、大規模投入しても被災地に届かない」から、現状で適切である……と説明しています。


 そうはいっても、熊本では「2日後に1万5000人」、石川では「1月3日は4600人」というのでは、いくらなんでも能登半島の広さを考えたら、員数の規模が小さすぎるのではないでしょうか。

 なんとなれば、最初の72時間に多数の救助員を、ヘリボーンででも一斉にドーンと送り込んで、生き埋めになった人々を助け出さなくてはならないはず。


 それが、被災後48時間ほどで熊本では「1万5000人」、石川では「4600人」。


 少なくはないか。

 それで足りたということでしょうか?



 熊本地震の例を参考にするなら、二日目で「一万人!」くらいブチ上げてもいいはずでしょう。熊本地震との大きな違いは「陸路がダメなら海路でヘリを使って」となるはずですし、それら艦船も含めて「一万人!」となっても不思議はなさそう。


 これは自衛隊の問題でなく、自衛隊に依頼もしくは命令する立場の人々の、状況判断の問題です。

 自衛隊は命令が無くては動けません。

 それだけに、「1000人」と言われたら1000人しか動けず、「一万人」と言われたら一万人の動員をかけられるでしょう。それなら「一万人」の範囲で適切に人員を配分して救助活動すればいいだけの話です。

 自衛隊の動きは今回も迅速でした。陸路がダメとわかった時には、舞鶴から護衛艦(たぶんヘリ発着可能な)が出航し、広島の呉では輸送艦おおすみが出航準備に入ったでしょう。

 「言われなくても動ける」範囲のことは、率先して動いておられたのではないかと思います。


 ならば、なぜ、被災後何日も過ぎてゆくというのに、自衛隊の派遣規模がかくも少ないままなのでしょうか。


 あくまで私の個人的な感想ですが……


 要するに、“県知事の気力と政治力と胆力の差”だったのではないか??


 つまり、2016年の熊本県知事に対して、2024年1月における石川県知事のガッツとパワーとスタミナが、決定的に小さかったのではないか??


 そんな気がしてしまうのです。

 あ、あくまで私個人の感想であり、ホンワカと感じている印象にすぎませんが……


 だって、石川県知事の存在感、見えなさすぎはしませんか?

 特に最初の72時間、ステルスというか透明人間というか。

 

       *


 それやこれやから、私は妙に不吉な予感を抱いてしまうのです。


 震災との戦いはこれから何年も続きます。

 能登半島で代表的な観光地である、七尾市和倉町の和倉温泉までは、積極的な復興施策が実施されるでしょう。

 政府はその観光資源の維持のため、大金を投じるでしょう。


 しかし、問題は、さらにその北にあります。

 ただでさえ交通が不便で高齢者の多い過疎地ばかりで、現在も二十あまりの孤立地が集中する、“陸の孤島”と化した奥能登は……どうなるのでしょうか。


 石川県知事は、本当に、奥能登を原状復帰するおつもりだろうか?


 そこに、あくまでシロートとしてですが、かなりの疑問を抱くのです。


 奥能登は結局、県政と国政から、見捨てられるのではないか?


 いや、すでに十七年前から、見捨てられていたのではないか?




     【次章へ続きます】


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