166●『ゴジラ-1.0』の疑問点と続編を妄想推理する。⑬いてコマセ! ゴジラ・ハラキリ作戦。
166●『ゴジラ-1.0』の疑問点と続編を妄想推理する。⑬いてコマセ! ゴジラ・ハラキリ作戦。
ゴジラ撃滅挺身隊の募集は、大人気であった。
日本政府が隠匿している金塊の力で、目の玉が飛び出る高報酬を約束したのだ。
もちろん生命保険も傷害保険も雇用保険もついている。
全員が、国連に雇用される形をとったのだ。
だれもが戦意旺盛、やる気満々であった。
そりゃあ、無報酬のボランティアよりも、集まる人材の質が違う。
だいたいみんな、命知らずの、カネの亡者であったのだ。
金塊は惜しげもなくジャブジャブ使われた。
どうせ、ずーっと元をたどれば、マッカーサーの隠し金なのである。
ハラキリ作戦、発動。
東京湾外の海上に胸から上を出してプカプカと浮かぶゴジラ。
ゴジラ撃滅挺身隊がポンコツ駆逐艦数隻で接近します。
無人駆逐艦で威嚇することで放射熱線を吐かせ、ゴジラが次発装填するまでの時間を稼ぐと、後甲板がスロープになった一等輸送艦二隻でゴジラの腹に特殊装備を巻き付けます。
これは、フロンや炭酸ガスのボンベではなく、オール機雷。
海中に浮かべる
着発信管でなく、電気信号で起爆する電気信管に交換したものです。
これを十数セット、
およそ百個の機雷で構成されたデンジャラスな腹巻が傲然と爆発。
その爆発力はゴジラの腹の中心部へ向けて、爆縮効果を発揮します。
ゴジラの内臓を潰し、腹部に穴を開けるのが目的です。
だから、ハラキリ作戦。
腹に穴が開いてしまったら、おそらく放射熱線の吐き出しは困難になるでしょう。
腹を裂かれたゴジラに向かって、同時に魚雷攻撃。というか、魚雷を発射してから命中直前に機雷の腹巻を起爆するというタイミングですね。
米海軍の魚雷艇、そして浮上状態の潜水艦から数十発の魚雷が、腹を裂かれたゴジラに命中します。
並行して、日本側から参加している海上挺身隊が、人間魚雷回天を放ちます。
ただしこれは、無人化した回天。
モーターボートの左右に一本ずつ回天を装着し、ゴジラに向けて定針したら、回天を起動し速度を上げる。回天の搭乗員はモーターボートに移乗、両舷の回天を切り離したのち、反転離脱します。
通常の93式酸素魚雷は炸薬量が0.78トン、対して回天は1.5トンとなり、敵艦に命中すれば、戦艦でもなければ一撃轟沈の威力があります。
これが何本も、ゴジラの腹の裂け目めがけて殺到。
米軍の魚雷も合わさって、ゴジラの腹部と内臓をぐちゃぐちゃに吹き飛ばします。
同時に、空中攻撃。
B25の75ミリ砲、そしてP47サンダーボルトのロケット弾攻撃。
日本側は戦闘機・鍾馗Ⅱ型乙が40ミリ噴進弾を、また双発の屠龍が機首の37ミリ砲を放つ。
そしてポンコツ駆逐艦も、艦首尾に米軍の40ミリ4連装砲を搭載、その弾丸を雨あられと撃ち出します。
これらの攻撃はみなゴジラの頭部に集中されました。
ゴジラの目と耳と鼻を潰すことで放射熱線の照準を失わせ、ゴジラの方向感覚を狂わせるのです。
そして、海面にたなびく煙幕を割って、全長160m、排水量二万トンの大型艦が姿を現します。
標的艦・摂津。
これを“質量兵器”として使います。
終戦時、呉軍港で浸水着底していたものが、復員船に利用するため修繕され、速度十ノット程度でどうにか航走できるようになっていました。(という設定)
艦齢30年という老朽艦ながら、本来は戦艦として誕生、そして戦前に武装を撤去し、演習爆弾に耐える装甲を施して、戦闘訓練の的となる標的艦として再就役していたものです。
標的艦・摂津の最大の特徴は、日本海軍で唯一、ラジコン操艦が可能な“元戦艦”であること。
ペアを組む駆逐艦・矢風から電波誘導で走らせることができるのです。
標的艦・摂津は無人航走でゴジラへ突進。
その艦首には、装甲板で矢印形に巨大な
ポンコツ艦なので速力が不足していますが、そこはタグボートの決死隊が、摂津の尻を押したり、舷側からロープで牽引したりで、初速を与えます。十分な速力すなわち運動エネルギーを得たら、摂津から離れて避退します。
標的艦・摂津はゴジラの腹部に開いた傷口の穴に艦首を突入、元戦艦にふさわしい巨大な質量でゴジラを串刺しにしたまま、埋め立て地の浅瀬へと押しやり、そこでゴジラにのしかかって固定します。これって、痛いだろうなあ。
次いで、ゴジラの頭部を破壊し続けるとともに、ゴジラの体を細かく粉砕します。
陸上から、トラックにカタパルトを載せた急造ランチャーから、人間爆弾・桜花を無人ロケット兵器として発射します。トラックにはドイツの誘導爆弾フリッツXやヘンシェル Hs 293の技術を応用した、簡易なラジコン誘導装置を搭載します。
フリッツX並みにピンポイントな命中は無理でも、命中率を上げることには寄与しており、桜花の弾頭が1.2トンと巨大であったため、ゴジラに命中すればその肉をえぐり取って空中へ高く飛散させるほどの威力がありました。
ゴジラの放射熱線を封じ、動きを停めたら、あとはひたすら火葬です。
B29の焼夷弾爆撃、P47サンダーボルト編隊からはナパーム弾。
ゴジラの細胞は深々度潜水のため大量の酸素分子を含んでおり、油をかけて火を点ければ、基本的によく燃えます。
盛大なBBQとなりました。
焼きに焼いて、灰にする。
これが、ゴジラ・ハラキリ作戦の仕上げです。
埋め立て地の浅瀬に乗り上げたまま、元戦艦の摂津に串刺しにされて動けないゴジラは、“姿焼き”の猛火の中に滅んでゆきます。
ゴジラの攻撃力がなくなったら、小さなお肉も見逃さないように、火炎放射器を背負った人海戦術の手作業で、丹念に焼き払ってゆきます。
このとき、ゴジラの肉塊を盗もうとするソ連のスパイがやってきますので、これもついでに火炎放射で追い払うことになります。
全てを灰にして、作戦は終了します。
*
しかし、港の岸壁に戻ったゴジラ撃滅挺身隊を待ち受けていたのは……
手に手にプラカードを掲げた群衆。
「ゴジラがかわいそうだ!」
「ゴジラ虐殺はホロコーストだ!」
「火あぶりの刑は残酷すぎる!」
「絶滅危惧種を守れ!」
「怪獣愛護は世界の平和」
そして岸壁に並んだ屋台には、「ゴジラ肉の
どこから拾ってきたのか、ゴジラの肉片を集めて、すき焼き風雑炊を商っている。
食べてみると案外うまいらしい。
ただ、鍋は独特の輝きを放つ。
青白いチェレンコフ光に。
【終】
*
【次章へ続きます】
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