151●『超時空要塞マクロス/愛・おぼ…』⑨…お幸せにグローバル艦長!
151●『超時空要塞マクロス/愛・おぼ…』⑨…お幸せにグローバル艦長!
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さて引き続き、劇場版でなくTVシリーズについて振り返ってみましょう。
マクロスは恋のアニメでもありましたね。
ヒカル、未沙、ミンメイの三角関係を中心に、いくつかの恋の悲喜劇が回転木馬のように
幸せなのはマックスとミリア。
敵味方の国際交際ゆえに、最初のデートは夜の公園で命がけのチャンバラ。
しかしながら、一目ぼれからゴールインまでの速いこと、文字通りマクロスピードでしたね。考えてみれば、周囲の人に反対する時間を与えずに電撃結婚してしまおうという、マックスの作戦だったのかも。
二人の結婚を許可したグローバル艦長、懐の広さを見せましたっけ。
長女コミリア・マリアにも恵まれ、マクロス全編で最高のおしどり夫婦となりました。めでたし、めでたし。
◎教訓:恋愛は第一印象が肝心。
ロイ・フォッカーとクローディア。
フォッカーの死によって分かたれる、悲劇のカップル。
でも、生前の思い出はクローディアにとって幸せそのものだったことが、第33話『レイニー・ナイト』に語られます。
いいやつでしたね、フォッカー君。
明らかに致命傷で、手遅れであることを悟りながらも、彼女との最後の時間にはギリギリ間に合わせました。
彼女のパインサラダを食べ損ねてしまった彼に、黙祷……
クローディアが可哀想で仕方ありませんが、第28話以降、戦後二年過ぎたこともあってか、元気を取り戻して、たそがれる未沙を慰めたりと、いくらか心の余裕が出てきたようです。
◎教訓:帰宅の時間は守ろう、寄り道しないこと。
カムジンとラプラミズ。
仁義なき
ブリタイ司令を「ブリタイの
ナレーションでも「カムジン一家」と呼ばれる極道の親分。
しかし、ラプラミズとの関係が意外と純真で、悪漢のくせに妙なところで憎めない気っ
「味方殺しのカムジンよ」と自分で言ってイキがるところが可愛く、おそらく一家の舎弟たちも、あれで結構、親分のことを慕っていたのかもしれません。
平時でなく乱世でこそ、実力を存分に発揮できる人物だったのですね。常在戦場、気分はいつも関ヶ原。
平和的な建設業にでも転身できていれば、きっと大成したはず、残念です。
彼の失敗はたぶん、内縁の妻ラプラミズにいいところを見せてやろうとカッコつけたこと。
よーし、出航祝いの景気づけにマクロスぶっ潰しちゃる……とでも豪語しちゃったのではないでしょうか。
しかしこれもプロトカルチャーの“文化”がもたらした愛の形のひとつ。
ニッポンの終戦直後でも、アプレゲールと呼ばれる、自由奔放で歯止めの効かない男女が出現しましたし、荒くれたお兄さんたちが街なかで「特攻隊くずれ」を自称して乱暴狼藉……といったケースもあったそうな。事実かどうかは知りませんが。
マクロスの“戦後”を彩る、これも悲劇のカップルと言えましょう。
〈別作品で二人が生き残った設定もありますが、ここでは死亡説をとります〉
◎教訓:愛は暴走すると心得よう。
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最終話で、もうひとつ、幸せなカップルが誕生しましたね。
マクロス艦のブリッジは、グローバル艦長を除いて、なぜか若い女性ばかり。
勝手ながら「艦橋ハーレム」と呼ばせていただきます。
戦闘艦におけるこの男女比は極めて特異で、ニッポンのアニメ史の中でも、他に類を見ませんね、たぶん。
『宇宙戦艦ヤマト』(TVは1974)の艦橋は、この真逆。森雪嬢のほかはみんな男かロボットでしたっけ。体育系男子部室に美少女マネージャーが一人でいるようなもので、HなAVなみに恐ろしく危険な環境だったのではないかとお察しします。
ヤマトが事あるごとに波動砲をブッ放しているのは、下半身に蓄積した欲望のウサ晴らしだったのかも。それと森雪嬢のスカートにすぐ手を出すアナライザーは、ロボットだから罪にならないのですね。周りの男たち、それを眺めるばかりで、止めないんだから、もう……
◎教訓:波動砲よりもミンメイの歌があれば、ガミラスはあっさり降参した?
『機動戦士ガンダム』(TVは1979)のホワイトベース艦橋は、男2&女1くらいの構成比でしたっけ。にしてもよく働くのは女性ばかりで、とくにミライさんはコロニーの出入港から敵弾回避まで絶妙の操艦を一人でこなしていました。
男はどうにもパッとせず、ブライト君はなにかと「スタンバっておけ」とか「弾幕が薄い!」とか偉そうに命令する割には、自ら舵を取ってみせたり、対空砲を撃ってみせたり、白兵戦を率先したり、MSパイロットの苦労をねぎらったり、といった現場寄りの積極指導が少なかったような……根っからの管理職だったんですね。
◎教訓:やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
『無責任艦長タイラー』(1993)の駆逐艦そよかぜの艦橋は、男女比が半々くらいでしたか、同好会的な
◎教訓:道の
ということで、マクロス艦の艦橋はグローバルの天国。
第一話からして、パイプに火を入れようとするたび、「艦長ここは禁煙です!」と可愛い声でたしなめてもらえる嬉しさよ……
戦いは苦しいものでしたが、ヤマトの真田さんみたいな部下がピンポイント・バリアーを発明し、それを未沙がダイダロス・アタックに実用化するなど、部下の才能に恵まれて切り抜けることができました。あまりにも強大な敵に対する絶望的な戦いを生き延びた、ニッポンのアニメ史で最も幸運な艦長ではないでしょうか。
そんなグローバルの強運も、“戦後”はしぼんでしまいました。
愛用のパイプをプレゼントしてくれた最愛の妻が地球在住だったため、ゼントラーディの総攻撃で死亡、男やもめになってしまったのです。
しかも新統合軍総司令なんか引き受けたものだから、マクロスの艦橋勤務は廃業、新しく設置したコントロール室はお局様の未沙が取り仕切り、自分はといえば、ゼントラーディとの交渉に追われ、毎日顔を合わせるのはエキセドルばっか……となっては、なんとも潤いのない、殺伐な日々にクサるしかありません。
そこでグローバル、艦橋ハーレムの復活を工作します。いや、したはずです。
懐かしの日々、乙女たちの花園に男は自分ただひとり、未沙さえ留守にすれば三人娘はきゃぴきゃぴ楽しくはしゃいでくれるし、黙って座ればお茶もコーヒーも出てくるゴージャスさよ。
この職場環境を取り戻すうえで、最大の障害は……そう、早瀬未沙少佐!
彼女が転勤すれば、その椅子に自分が座り、艦橋ハーレムの天国よ再び、である。
つまり、最終話における未沙の人事異動は、グローバルが仕組んだ、“栄転という名の左遷”だったのです!
なんといっても“太陽系外左遷”ですから、後日、未沙がグローバルの艦橋ハーレムに舞い戻る恐れはありません。
あとは定年退役まで乙女たちに囲まれて、リッチで穏やかな日々を送るのみ……
そうなれば、今どきのアニメでお約束の、マクロス温泉でまったりと憩うひとときや、マクロスプールで水着美女を愛でるとか、マクロス夏祭りで盆踊り大会(『マクロス・ザ・コンプリート』のCD3のトラック19は絶対にマクロス音頭だ!)と、今こそ平和な文化を満喫しようではないか。楽しいイベントあればこそ、巨人たちも地球生活になじんでくれるであろう。
いや本当に、そんな回も欲しかったですね。
ブリッジ三人娘がハッチャける回ですな。
ワレラ、ロリー、コンダも交じってね。
今からでも遅くないからОVA希望。
しかしそんなグローバルのささやかな野望も、カムジンの特攻でポンコツマクロスがスクラップマクロスにされてしまったので、ご破算となりました。
カムジンの野郎……ッ! と悔やんでも仕方ありません。
それにしても最終話のマクロス艦は立派でした。ポンコツの身に鞭打って浮上、死力を振り絞って主砲発射、最後のお勤めを果たして瓦礫の山と化してゆく、まさに武蔵坊弁慶の最期のような、その雄姿の
で、艦橋ハーレム復活計画があえなく頓挫するグローバルでしたが……
カムジンの主砲でコントロール室が大破、続く特攻に備えて、未沙たちが艦橋に駆け上がったとき、いち早く配置についていたのは、グローバル自身と、そして……
懐かしい艦橋をあらかじめ整備して、いつでも稼働できるように、グローバルと共に働いていた彼女がいつもの席についていましたね。
新たなカップル公表の瞬間です。
妻を失った男、そして恋人を失った彼女。
二人は“戦後”のここ二年間、総司令とその秘書役か事実上の副官として、ペアを組んでいたのですね。そして誰も訪れなくなった艦橋こそ、二人のささやかな密会の場だったのです。
グローバルが未沙に人事異動を告げたとき、ヒカルとの仲が筒抜けだったことを知った未沙は心臓ドッキリの真っ赤っかでしたが、なるほど、艦長に耳打ちした情報源は彼女でしたか。
おめでとうグローバル!
TV版マクロスの最終話で成立した、物語最後のカップルでした。
やはりグローバルは強運でした。
艦橋ハーレムの再建を諦めるかわり、献身してくれる彼女を得たのです。
ビバ! クローディア!
【次章へ続きます】
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