126●『ゴジラ-1.0』の物語を妄想推理する。:②ヤツは東京のどこで暴れたのか?
126●『ゴジラ-1.0』の物語を妄想推理する。:②ヤツは東京のどこで暴れたのか?
それでは、1945年の10月から年内の12月の、ある時点でゴジラが東京を襲った場合、どのような被害があり、人類との間にどのような闘いが生じるのか、おおまかなストーリーを妄想してみることにしましょう。
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30秒ほどの予告映像では、建物の一部が破壊された銀座の時計塔(服部時計店だが占領軍に接収されてPX:売店にされている)ビルが映り、そののち、画面いっぱいに瓦礫の山、「危険立入禁止」の立札の前に集まった野次馬、そして瓦礫の山の中に二人ばかり、透明の雨合羽みたいな防護服(?)を着た、調査員らしき人物が見える。どうやら放射能を警戒しているらしい。
わかることは……
① 瓦礫の山はゴジラが通過した跡であり、ゴジラはなぜか、銀座の時計塔ビルを完全に破壊することなく、部分損壊にとどめた。
……これはオトナの事情でしょう。ここで時計塔ビルを全壊させると、1954年のゴジラ第一作でファーストゴジラが壊す時計塔ビルが存在しなかったことになってしまいますから。タイムパラドックスを防止して、第一作との整合性をはかるために、
② どうやら、ゴジラが放射能を発するということが、物語のかなり早期から判明しており、ゴジラが現れて通過した直後か翌日に、放射能を調査する専門家が現場に駆けつけていると思われること。
……ということは、巨大なゴジラが都内に出現する以前から、ゴジラの存在と放射能との関連性を知る博学な人物(第一作の山根博士のような人、出演:吉岡秀隆さんだったらいいな!)がいて、ゴジラ出現の直前に警告を発していたと思われます。
さてそこで、予告映像の別の場面を見てみましょう。
ほんの一瞬ですが、ビルの屋上らしき平らな場所に五人の男たちがいて、突如、屋上の床に裂け目が走って何かが爆発したように噴き出す場面があります。
その背景に見える建物の一部は、どことなく日比谷公会堂のような印象ではありますが、日比谷公会堂の実際の屋上は緩やかな傾斜の屋根タイプなので、別の建物かもしれません。
ここは私のムリコジ(無理矢理のこじつけ)ですが、一応「日比谷公会堂」と仮定します。
五人の男たちのひとりは腕章をして写真のカメラを持っているようです。
男たちのそばには、どこかから電源ケーブルを引いた、何らかの装置があります。
録音マイクに似たような装置も見えますが、放射能測定のガイガー計数管かもしれません。
以下の可能性が考えられます。
①何らかのイベントがあり、その取材のためにラジオ局(当時TVは無し)の録音スタッフが、写真カメラマンを随伴して来た。
②建物の状況を不審に思った科学者が、放射能測定装置を携え、新聞記者とカメラマンを随伴して屋上に潜入した。
にしても、画面では建物が割れて爆発するように壊れていこうとしています。
これは、いかなる場面なのでしょうか。
ゴジラが横から歩いてきて建物を壊すとしたら、床下から直上への爆発っぽい状況が説明できません。
もしかして……
これ、ゴジラ爆誕の瞬間かもしれない?
私個人の妄想によるムリコジ(無理矢理のこじつけ)ですが……
なんらかの陰謀で、冬眠みたいな仮死状態で、数メートルから十数メートルのサイズに小さくなった“冬眠版縮小ゴジラ”が日比谷公会堂の中に隠されていて、そのことを疑った科学者が調査のため、新聞記者とカメラマンを連れて屋上に上がって(建物は閉鎖されていたのでしょう)、放射能を計測したところ、異常値が確認された。そのとたん……
建物の屋上を突き破って、急速に巨大化したゴジラが出現した……とか。
まあ、ただの妄想ですが。
とはいえ、予告映像の他の場面で、ゴジラの巨大な足に追われて、大勢の群衆が逃げていく場面がありましたね。
あの場面、道路にしては、やや広すぎるように感じます。広場では?
背景に比較的大きい並木があります。並木に沿って、向こう側は道路では?
その向こうに、当時としては高層ビル(6~8階くらい)の建物が、わりと密集して並んでいます。
終戦直後です。高い建物がかなり焼け残っているというのは……
ここって、日比谷公園?
21世紀の日比谷公園は花壇や噴水が整備されていますが、戦時中までの当時は、野外で国民集会が催せる、大きな広場になっていました。
このほか、鉄道線路に一個車両の客車が落下する場面がありましたね。
鉄道線路は六本も見えますので、東海道本線と山手線ですね。(現在の線路数は八本に増えています)
客車(たぶん山手線)は、ゴジラがくわえて投げたのでしょう。
注目は、日当たりの向きです。太陽光は明らかに、左から差しています。
車両を北方へ投げた場面としたら、左方向の太陽は西、つまり夕日となります。
さて、あくまで私個人の妄想によるムリコジ(無理矢理のこじつけ)ですが……
予告映像の断片的な場面を、つなぎ合わせてみます。
①ゴジラは、小型化した冬眠状態で、何者かの陰謀により、日比谷公会堂に隠されていた。(と仮定します)
②正義の科学者が放射能の異変に気付き、屋上に潜入する。
③突如、日比谷公会堂の屋上を破って、ゴジラ巨大化。
④ゴジラ、日比谷公園の人々を踏みつぶして北上。
⑤公園の途中、日比谷門の付近から右折。日生劇場と帝国ホテルの間の道を東進。
※そのまま北上すると、マッカーサー元帥のGHQとなっている第一生命館ビルを直撃してしまうため、オトナの忖度で方向転換したと思われる。
⑥国鉄東海道線&山手線の高架で、山手線の一個車両をくわえて投げる。
⑦投げたのは北方向、晴海通りの上を交差する鉄橋を越えて、有楽町駅よりも手前に落下したと思われる。このとき太陽は左、すなわち西方向から差しているので夕日となる。
普通なら線路の彼方に東京駅の巨大なドーム屋根が見えそうなものだが、当時は空襲で三階から上がきれいさっぱり焼失していた。
⑧晴海通りの南西側の建物を踏みつぶして、銀座四丁目交差点へ。
⑨そこで時計塔の建物を三分の一ほど壊し、さらに東進、東京湾を目指した。
⑩時計塔の文字盤では、針が五時半を指して、おそらくそこで止まっている。とすれば、ゴジラ通過時は夕刻であり、⑦の夕日と時制が一致する。
ああ、場面は三丁目の夕日ならぬ、銀座四丁目の夕日だ……。
ゴジラ君、途中であちこち寄り道しているとは思いますが、大まかな進撃ルートは以上のようにイメージされます。とはいえ、結構あてずっぽうな妄想なので……
にしてもゴジラ君、よくもまあ、これだけ「壊しがいのない時代」にやってきたものですね。
都心部の大半は空襲で焼け野原。東京駅は戦災で屋根がなく、東京タワーすら未建築なのです。
いまさら少々、瓦礫を増やしたところで、都市景観はほとんど変わりません。
それに、1954年の第一作との整合性の問題もあります。
第一作で壊されるはずの、国会議事堂や
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とはいえ、シンゴジに続いて、21世紀のゴジラを映像化しようとしても……
今度は逆に「壊しがいがあるのに、オトナの事情で壊せない」問題に直面します。
いまどきの建物には、昔はなかった肖像権みたいなものとか、映像使用権みたいなものが認められるようになってきて、いくらフィクションだからといって、どの建物か特定できる形で破壊すると、「誰の許可を得て勝手な映像を作って上映して、入場料を取って儲けているんだ?」と、あちこちから難癖をつけられる時代になってしまったのです。
私有の建築物は、ひとつひとつ所有者の了解を得ないと、たぶん、ゴジラですら壊せないであろうと思われます。
ああ、世知辛いことよ……
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どうせそんなことなら、いっそ、誰に許しを得なくてもいい、焼け野原の東京で、のびのびと暴れてみたい……
監督様とゴジラ君、そう考えたのかもしれませんね。
【次章へ続きます】
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