122●我がボンビークック(2)無水トマトカレーor無水トマトスープ など。

122●我がボンビークック(2)無水トマトカレーor無水トマトスープ など。




 夏はカレーである。

 説明の要なく、この国では、夏はカレーと決まっている。

 夏=カレー、恐るべき同調圧力の歴史的結果である。

 理由は諸説あるだろうが、やはり“あのスパイシーな香りで食欲が増進する”メリットが大きいのではないか。

 夏バテで食欲減退気味でも、隣の家のカレーの香りが流れてくると、無性に食べたくなるものである。


 一方、夏といえばトマト。

 いまどき一年中、店頭に並んでいるが、やはり夏はトマトである。

 リコピンはじめ、栄養価の面で、夏には欠かせない。

 昨今のトマトは甘くておいしいが、いかんせん、高い。

 一個百円近く、フツーにするもんなあ。

 それに、いかにおいしくても、切ってサラダにして食べるだけなら、毎日となると、さすがに飽きる。


 ということで、わが家の私製“チチカレー”は、トマトベースが基本となる。

 これで効率よく野菜的栄養を摂取するのだ。

 正価のトマトでなく、一袋に中玉四個で150円くらいに落ちたものを使用する。


 値引き品のダメージ野菜に、私は偏見を持たない。数時間前、あるいは数分前まで正価で並んでいたブツなのだ。柔らかくなっているとか、割れている程度なら見て見ぬふりである。

 もっとも、中には一目見て、これはヤバいと感じさせる傷み方をしているものもあるので、慎重に選ぼう。袋やパックの裏側(底部)をちゃんと確認すること。ヤバいやつは、この季節である、明らかにズルけてベタベタしている。


 そのあたり用心して購入し、早急に消費すれば、半額品もなかなか捨てたものではない。

 どのみち栄養価は概ね等しいのだ。

 以下のカレー具材の野菜類も肉も、半額セールで調達したものを適当に組み合わせている。


 トマトは二袋で300円くらい、計八個ていどを用意する。

 これを一個ずつ、ヘタを取って縦に四分割、横に二分割して、つまり八パーツにカットする。

 それを鍋に入れる。

 小さめにカットするのは、皮だけが縮んで巻いてトゲみたいな形になって残るのを、目立たなくするためだ。

 中玉を八個、ものによっては十個くらい、全部鍋に入れて、煮る。

 数分で液化してくるので、ヘラでかき混ぜ、攪拌し、グツグツ言ってきたらアクを取る。


 カレーはだいたい八皿分ほどを生産量の目安とする。


 そして具材を投入する。

 (糖質を気にする身分なので、ジャガイモは使わない)

 パプリカを1~2個。

 シイタケかシメジを適量。

 ニンジンを半本くらい。

 これらはみな小さめにカットする。

 大根を半本ていど。これも1センチ角くらいに小さくカット。

 カレーに大根はイメージ的に違和感があるが、やってみるとすんなり食える。

 ただし、ちいさめにカットした方が、食感が大根大根しなくて、いいと思う。

 さらに、粒々のコーン、紙パック百円のものをひとつ分、ザルで水洗いして投入。

 もしくは、袋入りの煮豆類を適量追加。

 グツグツ煮立ってきたらアクを取る。


 まあ、お好みで、何を入れてもいいのだが、私は食べやすさを考慮して、具材は小さめにカットするようにしている。それに、早く確実に火が通るので調理時間も短縮できるはず。


 そして、次のどちらかを選んで投入。

 ●リンゴ一個、皮をむいて、身を1センチ角ていどに細かくカット。

 ●バナナ二本、皮をむいて、お皿の上でスプーンにて厚み1センチ程度にカット。


 リンゴだと、スッキリとした甘み。

 バナナだと、まったりとした甘みが加わる。

 どちらかを選択のこと。


 つまり、トマトリンゴカレーか、トマトバナナカレーか、という選択だ。

 まあ要するに、買い物に行ったとき、半額リンゴがあるか、半額バナナがあるか、その差異がそのまま料理事情に反映されるだけなのだが。


 で、グツグツとよく火が通ったら、火を止めてカレールウを入れる。

 ジャワカレー&バーモントカレーで凝った味に仕上げるか、エスビーの“こくまろ”やゴールデンカレーでエコノミーな風味にするか、お好みで。

 私はたいてい、中辛と甘口を半分ずつブレンドしている。


 そして、このときカレールウを入れずに、ケチャップをチューブの三分の一程度、ダバッと放り込めば、そのまま“無水トマトスープ”になるという次第。


 そうそう、お肉とタマネギ、ですな。

 カレーの場合、鳥ミンチか豚肉のどちらかを、300gほど、

 トマトスープの場合は鳥ミンチを300gほど、

 そこにタマネギの大を二個、これも1センチ×2センチ程度の大きさに、小さめにカットする。

 肉とタマネギを、フライパンで別に炒める。

 これが私の我流なところ(ドヤ顔)。

 一般には、最初にお鍋に肉とタマネギを入れて炒めるのだけれど、どうもうまく火が通らず、私はしばしば焦がしてしまい、カレー全体に変な焦げ味をつけてしまう無能ぶりが改善出来ず、それゆえ肉とタマネギは別工程で炒めることにしている。

 基本、油は足さない。まずは肉を中火でゆっくり炒め、肉自身の油だけで加熱処理する。

 そこへタマネギを投入。フライパンに蓋をして、最初は蒸し焼きにする。

 私は別のシチュー鍋の蓋で、フライパンの直径に少しだけ足りないサイズの物を適宜転用している。その蓋はフライパンの縁から少し下で止まってくれるので、蒸し焼き効果があるのだ。


 タマネギは飴色に近くなるまで炒めて、甘みを引き出す。

 やはりフライパンで炒める方が、火の通りなど、短時間でうまく仕上がると思う。

 この時、独自の工夫として、“ダシの素”の粉パックを1~2袋、8グラム程度を振りかけて炒めている。つまり肉とタマネギに“うま味”を付けるのだ。


 ということで私の我流では、野菜は野菜でしっかり煮て、肉とタマネギはフライパンでしっかり炒め、“ダシの素”で“うま味”を加える製法となる。


 で、カレールウと野菜がしっかり混じった“野菜カレー状態”の鍋に、フライパンで炒めた肉とタマネギをドドッと投下。これをお玉でかき混ぜて、一時間ほど置いてなじませたら、完成。


 トマトスープも同様で、要するに、カレールウの替わりにケチャップが入っているだけなのだ。

 トマトスープはケチャップ味なので、“流水麺”のうどんタイプを流水でほぐしてチンして温め、そこにトマトスープをからめてナポリタン風に食することが多い。

 “流水麺”はよく使う。これも半額で調達できることがあり、なによりも、このクソ暑い環境でパスタをゆでる手間と労力は、もう降参、お手上げなのだ。

 私の場合、パスタのボイルはたいてい失敗するし。


       *



 以上、トマトカレーもトマトスープも、水を使わないことで、野菜の栄養の凝縮煮込みといった風情に仕上げることができる……と思う。


 トマトの酸味、リンゴorバナナの甘味、そして“ダシの素”のうま味がからみあったカオスな味覚を、カレーの辛さが上手にまとめてくれる。そんな感じだ。


 味の好みは人それぞれだけど、私はこの製法で満足している。

 トマトカレーもトマトスープも、“ダシの素”が威力を発揮して、素材全体に調和をもたらし、マイルドな風味に変身してくれる。

 “ダシの素”は絶対に欠かせない。

 カレーもシチューも、たいていの料理は“ダシの素”を少し足すだけで、お味がワンランクアップするように思われる。ま、人それぞれだけど。


 ウチはカレーにヘビーな辛さを求めず、やや甘口系なので。


 で、トマトが調達できない場合は……

 カボチャだ。

 トマトを使わない場合は、鍋に水を入れて、最初にカボチャを投入する。

 サイコロカットみたいな形か、薄くスライスしたもの、どちらでもいい。

 サイコロカットが十個ワンパックで80円くらいに落ちたもの、などを使う。

 つまり、カボチャカレーにするのである。


 トマトとカボチャは相性が悪いとされている。カボチャの成分がトマトの栄養を損ねるらしい。なので、使うなら、どちらかを選択するようにしている。


 さて、完成したカレーを鍋半分ほど食したところで、ちょっとお味に変化をつけたくなったら、市販のレトルトカレーを1パック足してみよう。高級なレトルトカレーはもったいないので、スーパーの特売でワンパック110円くらい(少し前まで百円だったのに……)で買ったものでよろしい。

 市販レトルトカレーの隠し味が加わることで、どことなく“お店風”のカレーになると思われる。

 思われる……というのは、まあ、味覚の個人差があるからね。

 ただ、レトルトカレーをレトルトカレーだけで食すのでなく、この場合、調味料として使う感覚が楽しい。各種レトルトカレーを試してみるのも一興。

 カレーは、お鍋をたびたび再加熱するのが常となるが、うっかり焦がして焦げ味がついてしまった場合に味を救援するのにも、“プラス・レトルトカレー”の応急措置は有効であろうと思われる。


 それにつけてもカレーは偉大なり。

 ご飯にかける定番方式だけでなく、パンやナンのおかずにしてもよし、うどんと合わせればカレーうどん、もちろんパスタにも合う。最後はお鍋にご飯を適量放り込んで、鍋の内側に濡れ落ち葉の親父みたいにへばりついたカレー様をコテコテと混ぜればドライカレー風の“カレーおじや”として本当に徹底的に完食できる、このセオリーがすばらしい。


 作ってしまえば、無駄なく完璧に摂取できる。

 スパイシーなSDGsクッキング、かな。

 ある種の“完全料理パーフェクトクッキング”として、我らニッポンのカレーはウクライナのボルシチと並ぶ、無形文化遺産と讃えてしかるべきではないだろうか。



 以上、ただしあくまで私個人の感想に基づいた作り方なので、皆様の食物アレルギーやその他の体質にはまったく配慮しておりません。責任は一切持てません!

 作って食されるのは、すべて自己責任で、ね。



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